- まえがき
- 第T章 国語科の改正と言語活動
- [1] 学習指導要領の改訂と言語活動例
- (1) 中央教育審議会の答申における言語活動
- (2) 学習指導要領の総則における言語活動
- (3) 学習指導要領の各教科等における言語活動
- [2] 国語科の言語活動における取組の考え方
- (1) 国語科の改善の基本方針と言語活動
- (2) 国語科の改訂の要点
- (3) 言語活動の本質的な意味
- [3] 第5学年及び第6学年でどのような言語活動ができればよいのか
- (1) 目標となる低学年の子どもの姿
- (2) 低学年の指導事項と言語活動一覧
- [4] 低学年の言語活動の指導計画と展開
- (1) 言語活動の指導計画
- (2) 単元構成と授業展開
- 第U章 領域別 言語活動実践モデル
- 話すこと・聞くこと
- [1] ア 資料を提示しながら説明をしたり,それらを聞いて助言や提案をしたりすること
- なぞときワールドへようこそ(第5学年)
- [2] ア 資料を提示しながら報告をしたり,それらを聞いて助言や提案をしたりすること
- 報告します!「私の研究」(第6学年)
- [3] イ 調べたことやまとめたことについて,討論などをすること
- 環境サミットを開こう(第6学年)
- [4] ウ 事物を推薦したり,それを聞いたりすること
- おすすめ ベストスポット(第6学年)
- [5] ウ 人物を推薦したり,それを聞いたりすること
- わが町の達人を推薦しよう(第5学年)
- 書くこと
- [6] ア 経験したこと,想像したことなどを基に,詩をつくること
- 友との出会いや自分の思いを詩につづろう(第6学年)
- [7] ア 経験したこと,想像したことなどを基に,短歌をつくること
- 現代版 子ども短歌集をつくろう(第5学年)
- [8] ア 経験したこと,想像したことなどを基に,俳句を作ること
- 俳句をつくって,句会を開こう(第6学年)
- [9] ア 経験したこと,想像したことなどを基に,物語を書くこと
- 短編ファンタジーを書いてみよう(第5学年)
- [10] ア 経験したこと,想像したことなどを基に,随筆を書くこと
- 随筆集『子どもの心』を作ろう(第6学年)
- [11] イ 自分の課題について調べ,意見を記述した文章を書くこと
- 自分の意見を書こう(第6学年)
- [12] イ 自分の課題について調べ,活動を報告した文章を書くこと
- 報告文で伝えよう(第5学年)
- [13] イ 自分の課題について調べ,文章などを書いて編集すること
- 編集者になって本を作ろう(第6学年)
- [14] ウ 事物のよさを多くの人に伝えるための文章を書くこと
- 作品展の広告を出そう(第6学年)
- 読むこと
- [15] ア 伝記を読み,自分の生き方について考えること
- 見つめてみよう自分の生き方(第6学年)
- [16] イ 自分の課題を解決するために,意見を述べた文章を利用すること
- 自分の意見をみがこう(第5学年)
- [17] イ 自分の課題を解決するために,解説の文章を利用すること
- 解説文の特徴を生かそう(第6学年)
- [18] ウ 編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読むこと
- 子ども新聞編集会議を開こう(第5学年)
- [19] エ 本を読んで推薦の文章を書くこと
- 本を読んで,推薦文を書こう(第6学年)
- 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項
- [20] ア(ア) 親しみやすい古文について,内容の大体を知り,音読すること
- 古語で挑戦 昔話朗読劇(第5学年)
- [21] ア(ア) 親しみやすい漢文について,内容の大体を知り,音読すること
- 漢文を声に出して味わおう(第6学年)
- [22] ア(ア) 親しみやすい近代以降の文語調の文章について,内容の大体を知り,音読すること
- わたしたちのまわりにある文語の表現を味わおう(第5学年)
- [23] ア(イ) 古典について解説した文章を読み,昔の人のものの見方や感じ方を知ること
- わたし流「枕草子」を書こう(第6学年)
- [24] イ(ア) 話し言葉と書き言葉との違いに気付くこと
- お知らせのコツを見つけよう(第6学年)
- [25] イ(イ) 時間の経過による言葉の変化や世代による言葉の違いに気付くこと
- 世代による言葉の違いを比べよう(第6学年)
- [26] イ(ケ) 比喩や反復などの表現の工夫に気付くこと
- さまざまな表現を使おう(第5学年)
- あとがき
- 執筆者一覧
まえがき
1 学習指導要領国語科に示された言語活動と指導事項
本書は,学習指導要領国語科に示された言語活動を基に,指導事項とどのように関連付けながら単元構想して行けばよいのか具体的な授業提案を行ったものである。
国語科は,次のように3領域1事項で構成されている。
A 話すこと・聞くこと
「内容」
(1) 指導事項
○話題設定や取材に関する指導事項
○話すことに関する指導事項
○聞くことに関する指導事項
○話し合うことに関する指導事項
(2) 言語活動例(主なもの)
◇説明や報告と,それらを聞いての感想や意見を述べること
◇話し合いや意見を述べる,討論をすること
◇紹介や推薦をしたり,それらを聞いたりすること
B 書くこと
(1) 指導事項
○課題設定や取材に関する指導事項
○構成に関する指導事項
○記述に関する指導事項
○推敲に関する指導事項
○交流に関する指導事項
(2) 言語活動例(主なもの)
◇詩をつくったり,物語を書いたりすることといった創造的な書くこと
◇経験したことや調査したことの報告や説明する文章などを書くこと
◇紹介などの文章を書くこと
◇依頼状や案内状などの手紙を書くこと
◇学級新聞などを編集して書くこと
C 読むこと
(1) 指導事項
○音読に関する指導事項
○効果的な読み方に関する指導事項
○説明的な文章の解釈に関する指導事項
○文学的な文章の解釈に関する指導事項
○自分の考えの形成と交流に関する指導事項
○目的に応じた読書に関する指導事項
(2) 言語活動例(主なもの)
◇物語や詩,伝記など文学的な文章を読んで感想をまとめること
◇説明や解説をした本や文章,事典などを読んだり利用したりして感想や考えをまとめること
◇本を読んで,紹介や推薦をすること
〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕
(1)
ア 伝統的な言語文化に関する事項
イ 言葉の特徴やきまりに関する事項
ウ 文字に関する事項
(2) 書写に関する事項
内容は,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」,「読むこと」の3領域及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕で構成している。各領域では,内容を1の指導事項に示すとともに,言語活動例を内容の2に位置付けている。言語活動を指導内容の2として位置付けたのは,言語活動を通して指導事項を確実に定着させるために行うことを重視したためである。実際の生活や学習場面において,指導事項として示された能力を確実に発揮することができるようにすることがねらいとなる。このように,今回の改訂は,言語活動を充実し,実生活や実社会に生きる能力を定着させることが重視されていることが大きな特徴となる。
なお,〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕は,我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てることや,国語が果たす役割や特質についてまとまった知識を身に付けることとともに,実際の言語活動において有機的に働くような能力を育てることに重点を置いて構成している。言語活動を具体化するときには,この〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕に示したこととも関連付ける必要があることに留意することを忘れてはならない。
このように言語活動の充実を図り内容構成を改善したのは,答申の改善の基本方針に基づいているからである。
○ 国語科については,その課題を踏まえ,小学校,中学校及び高等学校を通じて,言語の教育としての立場を一層重視し,国語に対する関心を高め,国語を尊重する態度を育てるとともに,実生活で生きてはたらき,各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること,我が国の言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てることに重点を置いて内容の改善を図る。(以下略)(下線は引用者)
下線を付したように,
(1) 実生活での具体的な場面で生かすことができること
(2) 各教科等の学習の基本となる言語活動場面に応じられること
(3) 言語文化を享受し継承・発展させる態度を育てること
これらのために,小学校では,「日常生活に必要な基礎的な国語の能力を身に付けることができる」ような内容が示されているのである。言語活動の充実以外にも,次のようなことを改訂では重視している。
(4) 言語活動を行う学習過程の明確化を図り,それらに対応した能力を育成すること
(5) 体系的で系統的な言語活動を教育課程に位置付けて指導し,系統性を重視すること
言語活動の充実とその具体化のためには,これらを生かすように構想することが求められているのである。
2 各学校における言語活動の具体化と本書の編集の特徴
したがって,各学校においては次のようなことを課題として教育課程の改善を図ることが大切となる。
@ 年間指導計画において,言語活動例をどのように取り上げるのか―特に注意が必要なのは,〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕は言語活動化することや,それらを3領域で取り上げるのか,単独で独自に単元化するのか決める必要がある。
A どのような教材と指導法によって具体化するのか。
B 低・中・高学年での系統性をどのように考えるのか―各学年にふさわしい言語活動を具体化する必要がある。
C 各教科等での言語活動例を意識してどのように関連付けるようにするか。
D 総則や国語の「指導計画と作成の取扱い」,解説編の解説に対する配慮をどのようにするか。
本書は,このような課題に応えるべく,次のような特徴をもたせて編集した。
(1) 第1学年及び第2学年編,第3学年及び第4学年編,第5学年及び第6学年編の全3巻を刊行し,各学年で必要な言語活動の授業例を網羅すること。
(2) 学習指導要領で示した言語活動には,それぞれの内容に二つ以上の活動例が示されていることに配慮し,それらを二つまた三つなどに分けて授業案を示すこと。
(3) 〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕と関連付けた言語活動案を示すこと。
(4) 各学校や地域の特質を考慮して単元は具体化されるべきものであるので全国的な執筆者の配慮をすること。
これらに配慮して,各編は,執筆担当として「京都市小学校国語教育研究会」(第1学年及び第2学年編),岩手県の国語教育研究者(第3学年及び第4学年編),「豊田市国語教育研究会」(第5学年及び第6学年編)が主に当たった。なお,第3学年及び第4学年編では,豊田市の国語教育者や「関西国語教育カンファランス」の会員による執筆も行っている。
全3巻が活用され,学習指導要領の言語活動例を重視した趣旨が十分理解されるとともに,言語活動例を具体的かつ効果的な国語力育成に役立てるように貢献することを期待してやまない。本書刊行に当たっては,各研究会の指導者及び会員,さらには明治図書の木村悠氏に大変お世話になった。ここに記して謝意を申し上げたい。
2009年12月 京都女子大学教授・前文部科学省教科調査官 /井上 一郎
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- 明治図書