- はじめに
- 1 これだけはおさえたい!群読指導のための基礎・基本
- 一 表現としての音読
- 二 音読における声の大きさ・抑揚
- 三 音読における速さ
- 四 音読における間
- 五 音読における強調
- 六 音読のための記号
- 七 群読のための人数
- 2 馴染みの作品で楽しくチャレンジ!教科書教材での群読指導
- うたに あわせて あいうえお
- おむすび ころりん
- かさこじぞう
- どきん
- 夕日がせなかをおしてくる
- おおきな木
- 紙風船
- 大造じいさんとがん
- 雨にもまけず
- 3 そのまま使える!群読詩アラカルト
- 一 本章の群読詩の使い方
- 二 授業の進め方
- 三 ビデオ再生学習
- おーい: 大きい声こそいちばん(一、二年生向け)
- のみとうし: 速く小さくゆっくり大きく(一、二、三年生向け)
- べんきょうしなさい: 子どもに大ウケの群読(一、二年生向け)
- 雑草のうた: リズムよく声を合わせる(三、四年生向け)
- いるいる: 声を合わせて盛り上げる(三、四年生向け)
- じょうき機関車: イメージを大切にして(二、三年生向け)
- ミツバチのダンス: 友達から友達へ(三、四年生向け)
- ジェットコースター: 心の動きと音の調和(五、六年生向け)
- 花火: 音をそっくりに(五、六年生向け)
- 生きる: 声を響かせて(四、五、六年生向け)
- 波が打ち寄せる: 様子をうまく表そう(四、五、六年生向け)
- 幸せの音: いろいろな音の読み方で(四、五、六年生向け)
- 波紋: 静かな群読をしよう(五、六年生向け)
- キャンプファイヤー: なりきって群読だ(五、六年生向け)
- 御輿: 勢いよくその場にいるように(五、六年生向け)
- 祭り囃子: ほんものの屋台囃子のように(五、六年生向け)
- おわりに
はじめに
群読とは、複数の読み手で、詩や物語などの文章を声に出して読むことである。複数で分担しながら、表現的な音読、朗読をすることである。詩や文章に対して、自分たちが思ったことや考えたことを踏まえ、聞き手に伝えようと表現性を高めて読むことである。
この群読という言葉は、木下順二氏に始まるとされるが、高橋俊三氏が『群読の授業』(明治図書一九九〇年刊)で唱え広められた。以降、多くの教室でその実践が行われてきた。群読は、「子どもたちと教室を活性化させる」一つの方法である。
群読は楽しい。楽しいだけでなく、日本語の持つ言葉の響き、よさを体感できる。長年、群読に取り組み、詩の群読の授業を行ってきたこの私も、実践者の一人である。
しかし、群読のための、あるいは、群読に適した詩は、たくさんあるという訳ではなく、あまりないのが現状である。群読用の詩なども出回っている。それらは、群読に使えるかという視点で編集されたものである。
それはそうである。多くの詩は、もともと群読のために書かれたわけではないのである。また、すでに作者がいる詩を直して使ったりすることは、原作の持っている作品性を汚したり、損なったりするのではと思っている方も多いかと想像する。
では、どうしようかと考えた。そうだ、私が作ればよいではないかと思った。実に明快である。しかし、詩を作ることには苦労した。リズム、群読のよさを生かせる詩の創造である。このようにして、何年も蓄積してきた群読詩集とその指導方法をまとめたのが本書である。
作った詩は、子どもたちに喜んで読まれたものが多い。詩を作品的に観ても、楽しいものばかりである。是非とも使っていただけるとありがたい。
これらの群読の詩とその学習指導については、それぞれの項で説明しているが、主体的、対話的で深い学び合いが可能である。
新しい学習指導要領では、音読、朗読の項目が明記されている。音読は、自分が理解したことを表出する働きがあり、言葉の意味を考え、言葉の響きやリズムにも留意して声に出して読む活動である。朗読は、児童一人一人が思ったり考えたりしたことを、表現性を高めて伝えることに重点がある。また、今回の学習指導要領では、共有という言葉が出てきた。これは話し合うことであるが、ただ話し合うのではなく、相手の考えを受け入れたり、自分の考えを認めてもらったりしながら、考えを深めていくことである。群読の学習活動は、こういったことを網羅できていることが利点である。つまり、各自で理解したことと表現方法を友達に伝え、それをもとにグループで一つのシナリオを作っていく作業であるからである。子どもに、基礎的な技能・知識を学ばせながら、グループになってどう読むかのシナリオを考える作業を行うことで、それができるのである。もちろん、子どもの実態に応じて、バリエーションを変えていってもよいだろう。
本書では、音読、朗読の指導も含めて、群読の基礎として指導の扱い方を述べている。また、自作の詩だけではなく、教科書に掲載されている詩や物語をどう群読するかも書いているので、参考にしていただきたい。ちょっとした工夫で、教科書教材の詩や物語が、楽しい臨場感や迫力のある群読になるのである。
もちろん、教科書教材にある物語では、一つの活動として群読を取り入れている出版社もある。これは、群読のよさや効果を理解しているからにほかならない。群読を通して、物語の持っている主題に迫るようなことも可能なのである。こういったことは、詩の群読で学んだことが物語の群読をする基盤となっていると想像できる。
さらに、群読詩は、学級経営にも使える。朝の学活、帰りの学活等で活用できる。そういう詩もいくつか用意してある。もちろん、音読朝会、授業参観、林間学校、六年生を送る会等の学校行事にも使える。また、親子・家族で楽しむのもよい。この群読詩を家族で読むことで、親子・家族の関係もよくなると思われる。さらには、音読のサークル等で使っていただくことも可能である。群読のすばらしさに、子どもたち、教師あるいは親や大人が気づいて、日本語の持つ、言葉とリズムを感じ取ってほしいと思っている。
群読を通して、日本語の持つ言葉の語感や響き、あるいは言葉そのものについて興味を持ち、言葉に着目できる人が育つことを祈念している。
/秋山 欣彦
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- 明治図書