- まえがき
- I 国語学習の再生をはかる
- 一 国語教育の現状
- 1 授業の中の授業
- 2 国語ばなれ
- 二 国語はなぜ好かれないか
- 1 国語の好ききらい調査から
- 2 国語学習が楽しくならないわけ
- 3 学べなくしているものは何か
- 三 再生への展望
- U 国語学習にやる気をもたせるには
- 一 「やる気」とは何か
- 二 「やる気」を起こさせるには
- 1 目標をはっきりさせる
- 2 興味・関心をもたせる
- 3 知的好奇心を生かす
- 4 子どもの考えたことを尊重する
- 5 成功経験を大切に
- 三 「やる気」を倍増させる四つのポイント
- 1 自分の学習にプライドをもたせる
- 2 学習の結果がすぐわかるようにする
- 3 理解したことを表現させる
- 4 子どもを授業の主役にする
- V 主体的に学習に取り組む
- 一 教え型と学び型授業の両立
- 1 教えることと学ばせること
- 2 教え型の授業で子どもを生かすには
- 3 学び型の授業で自己実現を
- 4 認める・ほめる
- 5 自己教育力を育てる
- 二 主体的学習と指導の方法
- 1 学習の手引を活用する
- 2 ワークシートの利用
- 3 自注による学習
- 4 ほりさげ学習
- 5 問題作り学習
- W 問題作りを生かす学習過程
- 一 問題意識の喚起―読みの第一段階―
- 1 読みと問題意識
- 2 問題意識をもつようにするには
- 二 問題作り―読みの第二段階―
- 1 問題作りの内容と学年段階
- 2 問題作りの契機
- 3 問題作りを学習過程にどう位置づけるか
- 三 主題をとらえる―読みの第三段階―
- 1 主題とは何か
- 2 主題のとらえ方
- 3 感想文
- 四 問題作りを取り入れた授業の実際
- 1 指導例<その1> かさこじぞう(二年)
- 2 指導例<その2> ドッジボール(三年)
- 3 指導例<その3> 大造じいさんとがん(五年)
- X 問題作り学習の成果と今後の課題
- 一 問題作り学習の成果
- 1 問題作りの時間
- 2 問題発表と話し合い
- 3 確かめ学習
- 二 子どもの変わり方
- 1 学習意欲と態度
- 2 児童の反応
- 三 父母の反応
- 四 今後の課題
- 1 教師の頭の切りかえ
- 2 子どもの作る問題の質と量
- 3 問題作りの初めの段階
- 4 「学習課題」と問題作りは区別して
- 5 時間と進度
まえがき
長い間小学生を教えてきて、はっきり言えることは、子どもの好きな教科は、よくできる教科であるということである。残念ながらこの反対もある。よくできない教科はたいていきらいな教科であるというのがそれだ。
例えば、作文がうまく書けないから作文の時間がきらいであり、ひいては国語という教科までがきらいになるというケースがある。また、本を読むことがきらいなために、国語が好きでないというのもある。このマイナスの相関関係はいたし方のないこととしてあきらめてはならない。なんとかしてこれを打ち破るくふうが必要である。
よくできる教科が好きになるというのはどうしてだろうか。「できる」とは「わかる」ことであり、「わかる」とは「心に納得する」ことである。これが最も有力な、好きになる条件である。もちろん、先生にほめられたとか、テストで百点をとったことが心にしみて好きになる場合もある。が、それはほんとうの理由ではない。
子どもが好きな教科の時間は、かれらの目の輝きがちがう。体の動きがちがう。教師からいろいろと指示されなくても、ひとりで行動し、ひとりで考える。学習の仕方が身についているからである。これは教師が手をとって教えて身につくのではない。ひとりでくふうして自分で創り上げるものである。
外からの刺激によって好きにしたものは、いわゆる「付け焼刃」であるから、いつかまたくずれるかもしれない。そうではなくて、自ら学ぶことによって得た「納得」と「わかった」ことは、いままでよりも深い学習を身につけることになるから強い。そういう学習が「内発的動機づけ」として、今や教師の常識のように考えられているが、毎日の授業の中で、子どもの内発的動機づけを尊重したキメ細かい学習をさせることは容易ではない。
わたしは、お茶の水女子大学附属小学校をやめるまで一学級担任として授業を続けてきた。最初のクラスから数えると九回めである。どの年代の子どもたちにも、ひとりで学ぶことの大切さを身をもって体得させてきたつもりである。とかく国語の授業はマンネリ化しがちである。まして、わたしのように同じ学校に永年つとめ、同じことをくり返す者にとって、このマンネリ化が最大の敵であった。これを取りはらって初心にもどるべく、つねに創造的な授業を求めた。その方法として、問題作り学習とか、問題発見学習とか、思考を深める学習など、子どもの学習意欲をかきたてることをもくろんだ。幸い、子どもたちが意欲的にこの学習に参加してくれたおかげで所期の目的を達成することができた。子どもたちに心からお礼を言いたい。
本書は、問題作り学習のほんの一端を述べたものである。言いたいことはあふれるほどあるが、まだじゅうぶんに心の整理ができないためにまとまりのない文章になったような気がする。この点読者の方におわびしなければならない。『国語科問題作り学習の実践』とあわせてお読みいただければ幸いである。
なお、このシリーズの企画・発行にご高配をいただいた江部満氏、間瀬季夫氏、原田俊明氏にお礼を申し上げるとともに、『国語科問題作り学習の実践』にご執筆くださった先生がたにも謝意を表する次第である。
著 者
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- 明治図書