- はじめに
- 第1章 社会科における子どもの「つまずき」を捉える
- 1 人気ワーストNo.1教科
- 2 社会科における子どもの「つまずき」とは?
- (1) 興味関心の「つまずき」
- (2) 思考活動の「つまずき」
- (3) 認識の「つまずき」
- 3 「つまずき」に対する困難さと配慮
- (1) 子どもが感じる困難さ
- (2) 社会科における配慮事項
- 第2章 子どもの「つまずき」を想定した社会科授業デザイン
- 1 子どもの「つまずき」から考える授業デザイン
- (1) 興味関心の「つまずき」から
- @ 面白くする
- A 指さし地図帳バトル
- B 3ヒントクイズ
- C 地図記号をつくろう!
- D かぶってOK かぶってアウト
- E 5円玉をデザインしよう
- F マンホールクイズ
- G 面白まとめ活動
- H ○○にズームイン!
- I 提案しよう!
- J 名字ランキング
- A 身近にする
- A 社会的事象と自分の生活との関わりを意識した時
- B 学習に対する問題意識をもった時
- C 人の働きに共感し,人の営みが見えた時
- (2) 思考活動の「つまずき」から
- @ 「見えるもの」から「見えないもの」を導く
- A 「どのように?」から「なぜ?」の流れをつくる
- B 「なぜ?」は難しい
- A 「なぜ?」を考えやすくさせる
- A 「複文型の問い」で問う
- B 問い方を変える
- C 発問の間口を考える
- B 子どもの言葉に着目する
- A 日常の世界と科学の世界
- B 具体化する「例えば」と抽象化する「つまり」
- C 深化し発展する言葉
- (3) 認識の「つまずき」から
- @ 見方・考え方を働かせる
- A 単元を通して見方・考え方を働かせる授業
- A スパイラルに学ぶ
- B 地図学習――どの学年でも空間認識を
- A 地図活用場面
- B 歴史学習における地図活用
- C 日常的に地図帳の活用を
- C 歴史学習――ダイナミックに捉える
- A 特別教室から見る歴史
- B 身長から見る歴史
- 2 個々の「つまずき」を考える授業デザイン
- (1) 目の前の子どもに合わせた授業
- (2) 3段構えの指導
- 3 子どもの「つまずき」を生かす授業デザイン
- (1) 「つまずき」を回復させるための技術
- @ 評価
- A 形成的評価を意識した事例
- B 誤概念
- (2) 「つまずき」から深める
- @ 「つまずき」を克服する子ども
- A 話し合い活動
- 第3章 子どもの「つまずき」は教師の「つまずき」
- 1 教材研究におけるつまずき
- (1) 何を教えるか(教育内容)
- ◆ ねらいを絞る
- (2) どのように教材にするか(教材化)
- @ 「上からの道」「下からの道」
- A 3つのアンテナ
- B 「問い」と「答え」の準備
- (3) どのように教えるか(授業方法)
- @ 指導言
- A 共有化
- A どのように共有化させるのか
- B 「何を」「どこで」共有化させるのか
- C 共有化の具体例
- B ノート指導
- A ノート指導の基礎・基本
- B 見開きノートの基本的な流れ
- C 板書とノートの一体化
- D 子どもにとっての社会科ノート
- E 教師にとっての社会科ノート
- F どこに焦点をあててノートを見るのか
- G どのように評価するのか
- 2 教科書活用におけるつまずき
- (1) 教師の社会科離れ
- (2) 教科書活用
- @ 教科書活用モデル
- A 教科書活用における3つの論
- A 教材論
- B 授業構成論
- C 授業技法論
- B 教科書比較について
- A 教科書比較とは
- B 教科書比較の方法
- C 教科書比較の具体的事例
- おわりに
はじめに
「子どもはつまずきの天才である」
東井義雄氏(1958)の言葉です。私はこの言葉がとても気に入っています。本当にその通りだと思います。そして,「天才」と言われると何だか微笑ましくなります。
さらに,東井氏の言葉は続きます。
「思いもよらぬつまずきを,平気でやってのける。しかし,考えてみると,子どもは,わけもなくつまずいているのではないようである。子どものつまずきの底に,子どもをつまずかせる何かがあるようである」
「子どものつまずきの底にある何か」を探ることが,授業をする時に非常に重要なことであり,授業者として常に考えなければいけないことだとずっと思っていました。本当の意味での「わかる」「できる」「楽しい」授業は,その上で成り立つものだと感じています。
子どもによって「つまずき」は多様です。しかし,算数科は算数科の,国語科は国語科の,そして社会科には社会科特有の「つまずき」があるはずです。本書では,社会科における「つまずき」に絞って考えました。子どもの「つまずき」について改めて考え直すことで,様々なことを捉え直すきっかけとなりました。例えば,そもそも子どもをつまずかせないようにするにはどうすればいいのかということ,子どもがつまずいた時にどう回復させるべきなのかということ,「つまずき」を生かすにはどうすればいいのかということ,子どもの「つまずき」は本当に子どもだけの「つまずき」なのだろうかということ,などです。
子どもたちがつまずく原因を探り,「つまずき」を回避するための方法,そして,「つまずき」を生かした授業について言及しました。さらに「子どものつまずきは教師のつまずき」とも言われるように,社会科における教師の「つまずき」の側面からも迫っています。
第1章では,子どもの「つまずき」はどのような「つまずき」が考えられるかを述べています。すべてを網羅することはできませんが,社会科において考えられる「つまずき」や,「つまずき」に対する困難さと配慮について述べています。
第2章では,それらの「つまずき」の原因を踏まえて,できるだけ具体的に授業をデザインできるように構成しました。子どもをつまずかせないようにする方法だけでなく,「つまずき」を生かして授業を深め,子どもを伸ばす方法についても述べています。子どもの「つまずき」を考えることは,子どもをつまずかせないことだけではないということを意識しています。
第3章では,そもそも子どもの「つまずき」は教師の「つまずき」からくるものではないかという立場に立って述べています。そのような立場に立つと見えてくるものが多くありました。多くの方々から,「社会科の教材研究はどうしたらいいのかわからない」「社会科をどのように教えたらいいのかわからない」「社会科の教科書をどう使ったらいいのかわからない」という声をよく聞きます。そういった声に応じたいと思いました。
「つまずき」を「喜び」に変えることは簡単なことではありません。しかし,我々教師が子どもの「つまずき」の根っこの部分をしっかりと捉え,寄り添いながら歩んでいくことで見えてくるものがあると信じています。
本書が,社会科に「つまずき」を感じている子どもたち,「つまずき」からさらに子どもを伸ばそうとしておられる読者の方々の一助となれば幸いです。
/宗實 直樹
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