- まえがき
- T 理科「空気はちぢむか」の実践
- 一 研究集団調布大塚小学校
- 二 教材分析と指導計画の構想
- 三 授業にとりかかる――グニャグニャの入れものから出発
- 四 子どもの思考は発展する――あ、エレベーターだ!
- 五 注射器への転換
- 六 研究授業を実施する
- 七 学習内容は広がる
- 八 研究授業での主張
- 九 骨太な実践をつくるために
- 一〇 校内研究のまとめ――活動化をどうとらえたのか――
- 一一 向山実践への批判に答える
- U 公開発表「じしゃく」の授業
- 一 一〇〇〇名あまりの参観者
- 二 第三学年 理科学習指導案(下書き)
- 三 第三学年 理科学習指導案
- 四 向山が語る「じしゃくの授業解説」
- 1 「向山洋一の授業のビデオを見て語る会」の講座を初めて企画する/ 2 三年一組向山学級 理科「じしゃく」/ 3 「三ねんじしゃく」の解説
- V 理科の勉強 二つのポイント
- 一 まず物に触れさせる
- 二 観察は理科の基本
- 三 一緒に実験することが大切
- 四 経験を簡潔にまとめることが必要
- 五 仮説を立ててから実験をする
- 六 向山の演習問題
- 設問1 理科の実験で子どもが持ち込んだ実験器具/ 設問2 指導要領のどこが問題か
- 七 理科のTTの場合、T1とT2の役割はどのようであればよいか
- 八 理科での教科書の効果的利用法を教えてください
- 骨太な実践を創る向山型理科授業三年の解説
- 三年生「空気をちぢめる」の解説 /新牧 賢三郎
- 向山型理科授業の主張 /小林 幸雄
まえがき
全集三期も思い出深い内容が多い。一冊一冊が、私の教師としての足跡である。
いつの時代にか、「向山洋一に追いつき追いこせ!!」と挑戦する後輩も出てこよう。
未だわからぬをのチャレンジャーのために、向山実践の輪郭を述べておこう。
私は、小学校で三二年間の教師生活を送った。
そして、その三二年間のすべての実践が本になった。
毎年毎年の実践が、それぞれ単行本になっている。
本になったものの大半は、「その時その時」の「通信、報告、論文、手紙」などである。後から書いたものではない。
新卒時代の本は「新卒日記」「新卒研究授業」「教生の記録」「研究授業論文」などからできている。
当然ながら、すべて向山のオリジナリティであり、他人の文をはめこんではいない。そんなことをしていたら、本にはならなかった。
また、三二年間の三万時間を超える授業で、授業が一分以上のびたことは一〇回もない。ラストの一〇年間は、多分、一回もない。
向山型算数、向山型国語、向山型社会、向山型理科と言われるように、あらゆる教科、分野に及んでいる。
そこには、おそらく一〇〇を超える問題提起の論文があった。
つまり、「それまでの教科教育の主張を批判し」「それにかわる提案を示した」のである。
その代案は、「雑誌特集」に組まれたり、「単行本」になっていき、多くの人に指示されていった。
このような実践をつくり上げたのは、向山が教室の一人一人に目を行き届かせていたためである。
「一人一人の子どもを大切にしたい」と多くの教師は言う。しかし、努力している人は皆無だ。
教科書を出せない子が二人いる。教科書をうつせない子が三人いる。一問を解くとしばらくボーッとしている子が二人いる。字がグチャグチャな子が三人いる。「教科書の三二ページをあけて、二番をやりなさい」という指示ができない子が三人いる。
これが、向山学級の普通の姿だ。日本全国、どこでも同じ状態だ。
叱っても、どなっても、説教しても直らない。
向山は、一人一人のその子たちが「できるようにしてきた」「工夫してきた」のである。
これが、他の教師たちとの唯一で最大の違いだ。
教室こそ、教育研究の宝庫だ。海の向こうや遠い昔を求めている研究者には、手の届かぬ境地である。評価の基準はたった二つ。
「子どもが変わった」という事実と「腹の底にズシーンとひびく手ごたえ」。これだけだ。
私は「子どもの主体性」とか「支援」とか「練り上げ」とかいうわけのわからない言葉が大嫌いだ。
そんな実践のほとんどすべてはにせもので、できない子どもは何も変化していない。
向山実践は「美辞麗句の教育実践」とは正反対のところに位置した。
駄目な研究の代表が附属小の研究。日本の教育に何の影響も与えないのみか、青年教師に悪い影響ばかり与えているくだらない研究だ。中には研究だけでなく、変な圧力をかけるくだらない教師もいる。
熊大附小や新潟大附小のように立派な研究をしている学校もあるが、数は少ない。
「附属小はいらない」という声が強まるはずだ。
評価の基準はただ二つ、「子どもの事実」と「腹の底までの手ごたえ」。
本書を読まれる多くの青年教師が、自分の実践をこの二つを評価の基準として省みることを願う。
そして、問題状況の山積みする自分のクラスの実態に果敢にとりくまれんことを!
いつの日か、向山実践に挑戦する後輩が続出することを夢みて。
二〇〇二年二月二二日 鹿児島教え方セミナー熊本阿蘇学会議で /向山 洋一
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