- まえがき
- T テストで社会科授業を変えられるか
- ―実態から考える―
- 1 社会科のテストはどう実施されてきたか
- 2 テストは善玉か悪玉か
- 3 社会科にテスト軽視の傾向はないか
- U 思考力と知識を評価する新テスト問題
- ―33の問題例と解説―
- §1 「知識の応用力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §2 「問題解決力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §3 「分類・整理能力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §4 「比較・関連能力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §5 「演繹と帰納」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §6 「資料活用能力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §7 「未来予測力」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §8 「常識的な知識」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §9 「具体的知識」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §10 「概念的知識」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- §11 「学び方の知識」のテスト問題
- 小学3・4年/ 小学5年/ 小学6年
- *コラム/学校でのテストと資格試験
- V テスト問題改革のための提言
- ―発想を転換する12のポイント―
- 1 テストは100点満点でなくてもよい
- 2 問題の答えは一つでなくてもよい
- 3 観点別の問題構成にこだわらない
- 4 選択して解く問題を構成する
- 5 学び方や考え方のスキルを問題にする
- 6 授業で取り上げていない事例で問題を構成する
- 7 教科書などを使って解く問題を出題する
- 8 テストの結果を次の指導にフィードバックさせる
- 9 子どもによる自己採点の機能をもたせる
- 10 テストを日常的に実施する
- 11 子どもがテストを作成する
- 12 印刷物以外のテスト形態を工夫する
- *コラム/テストの語録・二題
- W 観点別の問題作成のポイント
- ―4観点の趣旨を踏まえて考える―
- 1 「関心・意欲・態度」の評価
- (1) 「関心・態度」の評価研究の体験
- (2) 観点「関心・意欲・態度」の趣旨をどう読むか
- (3) 指導なくして評価はできない
- (4) ペーパーテストによる評価は可能か
- (5) 教師の観察力こそ評価のカギ
- 2 「思考・判断」の評価
- (1) 観点「思考・判断」の趣旨をどう読むか
- (2) 「思考・判断」の評価は授業中がメイン
- (3) テストによる「思考・判断」の評価の可能性
- 3 「技能・表現」の評価
- (1) これまでの「資料活用」のテスト問題の問題点
- (2) 観点「技能・表現」の趣旨をどう読むか
- (3) 「技能・表現」のテスト問題の可能性
- 4 「知識・理解」の評価
- (1) 観点「知識・理解」の趣旨をどう読むか
- (2) 社会科の「知識」をどうとらえるか
- (3) 「知識・理解」を問うテストの類型
- あとがき
まえがき
いまや、「評価の時代」である。社会のあらゆる組織や機関において、何事にも結果が厳しく問われる新しい時代を迎えている。
このことは、学校教育においても例外ではない。子どもの学習評価、絶対評価、観点別評価、さらには学校の自己点検・自己評価と結果の公表など、学校のなかでは「評価」のキーワードが賑わっている。子どもの学習状況を評価する方法は、テスト以外にも、教師による観察をはじめ、子どものノートや作品、発言の内容などを分析する評価、質問紙やアンケートによる評価など、さまざまな方法が開発され実施されている。また、テストと言われているもののなかにも、客観テスト(ペーパーテスト)だけでなく、実技テストや論文体テストなども実施されている。これらのなかで、評価の客観性、利便性の観点から、もっとも重宝されているのはペーパーテストである。
いま改めてテスト問題を見なおし、「テストの健全な復権」が求められるのではないか。それは、絶対評価が一層重視されるようになったという評価をめぐる状況の変化によるだけでなく、ペーパーテストが本来もっている役割や機能を十分に発揮させるためである。
社会科という教科は、これまでテストによる評価を重視してきた。多くの学校において、社会科の評価はやはりテスト主義であったといってもよい。ところが、その内容や実施の方法などを見てみると、必ずしもテスト本来の機能が十分に発揮されていないように思われる。テストを実施して評価することに問題があるのではなく、テスト問題の内容や実施の方法に課題があるのではないか。テストに対するわたくしの最大の問題意識がここにある。
これまでの社会科の実践研究は、教科としての役割とは何か、指導内容をどう構成するか、地域の素材をどう教材化するか、問題解決的な学習をどう展開するか、指導体制をどう工夫するかなど、社会科のカリキュラムや指導法に傾斜がかかったものになっていた。教材研究、指導法研究が中心になり、評価の問題がどうしても二の次にされてきた。
しかし、この間も、学校において、子どもの学習状況を評価する営みは継続して行われてきた。ペーパーテストの実施においてもしかりである。このことは評価研究が、どうしても遅れを生じていたことを意味している。ペーパーテスト一つをとっても、従来のものとほとんど変わりがない。指導の実態は従来から変わってきているのにである。
テストの望ましいあり方を追究することが、社会科授業のさらなる充実と発展のために必要ではないか。本書は、こうした問題意識のもとに、社会科のテスト問題に焦点をあててまとめたものである。
T章「テストで社会科授業を変えられるか」では、これまでのテストの実態を踏まえて、テストで授業を変えることの意味を検討した。U章「思考力と知識を評価する新テスト問題」では、社会科における思考力と知識に焦点をあてて、3・4年、5年、6年ごとに延べ33題の問題例を紹介した。これらは、平成15年度に『社会科教育』誌で1年間にわたって連載した内容をもとに大幅に加筆・修正を加えたものである。そして、V章「テスト問題改革のための提言」では、これまでの伝統的なテスト観を克服し、新しい発想によるテスト改革のために12のポイントを提案した。
本書のコンセプトは、「テストで子どもの試行を鍛える」「テストで社会科授業を変える」である。本書が各学校・教室で有効に活用されることによって、テスト問題が改革・改善されるようになるとともに、子どもの思考が鍛えられる社会科が展開されることを心から願っている。
本書の発刊にあたっては、明治図書出版(株)の樋口雅子編集長に、企画の段階からさまざまな面で多くのお世話になった。この場を借りて感謝の意を表したい。
2004年3月 /北 俊夫
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- 明治図書