- はじめに
- T 新しい社会科教育への視点
- 1 教え込む授業から自ら学ぶ授業へ
- 2 国を愛する心情を育てる
- 3 近未来への備え(コンピュータ、エネルギー教育)
- 4 社会科における近未来教育
- U 新しい社会科の授業モデル
- 1 向山式歴史学習指導法
- 2 知的好奇心
- V 新しい社会科の授業づくり
- 1 歴史授業の見直し
- 2 世界一の技術を持つ日本の製造業
- 3 インターネットが社会を変える
- 4 近い将来エネルギーは、枯渇する
- W 実践で提案する
- 1 日本人の誇りを育てる歴史授業
- (1) 近代日本の礎を築いた大久保利通(六年生)
- 1 明治という時代
- 2 民衆の視点・為政者の視点から明治維新を見る
- 3 授業記録
- 4 先人の努力の一端を知る
- (2) 未曾有の危機から日本を守った北条時宗(六年生)
- 1 若き執権北条時宗
- 2 元からの国書
- 3 授業記録
- 4 時宗の生き方に興味を持つ
- (3) 神話に描かれた英雄ヤマトタケル(六年生)
- 1 神話の授業化
- 2 ヤマトタケル
- 3 授業記録
- 4 授業化の方向
- 2 私たちの町に世界一の技術を持つ工場がある
- (1) 世界一の性能を持つ工作機械をつくる(五年生)
- 1 松浦機械製作所
- 2 バーチャル工場見学
- 3 授業記録
- 4 日本の未来を支える
- 3 インターネットのリアルタイムの情報を生かす
- (2) 公害のひどかった地区は今(五年生)
- 1 インターネットの活用
- 2 日本の公害問題はどうなったか
- 3 どのようにして公害を克服してきたか
- 4 授業記録
- 5 キーワード検索
- 4 エネルギー枯渇をどう乗り切るか
- (1) 私たちの生活とエネルギー(六年生)
- 1 エネルギー問題
- 2 日本のエネルギー政策を検討する授業
- 3 自作エネルギー教育副読本「私たちの生活とエネルギー」
- 4 授業記録
- 5 事実を伝える
- おわりに
はじめに
四、五年くらい前のことだと思う。担任している子どもの一人がインターネットで取り寄せた資料を教室に持ち込んできて、驚いた覚えがある。
しかし、今ではこうしたこともめずらしくはなくなってきた。インターネットを使って好きなアイドルやゲームの情報を手に入れている子もかなりいるし、子どもからメールが届くこともある。
授業のための資料集めもずいぶんと楽になった。インターネットで検索をかければ、三〇分もしないうちに必要とする資料がそろう。本の注文もインターネットですませることが多い。休日に図書館に出掛けてたくさんの本を借りてくるということもずいぶんと減った。職員室の机の上からワープロが姿を消し、ノートパソコンが置かれるようになったのも、つい最近のことである。
情報化の波が今、急速に社会を変えつつある。そして、それは学校現場にも押し寄せてきている。
こうした社会の変化にあわせて、社会科の授業も変わっていかなければならない。知識を注入する授業から、子どもが自分の力で調べて、考えを発信していく授業へ。こうした授業を日々行っていかなければならない。それは決して難しいことではない。すぐれた先輩たちの残した教育技術に謙虚に学べばよいのである。
私は、教育技術の法則化運動に携わる中で、子どもが自ら学び、自ら考える授業づくりの技術を数多く学んできた。本書では、こうした技術を実践を通して具体的に提案していく。
子どもが自ら学ぶ授業、すなわち「二一世紀型授業」づくりのためにぜひ役立てていただきたい。
ところで、本書ではもう一つの提案を行っている。
それは社会科で教える内容についてである。
戦後教育の大きな柱の一つは、「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンに代表されるように、戦争の反省を教えることであった。
しかし、それをあまりにも強調しすぎたために弊害も出てきている。例えば、愛国心は、健全な民主主義を支える重要な要素であるが、愛国心という言葉を口にすることさえはばかられる風潮が長らくあった。
極端な例かもしれないが、国歌が教えられていなかったために、オリンピックで金メダルをとった選手が表彰台の上で、国歌を歌えなかったというような恥ずかしい事態も生じている。
しかし、時代は少しずつ変わりつつある。国歌、国旗が法律で定められ、二〇〇二年から実施される指導要領の六年生の社会科の目標には「国を愛する心情を育てる」という言葉も入った。
二一世紀の日本を支える私たちの教え子は、国際舞台で様々な国の人たちと交わることになる。その時、必要とされるのが、自分の国の文化や歴史を誇りを持って語ることができる知識と表現力である。社会科は、こうした素養を育てるという点でも重要な使命を持っている。
本書では、こうした視点を取り入れた社会科授業も数多く収めた。新しい社会科授業づくりにぜひ生かしていただきたい。
/吉田 高志
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