「選択社会」を10倍豊かにする授業づくりのヒント

「選択社会」を10倍豊かにする授業づくりのヒント

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選択社会にこそ、社会科の可能性が秘められている。

「選択社会」の授業をどうつくるか、九州社研が総力をあげて取り組む。内容知に重点をおいた実践、方法知に重点をおいた実践、簡単に取り組めるものーと実践のバラエティも豊富。「選択社会」の理論と実践に本格的に取り組んだ1冊。発展学習としても使える。


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ISBN:
4-18-412319-8
ジャンル:
社会
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 164頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T 「選択社会」の時間を10倍豊かにする
一 「選択社会」の歴史的意義と役割 /梅野 正信
1 社会科の原型としての選択社会科
2 総合社会科の成果と社会科の変質
3 主体的課題把握による社会科学習の再生
二 「選択社会」の現状と今後の可能性〜教師の意識調査をもとに /新福 悦郎
1 現場での体験と「選択社会」の可能性
2 現行学習指導要領における「選択社会」の動き
3 アンケート調査の結果から
4 「選択社会」の実践上の課題
5 「選択社会」をどう実践していくか
U 「選択社会」の授業をこう創ろう
〈1〉内容知に重点をおいた実践例
一 地域にある博物館を利用する
実践例@「何でも歴史博物館をつくろう」 /藤瀬 泰司
二 社会問題科としての教材を活用する
実践例A「人間回復とは?」―判決文を活用したハンセン病の授業で人権学習 /別府 健
三 先輩に続け! 同じテーマ追究を継続する
実践例B「郷土史」の戦没者名簿をグラフ化して見えること /北山 浩樹
【コラム・1】「選択社会」と「必修社会」との関連をどう考えて実践すべきか
〈2〉方法知を追究した実践例
一 ディベートをする
実践例C「社会的課題をディベートしよう」 /平田 淳
二 国際感覚を身につける
実践例D Virtual Tourist(バーチャル・ツーリスト) /大石 達弘
三 社会問題を考えさせる
実践例E「社会的ジレンマ」で社会の問題を考える /永井 敬雄
四 社会的決定のし方を学ばせる
実践例F「社会的な決定について学習しよう!」 /北林 克彦
【コラム・2】「総合的な学習」と「選択社会」との関連を考える
〈3〉簡単に取り組める実践例
一 身近な地域の地図を利用する
実践例G「自分だけのテーマ地図」 /村田 佳隆
二 地名を探り、地域への愛情を育てる
実践例H「ふ〜ん、そうだったのかあ!」 /五嶋 改蔵
三 映像を活用する
実践例I「もののけ姫」で歴史を学ぶ /山元 研二
四 新聞を活用する
実践例JNewspaper in 選択社会科 /光武 正夫
【コラム・3】「選択社会」のカリキュラムをどう創り上げていくか
あとがき

はじめに

 九州中学校社会科教育研究会では、年に2回、開催県が中心になり理事会を持ち回りで行っている。理事会の後、研究部長同士で各県の取り組みの現状と情報交換を行ってきた。その際、かならず話題になってきたのが、「選択社会」についてであった。

 宮崎県の伊東泰彦研究部長が、「宮崎では、社会科教育の原点を追究する実践を研究大会で発表したい。それは『選択社会』の実践になるのだけど、『選択社会』の分科会を設定するというのはどうか」と提案してきたことがある。そのとき賛否両論があったが、これを正面から受け止め、研究テーマにしてきた県はこれまでになかった。

 「選択社会」が社会科授業として登場したのは、八九年度版学習指導要領からである。すでに導入されて十年以上が経過した。個人レベルでは実践の蓄積はあるはずだが、不思議なことに、その研究や交流がなされることは少ない。研究会でも「必修社会」が論議の中心となっている現状がある。

 九八年度版学習指導要領では、「選択社会」の時数が拡大された。また、内容面においても、より自由に教師の創意工夫が発揮できるようになった。教科書もなければテストもなく、「必修社会」以上に教師の独創性を発揮する可能性は確実に大きなものとなっている。

 その証拠に最近出版される社会科関係の書籍や雑誌を見ると、すぐれた実践は「選択社会」で行われているものが多くなってきている。

 私たちは、社会科教育の原点としての目標を追求したいと考えている。「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」ことをねらいとした授業実践に取り組みたいと思う。

 ところが、授業時数削減で「必修社会」の現状は、教科書の内容を子どもたちに伝えることに精一杯、というのが実状である。授業の脱線ができないほど、カリキュラムは余裕がなくなってきている。さらに、基礎基本の重視は社会科においても影響を与え、今まで以上にプリントを配布して小テストや単元テストを行い、子どもたちに知識の貯金をさせようとしているように思われる。

 理事会のあと、九州各県の中社研研究部長が車座になり、「選択社会」の可能性について熱く語り合った。そして、各県のすぐれた「選択社会」の実践を紹介し、交流することの意義を確認することができた。さらに、特色ある実践の紹介を九州の身内だけでなく、全国に発信しようと編著者新福悦郎が提案し、賛同を得ることになった。

 この企画を明治図書『社会科教育』編集長の樋口雅子さんに提案したところ、私たちの思いを深く受け止め理解していただき、今回このような形で出版することができた。さらに、さまざまなアドバイスまでいただいた。樋口さんのご理解なしにはこの本は出版できなかった。九社研研究部一同深く樋口さんに感謝している。

 本書掲載の実践からヒントを得て、「選択社会」のカリキュラムを考察し、より充実した実践を読者が創造するきっかけにしてもらえればと考える。

 本書ではまず、鹿児島大学教育学部梅野正信教授に、戦後の社会科教育の歩みの中で「選択社会」の歴史的意義の論考を執筆していただいた。先生は社会認識教育論、占領期の歴史教育を専門とされ、平和教育・人権教育を含めて多くの貴重な著作物を世に問うている。多忙にもかかわらず、快く執筆依頼を引き受けていただいた。心より感謝申し上げたい。

 次に、現場教師の立場で、新福が鹿児島県内で行った「選択社会」に関するアンケート調査をもとにして、その現状と可能性を論じた。

 実践編では、九州各県の中学校社会科教育研究会の研究部長を通して、各県で今現在活躍している実践者を紹介していただき、具体的に「選択社会」の実践を掲載した。もしくは、研究部長本人に執筆していただいた。

 九州各県の研究部長は以下の通りである。

 福岡県(木村豊校長)、大分県(村田佳隆教諭)、佐賀県(真子靖弘教諭)、熊本県(五嶋改藏教諭)、宮崎県(伊東泰彦教諭)、鹿児島県(新福悦郎教諭)

 各県の研究部長には多くの協力をいただいた。心より感謝申し上げたい。

 実践の最後は各県の前会長もしくは現会長にひとことアドバイスをいただいた。九州各県において長年にわたり社会科教育の実践で活躍されてきた方々ばかりである。

 選択の持ち方は各学校で違うわけだが、本著では大きく次の三つに分類した。「内容知を追求する実践」、「方法知を追求する実践」、そして「だれでも簡単に取り組める実践」である。それぞれの学校の実状や子どもたちの状況、教師として考える教科観から、これらの実践例を参考にして取り組んでもらいたい。この本の実践が子どもたちの社会科好きを増やしてくれることを期待している。


  二〇〇四年十二月   /新福 悦郎

著者紹介

新福 悦郎(しんぷく えつろう)著書を検索»

1962年、鹿児島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。鹿児島県内の公立中学校を経て、鹿児島大学大学院教育学研究科修士課程を修了。現在、鹿児島県隼人町立隼人中学校教諭。2000年より鹿児島県中学校社会科教育研究会研究部長。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 中学校の選択社会の参考にしたく買ったが、もう少し具体的な実践例が記載してあるといいと感じた。
      2015/12/2030代・小学校教員

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