- まえがき
- 序 章 対話型って何ですか?
- *あなたの社会科授業は、対話型になっていますか。対話を楽しむ子どもたち/ 対話をだいじにする先生
- ☆あなたの社会科は対話型ですか?
- 第T章 対話型授業のイメージ
- *あなたの社会科授業を対話型に変えていくには、優れた授業に触れ、対話型の授業のイメージを豊かにすることが、一番の近道です。
- [1] 対話で不思議を分かち合う
- 〜心の共振・問題意識の共有〜 〈第三学年「墨汁をつくる工場の仕事」から〉
- どこが対話型か?/ 本実践の概要と対話の見どころ/ 不思議体験から「一往復半+α」のやりとりが……!/ 不思議のベクトルをそろえる
- [2] 自然の厳しさと向き合って対話する
- 〜多面的な思考〜 〈第五学年「台風とのつき合い〜沖縄の気候を活かした今帰仁スイカの栽培を通して〜」から〉
- どこが対話型か?/ 本実践の概要と対話の見どころ/ みんなで不思議を考える/ 沖縄の気候のプラス・マイナス/ 現場に立って討論する/ 問題意識を引き出し・つなぐ
- [3] 対話でつなぐ思考と表現
- 〜思考と表現の一体化〜 〈第六学年「みんなの願いを生かす政治の働き〜三宅島の噴火災害から島民の生活を守る〜」から〉
- どこが対話型か?/ 本実践の概要と対話の見どころ/ 「関係図」を思考の作戦盤にする/ 対話で、「関係図」をつくり変える
- [4] 対話で立場を変えて見る
- 〜複眼的な見方・考え方〜 〈第六学年「明治維新をつくりあげた人々」から〉
- どこが対話型か?/ 本実践の概要と対話の見どころ/ 手紙で対話する/ あの世で対話する
- ☆対話型の社会科授業のイメージがつかめてきましたか?
- 第U章 対話型授業の理論とモデル
- *対話型の授業づくりを支える理論と対話のパターンやモデルを取り上げていきます。それをあなたの授業改善にどう生かしていったらよいのか、一緒に考えていきましょう。
- [1] なぜ、社会科で対話なのか?
- みんなで考え合う授業と対話型の授業/ 「考える」とは、どういうことか/ スイカって何だ?(どのようなものだ?)…疑問符WhatとHowの思考/ なぜ、スイカに変えるの?…疑問符Whyの思考/ 自分は、どうすればいいか?…疑問符Howの思考/ 「問い」と「対話」と「考える」の相互作用と「知識(情報)・理解」の関係
- [2] 「対話」で「考える力」などを伸ばし高める
- 「対話」と「問い」と「考える」との関係/ 自己内対話と自己外対話
- [3] 対話型の授業のモデル化
- [4] 対話型の多様な授業タイプ
- 共感型=主として「問いをつくる力」の育成を重視するタイプ
- 付け足し型=主として「聞く力」の育成を重視するタイプ
- 共通点発見・接続型=比較・関連して考え、社会的事象の本質をとらえる力の育成を重視するタイプ
- 連結・リレー型=筋道立てて考える力の育成を重視するタイプ
- 建設的批判型=批判的に受け止め、建設的に考える力や態度の育成を重視するタイプ
- 立場転換型・視点スライド型=多面的・複眼的にとらえていく力や態度の育成を重視するタイプ
- 意思決定型=社会的な判断力や態度の育成を重視するタイプ
- ☆あなたの授業は、対話型になっていますか?
- 第V章 対話型授業づくりの基礎・基本とアイディア
- *対話型の社会科授業では「ともに学び、考え合う」場面を特に重視します。その場面で「一往復半」の対話が生まれてくること。それが「+α」の対話へと深まっていくことを目指すのです。
- [1] 協働思考を伴う対話型の問題解決
- 個人レベルの問題解決と協働思考を伴う問題解決/ いま、求められる対話型の問題解決/ 問題解決的な学習の基礎・基本
- ☆あなたの社会科は対話型の問題解決ですか?
- [2] 対話に欠かせない問題意識の共有化
- 学習問題が具備すべき三つの要件/ 学習問題の表現上の工夫と課題/ 学習問題の共有化のポイント
- ☆あなたは学習問題づくりに、自信をもっていますか?
- [3] 対象に問いかけ、対話的に学ぶ
- 学習問題から自分の問いをつくる/ 調査・見学を対話型に変える/ ゲスト・ティーチャー活用を対話型に変える
- ☆あなたは、調べる学習で子どもをどのように指導・支援していますか?
- [4] 「一往復半+α」の対話をつくり出す場と表現の工夫
- 「対話の場面や状況」をつくり出す/ 対話を豊かにする表現活動の工夫
- ☆あなたは、みんなで考える授業をデザインできますか?
- [5] 表現活動を工夫した対話型授業七つのアイディア
- アイディア1 対話型の見学・調査 「健康・安全なくらし」「仕事の工夫」を対話型に変える
- アイディア2 対話型の寸劇 「地域の歴史的内容」を対話型に変える
- アイディア3 写真付きレター交換 「県の学習」を対話型に変える
- アイディア4 保護者との対話 「食料生産」「工業生産」「政治学習」を対話型に変える
- アイディア5 事例選択学習の対話型 「通信などの産業」を対話型に変える
- アイディア6 討論タイプの対話型 「国土学習」を対話型に変える
- アイディア7 歴史に身を置いた対話型 「歴史学習」を対話型に変える
- ☆七つのアイディアをヒントに、あなたらしい授業づくりにチャレンジしてみましょう。
- 第W章 対話を育てる先生になる
- 〜七つのエピソード〜
- *子どもに語りかける教師の一言で、社会科の授業は、対話型へと姿を変えます。あなたも、それを体験してみましょう。対話を育てる先生の七つのエピソード。これを読めば、あなたも明日から対話を育てる先生になれます。
- エピソード1 子どもの心を読む先生
- エピソード2 子どもの発言をつないでいく先生
- エピソード3 『オープン・クエスチョン』を使いこなす先生
- エピソード4 つなぎ言葉を使いこなす先生
- エピソード5 メモで対話する先生
- エピソード6 ノートで対話を深める先生
- エピソード7 二つのポケットをもっている先生
- ☆あなたが、明日からチャレンジしてみたいことが、見つけられましたか?
- 第X章 対話力を育てる学校
- *社会科で育てたい対話力とは何でしょうか。校内研究で、対話型の授業づくりをどのように進めたらよいのでしょうか。
- [1] コミュニケーション能力と対話力
- これからの学校教育に求められるコミュニケーション能力の育成/ 社会科で対話力を育てる
- ☆なぜ、社会科で対話力の育成なのか。あなたは理解・納得できましたか?
- [2] 対話型の授業づくりを推進する校内研究の進め方
- ルーブリックを開発する/ 研究授業の力点を変える
- ☆あなたの学校も対話型の社会科授業づくりに取り組んでみませんか?
- あとがき
まえがき
あなたが理想とする社会科授業。それは、どんなイメージですか?
本書が提案する社会科授業は、『対話型』です。
それは……
みんなで不思議を分かち合う。 わくわく型の授業です。
自ら問いかけ、学ぶ。 アウトプット型の授業です。
一人ひとりの知恵を集め、みんなで不思議を解き明かす。協働・共創型の問題解決です。
仲間を信頼し、ともに学ぶことを大切にする。 共生型の授業です。
「聴く&伝える」のやりとりで考える。 往還型の学び合いです。
知識(情報)を栄養にして、自分らしく考え、新たな知を創り出す。 知のリフレッシュです。
そして……
社会科を学ぶことを楽しむ子ども
みんなで考え合うことを楽しむ子どもが育つ……そんな授業です。
あなたも、対話型の社会科授業づくりに取り組んでみませんか?
教師は、いま、何をすべきか。
それぞれのもてる力を最大限に発揮し、求める授業づくりにチャレンジする。これこそ、いま、わたくしたち教師が最も大切にすべき仕事であり、生き甲斐、醍醐味ではないでしょうか。
社会科は、教師の持ち味が存分に発揮できる教科です。しかし、それだけに、「どんな授 業を目指していったらよいのか」そのイメージをもち難い教科でもあります。「何を大切にしたらよいか」それが、頭でわかっていても、授業に具体化するには乗り越えなければならない溝があるのです。「調べて考え、表現する」授業が大切だ。それがわかっていても、いざ授業となるとうまく展開できない。そんなジレンマを感じたことは、ありませんか?
「カラオケ型」や「切り貼り型」の授業ではいけない。頭では、そうわかっているのに、どうすれば理想とする授業に一歩一歩近づくことができるのか。その手立て・方策が見えてこないのです。
自分らしい社会科授業を創りたい。けれども、その手立て・方策の切り札がない。こんな先生方とともに、元気の出る社会科授業づくりの実践方策やアイディアを、ぜひ一緒に考えてみたい。そう願っていた矢先に、明治図書出版の樋口雅子編集長から、本書執筆のチャンスをいただきました。一人でも多くの先生方が本書を手に取り、自分が理想とする社会科授業づくりにチャレンジしていただけることを、切に願うものです。
樋口雅子編集長には、本書企画の段階から題名の選定、内容や文章表現の細部に至るまで目配り心配り、そして貴重なアドバイスをいただきました。この場をお借りして、深く、感謝とお礼を申し上げます。
二〇〇五年七月一日 /やすの いさお
研究というと,とかく難しくなりがちなイメージを見事に払拭してくれました。明解な理論解説とやさしく語りかけてくれるかのような文章。社会科の必要性や楽しさということだけでなく,今の日本の子どもたちに必要とされている力と社会科との関連について,本当に分かりやすく説明されています。誰でもきっと社会科の本質に迫ることができることでしょう。
また,事例の豊富さにも驚きです。日頃の授業を何とか改善しようとしている教師の大きな悩みは,「実際にはどうしたらいいの?」というように,授業の具体像がわからないことです。でも,本書に掲載されている実践例が,その悩みを難なく解決してくれます。
構成にも工夫があります。意味のわからない言葉があったときに,国語辞典でその意味を調べるように,本書も,例えば「学習問題のことは?」というように,トピック的に活用できるのもありがたいことです。
各章ごとにチェックリストがあったり,校内研修の在り方まで具体的に説明されていたりと,初任者はもちろん,中堅・ベテラン教員にもとても読み応えのある本です。みなさんも本書を読んで,是非「なるほど!」の快感を味わってみてください。
@ 自己チェック項目を各所に設けたり,授業づくりのアイディアやヒントを示したりして,読者との「対話」も試みている。
A 本書で紹介された実践例は著者自身の実践も含めて各学年とも複数例にわたり,授業の様子がわかりやすいように,授業で使用した資料や子どもの作品例,子どもの発言などを示しながら平易な言葉で書かれていて,明日からの授業ですぐに役立つ情報が満載されている。
B 難解な説明になりがちな理論も著者の家族での会話をもとに,実に読みやすくわかりやすくまとめている。(「スイカ」の話は,おもしろかったです。)
また,本書が目指す「対話型」の授業は,「みんなで考え合う授業」です。「調べて考え,表現する」社会科の重要性は,これまでも言われてきたことですが,そのことを具体的に説明した良書にはなかなか出会えませんでした。本書のキーワードである「一往復+α」は何のことなのか…このことを考えながら読み進めると,「調べて考え,表現する」社会科が見えてくると思います。
これから社会科を研究しようと考えている方,そしてふだんの授業を子どもが生き生きする授業につくり変えていこうとする方には,ぜひおすすめします。