- はじめに
- T 総論編 Part1
- 1 研究主題にかける願い
- 2 目ざす子どもの姿
- 3 目ざす子どもの姿に迫るために
- (1)独創性を育む四つの力
- (2)差異を把握する力
- (3)単元における三つの段階の設定
- 4 独創性を発揮する子どもの姿
- U 教科編 Part2
- 1 国語科
- 言葉をよりどころにして物事の真実を求め、自らの言葉で紡ぎ出す
- [2年生実践] 人と生きる(短編小説) 【差】
- [1年生実践] 死が与えるもの(短編小説・ノンフィクション)
- [2年生実践] こころのありかを探して(説明的文章・演劇)
- [3年生実践] 言葉のもつ力(随筆)
- 2 社会科
- 社会的事象を多面的・多角的に捉え、よりよい社会の構築に向けて動き出す
- [2年生実践] 減少していく日本の水産資源(地理的分野・日本の農林水産業) 【差】
- [1年生実践] 茶道がつなぐ戦国と今(歴史的分野・桃山文化)
- [2年生実践] ふるさとに生きる(地理的分野・日本の諸地域「東北地方」)
- [3年生実践] フェイク or ファクト!?これからの情報化社会に向けて(公民的分野・情報化「現代社会の特色と私たち」)
- 3 数学科
- 数量関係や図形の性質をもとに論理的に考え、よりよい判断を導き出す
- [2年生実践] 幸運な確率を求めて(確率) 【差】
- [1年生実践] 演美の世界(変化と対応)
- [2年生実践] 形でつくるカタチ(図形の調べ方・図形の性質と証明)
- [3年生実践] データで切り開く未来(標本調査)
- 4 理科
- 自然の神秘や科学の有用性を実感し、自然との距離を縮める
- [2年生実践] そこにはない音(行動のしくみ) 【差】
- [1年生実践] これが私の生きる道(植物の体のつくりとはたらき)
- [2年生実践] 危機脱出!ゆで卵大作戦(化学変化と熱の出入り)
- [3年生実践] 一発必中、我ら附中防衛軍(物体の運動)
- 5 音楽科
- 音楽の諸要素と結びつけて音楽を見つめ、人と関わりながら音楽表現を楽しむ
- [1年生実践] 「音楽で語る物語の世界」―昔話『三枚のおふだ』の音楽づくり―(創作) 【差】
- [1年生実践] 僕たちのオリジナルボディパーカッションを創ろう!!(創作)
- [2年生実践] 「心の音を探して」―短編動画の音響効果づくり―(創作)
- 6 美術科
- 多様な美を味わい、他者との美意識の違いを楽しみながら、思いを表現する
- [3年生実践] レリーフの時計―われらの生きたときを刻む―(デザイン・彫刻) 【差】
- [1年生実践] パラリンピック応援Tシャツ―この思い、Rioに届け―(デザイン)
- [2年生実践] 下を向いて歩こう―創立 70 周年記念マンホール―(デザイン・工芸)
- 7 保健体育科
- 仲間と運動に関わることの楽しさや達成感を味わい、豊かなスポーツライフの実現に向けて自ら動き出す
- [3年生実践] あなたと私をつなぐもの「フットボレーボール」(球技・ネット型) 【差】
- [1年生実践] 一打に想いをのせて「3ON3ゲートボール」(球技・ターゲット型)
- [2年生実践] われらグレート「附属」武将隊(表現運動・創作ダンス)
- [3年生実践] King of Rally「ソフトバドミントン」(球技・ネット型)
- 8 技術・家庭科
- くらしを見つめ、豊かなくらしを創造する
- [3年生実践(技術)] くらしをつくるプログラミング(情報の技術) 【差】
- [1年生実践(家庭)] 香りと暮らす(衣食住の生活・消費生活) 【差】
- [1年生実践(技術)] 菱から広がる技術の世界(材料と加工の技術)
- [2年生実践(技術)] 未来をつくる歯車(エネルギー変換の技術)
- [2年生実践(家庭)] いのちをつなぐ(衣食住の生活・消費生活)
- [3年生実践(家庭)] 自分らしく生きる(家族・家庭生活)
- 9 英語科
- 世界の人と対話し、世界を包括的に捉える
- [3年生実践] Attractive Japan(Cultural Diversity) 【差】
- [1年生実践] One for All, All for One(This Is My Life)
- [2年生実践] Will Insects Save the Earth?(Different Countries)
- [3年生実践] Jobs Make the World(My Future, Our Future)
- 【参考資料】各教科の独創性を育むための追究単元例
- V 行事・Lifework編 Part3
- 独創性を発揮する子どもの姿
- 行事・Lifework とは
- [行事@] 「美ヶ原、行ってきます」自然体験活動(1年生)
- [行事A] 「互いに寄り添い、とことん話し合えるのが附中生だ」修学旅行(2年生)
- [行事B] 「僕たちの意思で創っていくのです」体育大会(3年生)
- [行事C] 「ここまでの道のりを私はとても誇らしく思う」コーラスコンクール(3年生)
- [Lifework@] 「薬草と上手につき合っていくには」薬草(1年生)
- [LifeworkA] 「実現不可能だからこそ」永久機関(2年生)
- [LifeworkB] 「100 年に一度の大転換期」エネルギー(3年生)
- おわりに
- 研究同人
はじめに
なにげない子どもとの関わりや、いつまでも続くと疑わなかった日々が、新型コロナウイルス感染症の影響により、変化を余儀なくされています。本校は、1947年の開校以来、「生活教育」を普遍の理念として、研究を続けてまいりました。さらに今、新しい生活様式の中で、教室という枠にとらわれずに、子どもを見つめ、実践を重ねるための工夫を始めています。
1911年12月14日、人類は、初の南極点到達を果たしました。一人の犠牲者も出さずに帰路についた隊長のアムンゼンは、隊員の自主性とチームワークを重んじたそうです。これは、自立した個(私)が、全(私たち)としても輝くという協働の精神です。
私の研究分野は地震学で、これまでに4度、南極地域観測隊(41・43・49・59次)に参加しました。そして、多くの研究者・技術者との協働によって大きな成果を得てきました。南極に赴くたびに、アムンゼンのようにありたいという思いが強まります。
本書は「独創性を育む」を研究主題に掲げ、学校という語らいの場で、「誰もが幸せを実感できる未来」に向けて、仲間と協働して追究し、創りあげる実践を提案したものであり、私たちの5年間にわたる研究の成果です。
子どもは、「問いをもつ力」「本質に迫る力」「学びを表現する力」を高めることにより、個(私)の考えをより確かなものにして、より主体的になります。さらに、仲間と関わることにより、多くの個の考えとの「差異に気づく」ようになります。その差異を味わい、仲間の考えや理由、背景を見つめ、「差異を吟味する」ことをとおして、全(私たち)のよりよい考えに到達します。この2段階の思考の流れをとおして、子どもは「差異を把握する力」を高めます。その過程を、「新しい見方で捉える」として、本研究の中心におきました。この考え方は、私が南極で多くの研究者・技術者との協働によって成果を得てきたことにも通じています。
さて、2021年度から中学校において完全実施される新学習指導要領は、社会の変化が予測困難になっても、子どもの学びが将来につながるように設計されています。奇しくもコロナ禍を予期したかのように、子どもが「生きる力」を育み、自らの手で、明るい未来をともに創ってほしいという願いがこめられているといえます。
私たちの研究「独創性を育む」は、新学習指導要領を先駆的に実践したものと自負しております。私たちの研究と実践に、忌憚のないご意見とご教示をいただければ幸いです。
最後になりましたが、本研究に対しまして、数々のご指導、ご支援を賜りました先生がた、実践にご協力いただいた多くのかたがた、ならびに、出版に際してご尽力いただいた明治図書編集部の皆様に、心より感謝申しあげます。
令和2年10月 愛知教育大学附属岡崎中学校長 /戸田 茂
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- 明治図書