- はじめに
- T 教師の確かな授業力がリズムとテンポを生み出す
- 一 それは、シンプルな授業構成から生まれる
- 1 教師の見栄を捨てる
- 2 学力補強プリントを配るだけで授業モードに突入
- 3 大切なことは教師が言わない
- 4 教科書に語らせる
- 二 リズムとは授業の強弱 だから笑顔のある授業が生まれる
- 〜「わずかな違い」が授業に強弱を生み出す〜
- 1 指示の言い方に強弱をつける
- 2 生徒の発言に強弱をつける
- 3 あえて静かな空気を生み出す
- 4 教師の立つ位置でさえ、授業の強弱につながっている
- 三 テンポとは授業の速さ だから、生徒が授業に集中する
- 〜無駄な言葉を削れば授業の本筋が見えてくる〜
- 1 自分の授業を録音し、言葉を書き出していく
- 2 無駄な言葉を削るための修業法
- 3 自覚を持った教師だけが、テンポある授業ができる
- 四 パーツで授業を組み立てると流れる授業になる
- 1 わからない表情を浮かべても修正できない
- 2 パーツという言葉を知った「後」
- 3 クラッシュしても立て直せる理由
- U 生徒の集中力が三倍増す地理教材活用法
- 一 すっと授業に入れる「学力補強プリント」が授業にリズムとテンポを生み出す
- 二 フラッシュカード
- 1 フラッシュカードで扱った学習内容
- 2 フラッシュカードを使った国旗の授業
- 3 県庁所在地のフラッシュカード
- 4 テンポを生み出す褒め言葉
- 三 国 旗
- 〜いくつかの知的なエピソードで物語を構成する〜
- 四 地球儀
- 〜地球儀を自分で作るから楽しい授業になる〜
- 1 生徒に人気ナンバーワンの教材・地球儀
- 2 店もの点がなければ授業にならない
- 3 手作りの楽しさを加える
- 4 ペーパークラフトで難問を解く
- 五 四月に指導する地図帳指導五項目
- 1 四月の地図帳指導五項目
- 2 新学期第一・二時間目の実践
- 3 新学期第三時間目の実践
- 4 それ以降の授業実践
- 六 掛地図
- 〜地理授業では掛地図は必須アイテム。生徒の目線の移動を少なくする配慮が、授業にリズムとテンポを与える〜
- 七 国勢図絵の最新データと教科書を比較する
- 1 データは変化する
- 2 日本の工業の変化に注目する
- 3 日本とアジアニーズとBRICs
- V 中学生はテレビゲーム世代 スピード感ある授業を求めている
- 一 出会いの授業における私のこだわり
- 〜すべては、普段の授業の延長線上にある〜
- 1 授業開始時間前に教室に入る
- 2 チャイムとともに授業を開始する
- 二 教師が発する指示の言葉一つで授業が変わる
- 〜教師が説明しない授業を理想とすると、やるべきことが見えてくる〜
- 1 最も簡単なことを問う
- 2 ノートに書いたことを発表させる
- 3 意図的な使命で鍛える
- 三 形式的な挨拶は授業を濁らせる
- 〜儀式のように繰り返される挨拶が静かに授業を崩している〜
- 四 テンポある授業は生徒を地理好きにさせる
- 〜出逢いの授業を演出するコツ それは楽しいエピソードを中心に授業を組み立てること〜
- 1 活動しながら規範を教える
- 2 とにかく「楽しさ」を最優先する!
- 3 楽しく、そして「知的」に
- W リズムのある授業が確かな学力を育てるオススメ授業実践
- 一 頭に情報をイメージできる地元の地形図を使って読み取りの基礎基本を学習する
- 二 グラフの基礎基本 的確な指示で「気候のグラフ」を読み取る
- 1 基本を読み取る
- 2 グラフから読み取る
- 3 グラフが書ければ、グラフは読める
- 三 直写・指書き・空書き・写し書きで略地図はバッチリ!
- 1 直写で授業の最初は地図を描く成功体験からスタートさせる
- 2 指書きで全体のおおまかな形を覚える
- 3 空書きでさらに形を覚える
- 4 いよいよ本番! 写し書き
- 5 個別評定で燃える
- 四 グラフの読み取りは箇条書きが有効である
- 1 グラフの読み取りをさせる
- 2 生徒に考えさせたあと黒板に書かせる
- 五 地図を直写する
- 〜リズムとテンポのある授業を行うには、作業に集中してシーンとなる授業も必要である〜
- 六 地域学習・調べ学習のスキルを基本から身につける
- 七 生徒の目が輝く近未来の授業
- 〜日本の最先端技術を紹介・レアアースマグネット〜
- 八 日本がリードするインセクト・テクノロジーの世界
- 1 カタツムリの殻を利用したインセクト・テクノロジー
- 2 スズメバチの食事を利用したインセクト・テクノロジー
- 3 昆虫に親しむ日本人
- 4 これからのインセクト・テクノロジー
- 九 最先端の日本の技術を伝える「最新環境教育授業テキスト」
- 一〇 国民としての自覚を育む 領土問題を授業する
- 〜エネルギー問題と領土問題〜尖閣諸島の授業〜
- 一一 「調べ学習」は短時間に効率よく進める
- 〜そのためには、生徒に丸投げしない〜
- 1 一斉学習(一時間)
- 2 個別学習(四時間/一時間目)
- 3 個別学習(四時間/二〜三時間目)パソコン室にて二時間続きで行う
- 4 個別学習(四時間/四時間目)
- 5 確認学習(一時間)
- あとがき
はじめに
「だらり」とした授業を見た。教員三年目。生徒にも人気があるのであろう、授業開始前、多くの生徒がその教師を囲んでいた。しかし、私はその光景に違和感を抱いた。教師と生徒の目線が合っていなかった。生徒は教師を見て発言していたが、教師の目は下を向いていた。「生徒に押し切られる授業になる」と思った。
授業開始。生徒数一〇人にもかかわらず、教師の目線は最前列の生徒に届いていなかった。これでは生徒の行動を確認できない。
「教科書を開きなさい」という第一指示から、半数以上の生徒が落ちこぼれた。中学生は「できない」と思った瞬間、思考をストップさせる。生徒を《お客さん》にしないためには、教師は生徒を見なくてはならない。そして、生徒が「できている」「できていない」を峻別しなければならない。できていれば褒め、できていなければやらせる。こうした当たり前のことが徹底できない限り、授業にリズムとテンポは生まれない。
目線は、どのように鍛えるのか。サークルの若い教師には、次のように指導している。
まずは、N字を描くように目を動かしなさい。
教室の左側最前列から目線を後方に送る。最後尾の生徒と目を合わせる。その時、笑顔で合図を送る。次に、右側最前列まで目線を動かす。一番前に座っている生徒にも笑顔で合図を送る。最後に、目線を後ろにずらして最後尾の生徒に合図を送る。目線のポイントは《一瞬止める》ことにある。止めるから、生徒は「見られている」と思う。自然と、授業に緊張感が生まれる。
その後、Z型・M型・W型とパターンを増やしていく。これが基本形である。
次は応用形である。授業成立のキーを握っている生徒の目を見て、目線を《一瞬止める》のである。
まずは、学級で最もうるさい生徒に目を止める。この場合、《目線の力》が必要となる。目線で「静かにしなさい」と訴える。重要なことは、目線を動かす流れの中で《一瞬止める》ことである。特定の生徒を見ていることを悟られてはならない。同様に、真面目な生徒にも目を止める。この場合、《優しさ》が必要となる。目線で「立派です」「その意欲を称えます」という合図を送る。
サークルの若い教師は「目線を意識して授業が変わりました」「やんちゃな生徒と目が合ったとき、初めて笑ってくれました」と証言している。
目線を鍛えるだけで授業が劇的に変化する。授業にリズムとテンポが生まれるからだ。中学生はテレビゲーム世代。我々の中学時代に比べ、スピード感ある生活をしている。授業も、それに合わせて構成しなければならない。
中学向山型社会研究会は、生徒にとって価値ある授業を目指している。「私の得意教科は社会科です」と笑顔で答えられる生徒を育てたいと願う中学教師に読んでいただけると幸いである。
/染谷 幸二
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- 明治図書