- まえがき:社会科が言語力を育成する
- T 「言語力」をつける社会科授業とは
- 1.言語力の育成
- (1) 各教科共通部分で社会科に関連する記述
- (2) 社会科オリジナルに要請されている指導方法
- 2.読解力と社会科
- (1) PISA型読解力
- (2) 中央教育審議会報告と読解力
- (3) 社会科における読解力の育成
- 3.社会科授業と言語力
- (1) 記述
- (2) 説明
- (3) 解釈・判断
- 4.教養知・暗黙知と国語力
- (1) 教養知・暗黙知の形成
- (2) 科学知の形成
- (3) 教養知・暗黙知形成の場の保障
- U 社会科授業における「体験・経験」と言語力の育成
- 1.社会的な理解の道具としての言語
- 2.記号としての言語
- (1) 記号と記号関係の成立
- (2) 意味伝達の手段としての言語
- 3.意味を読み取るしくみと「言語力」の育成
- (1) コードの役割
- (2) コンテクストの役割
- (3) 意味を読み取るしくみ
- 4.社会科授業における「体験・経験」と「言語力」の育成
- (1) 体験と経験
- (2) コードの増殖と経験
- (3) 社会科授業における「体験・経験」と「言語力」の育成
- V 「言語力」をつける社会科授業プラン
- 1.「記述・報告する力」をつける授業モデル
- 【授業プラン@】社会科で育てる記述・報告する力
- 【授業プランA】「記述する力」を高める知識創造型授業授業プラン
- 【授業プランB】記号化した情報をもとに知識のネットワークを拡げる
- 【授業プランC】説明につながる豊かな情報の獲得―「国土のようす(地形)の学習を通して―
- 2.「解釈する力」をつける授業モデル
- 【授業プラン@】生活科における「解釈する力」の育成―体験から経験へのイメージ形成を通して―
- 【授業プランA】写真を用いて「解釈する力」を身につける
- 【授業プランB】「推理」の思考を働かせ,働く人の「工夫や努力」を解釈する
- 3.「説明する力」をつける授業モデル
- 【授業プラン@】情報の蓄積からの脱却をめざす社会科授業
- 【授業プランA】身近な疑問を「わかる」につなぐ
- 【授業プランB】視点を意図的に設定して社会事象を説明する
- 4.「判断する力」をつける授業モデル
- 【授業プラン@】クリティカルシンキングで「判断する力」を
- 【授業プランA】社会事象を自己の視点から判断するために―詩・新聞記事に込められたメッセージを手がかりに―
- 【授業プランB】計画ゲームを活用した判断力を育成する授業―第5学年「環境を守る森林の働き」の実践から―
- 5.「習得・活用・探究する力」をつける授業モデル
- 【授業プラン@】「具体的な情報」をことばで結ぶ
- 【授業プランA】地理的分野「身近な地域の調査」を活用する
- 【授業プランB】探究する力を育てる模擬的地域調査学習
- W 「言語力」をつける社会科授業と評価
- 1.社会科における評価の位置づけ
- 2.社会科における評価方法
- (1) ペーパーテスト評価法
- (2) 観察・作品分析評価法
- (3) メタ評価法
- 3.言語力をつける授業と評価
- (1) 読解力向上の社会科授業に
- (2) 評価から授業を変える
- 4.求められるマネジメント力
- あとがき
まえがき:社会科が言語力を育成する
言語力は方法知の習得によって育つわけではない。言語力育成の基本は,他の人への説得力をつけることである。人はどのような時に説得されるのだろうか。それは事実の持つ情報と事実間の関係に納得したときである。
例えば,“環境に優しい生活を実践すべきである。”と,100回,徳目を聞かされても,人は納得するものではない。
「酸素の巨大供給基地アマゾンの森林では,この10年間,毎分,サッカー場5つ分の面積の森林が破壊されている。」,「森林から流れ出る有機物が,作物を育て,海の魚を育てている。」,「ヒマラヤ山脈の氷河は,2035年までに,1955年時点の5分の1に減少する。」といった種類の情報は,人々を動かすことができる。森林を守ることを考え,地球温暖化の防止につながる生活をする,といった行動へとつながってくる。
言語力をつけるためには,内容知につながる情報を習得させ,情報間の関係を納得的に分からせることが必須である。このことを考えたとき,内容知8割,方法知2割で展開される社会科は,言語力育成において有効性が高い。
“社会科は言語力育成の中核教科である”ことを,本書において展開されている理論および授業モデルで示す。
多忙な日常の中で,原稿を完成いただいた諸氏,および,出版事情の厳しい中万端に亘りご尽力いただいた明治図書及川誠氏に,感謝申し上げる。
平成20年1月10日 編著者 /岩田 一彦 /米田 豊
まさに今、求めていた本。
必読かと。