100万人が解きたい!見方・考え方を鍛える中学公民ワーク

100万人が解きたい!見方・考え方を鍛える中学公民ワーク

好評2刷

逆転現象を生む!すべての生徒が主体的に取り組める公民ワーク

100万人が解きたい!見方・考え方を鍛える中学公民ワーク集。ワクワク感満載の魅力的な授業ネタが学習意欲を生み、見方・考え方と主体的に学習に取り組む態度を育てます。問題シート+解説・解答シートの見開き2ページ構成で、知識定着と振り返りをフォローアップ。


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ISBN:
978-4-18-434611-6
ジャンル:
社会
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 152頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年12月2日

Contents

もくじの詳細表示

はじめに
Chapter01 「主体的・対話的で深い学び」をすべての生徒に
〜「落ちこぼし」をつくらない公民ネタ〜
1 切り口は単純だが,深い学びのあるネタ
〜「犬税」から「主権者意識」,「国会議長の歳費」から「国民主権」へ〜
2 はやくわかりたい!解決したいと思うネタ
〜「国連は何語でしゃべるの?」〜
3 日常生活から科学の世界にせまるネタ
〜「価格」の事例から〜
4 矛盾や対立,驚きや葛藤から見方・考え方を培うネタ
〜インフレと物流〜
5 思考や判断が揺れるネタ
〜最初の女性参政権はニュージーランド?〜
6 「切実性」「当事者性」のあるネタ
〜地球温暖化〜
Chapter02 公民授業のつくり方
1 少子高齢社会への対応策を考える
〜ジグソー法を通して多面的・多角的に考察する〜
2 婚外子は遺産相続はできないの?
〜「違憲審査権」と憲法の精神〜
3 コロナ不況って何?
〜経済活動の「自粛」がもたらすもの〜
Chapter03 ワークの使い方の事例
〈SDGs〉フラワーロス解消 〜コロナ禍〜
Chapter04 現代社会ワークシート
現代社会
校則とクラブ規則 〜きまり〜
異なる文化の尊重 〜文化って何?〜
10万円給付金は有効だったか? 〜効率と公正〜
コロナ禍の産業変化 〜非接触文化〜
空き家調査バイト 〜コロナ禍〜
Chapter05 政治ワークシート
憲法
憲法は空気? 〜憲法って何〜
人を殺していないのに死刑? 〜大日本帝国憲法〜
多数決は正しいか? 〜民主主義と立憲主義〜
世界が期待する9条 〜平和主義の変化〜
人権
イスラムのスカーフの禁止 〜信教の自由〜
ドラフト制は憲法違反? 〜職業選択の自由〜
ジェンダーギャップ指数 〜平等権〜
朝日さんの頑張りによって 〜社会権〜
変化するプライバシーの権利 〜新しい人権〜
民主政治
疑似選挙を体験しよう 〜選挙制度〜
エピソードから学ぶ国会 〜国会〜
先生は国務大臣になれるか? 〜内閣〜
財務省って何してるの? 〜行政の仕事〜
イマドキの裁判 〜裁判の種類〜
なぜ権力分立があるのか? 〜三権分立〜
若者の政治参加 〜民主主義〜
なぜ若者の投票率は低いのか 〜政治参加〜
憲法
憲法かるたで遊ぼう 〜憲法〜
Chapter06 経済ワークシート
市場経済
空気や傘が貴重なとき 〜希少性〜
得意と不得意を活かす 〜分業・比較優位〜
サルマネーは必要? 〜貨幣の役割〜
高速バス,それとも新幹線? 〜機会費用〜
エベレストの入山料 〜市場〜
広がる「見えない」お金 〜キャッシュレス〜
誘導で世の中のために 〜ナッジ〜
サイズの合わない服を買って 〜契約とクーリングオフ〜
競争っていけない? 〜競争と独占〜
日本で働く外国人 〜技能実習生〜
財政
110番に電話すれば? 〜財政の役割〜
豊富の中の貧困 〜景気〜
バブルとバブル崩壊 〜プラザ合意〜
銀行がなかったら? 〜金融機関〜
投資か貯蓄か? 〜直接金融と間接金融〜
公園がなくなる! 〜公共財〜
なぜ医療保険があるの? 〜社会保険〜
国際経済
わくわく円高・円安ゲーム 〜為替〜
Chapter07 国際ワークシート
国際
なぜ,困っている人を助けなければならないの?
シューズは命を守る 〜国際協力〜
自立のための支援 〜バングラデシュ〜
SDGs
吊り広告から考える持続可能な社会 〜街の中のSDGs〜
幸福の条件 〜ワークショップ〜
なぜ貧困の連鎖が続くのか? 〜アフリカ〜
2050年には魚の量を超える 〜プラスチック問題〜
買い物難民 〜ジグソー学習〜
おわりに

はじめに

 長崎原爆資料館の入り口に「長崎からのメッセージ」が掲げられている。核兵器,環境問題,新型コロナウイルスという3つを挙げ,それらに「立ち向かう」根っこは同じだと語りかける。「自分が当事者だと自覚すること」「人を思いやること」「結末を想像すること」そして「行動に移すこと」である。このメッセージにこれからの社会科教育のあるべき姿が示されているのではないだろうか?

 「当事者性」とは,子どもたちにとっても「切実性」「有事性」のある題材から,社会と対峙する学びを創造することであろう。「地球温暖化」については,魚種の変化,果物栽培の不適地化など食生活の変化も予想されるが“いのち”そのものが問われている。現在,「熱中症」で亡くなる人は年間約1000人であるが,今後,発生率は,埼玉県では2.5倍,福岡県では3〜4倍,大阪府では連日危険レベルになると言われている。また,「台風」は,列島近海の海水温27度以上の海域で勢力をあげ,日本列島に近づくほど勢力を強め上陸し,「豪雨」「土砂くずれ」など大規模な災害が増えている。そして,陸地にある氷河が解けはじめると,東京都江戸川区の海抜ゼロメートル地帯では,巨大台風が都心に上陸し荒川と江戸川が決壊した場合には約250万人が浸水被害を受ける。ヒマラヤ山脈の雪が解け,雪崩がおこり多くの人に被害がでたことは周知の事実だ。子どもたちにとって「身近」で「当事者性」のある題材から社会の課題を追究し解決する方法について学ぶことが大切である。

 「人を思いやる」ためには,社会的事実や課題を“知る”ことが不可欠である。先日,「国境なき医師団」が,カリブ海にあるハイチでの医療活動への支援を呼びかけていた。ハイチは,アフリカから奴隷として連行された黒人による国で,フランスによって支配されていた。1804年,十数年間におよぶ血なまぐさい奴隷蜂起を通して独立を勝ち取った唯一の国である。だが,2004年には森林伐採の影響もあり,ハリケーンで約2000人の死者を出し,2010年の大地震では,救助に来た外国人からもたらされたコレラにより82万人以上が苦しんだ。「医師団」は,入院したコレラ患者の治療をしている。直接下痢の便を出してもらうため,ベッドのお尻が当たるところに穴をあけ,いくつかのベッドの穴の下にはバケツが設置された写真が目に留まる。筆者が募金をしたのは,ハイチの歴史や災害そして「医師団」の活動もあるが,活動資金の96%は民間からの寄付で成り立っている事実を知ったからである。「医師団」は,これらの治療を“傷に絆創膏”と揶揄する。なぜなら,ハイチの構造的な問題があるからだ。スタッフは昼夜を問わず救護をおこなうが,施設の外の街にゴミが浮き,汚水が流れている現実に肩を落とす。事実や背景を“知る”ことで“人を思いやる”気持ちが動く。そして次の課題も見えてくる。

 「結末を想像すること」については,少子高齢社会の進行から考えてみよう。2021年には「介護」による離職が大量発生,22年「ひとり暮らし社会」が本格化,24年全国民の6人に1人が「75歳以上」,25年「認知症患者」が700万人規模に,そして,私がもっとも危機感をもつのは,2030年には地方からデパート,銀行,老人ホームが消え,その3年後の33年には全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる「結末」である。しかし,これは,何ら対策がなく放置した場合である。「対策」の必要性を“痛感”すれば「未来」は見えてくる。展望ある「未来の世界のかたち」は,2015年に“危機の時代の羅針盤”として提起された,SDGsの169のターゲットに示されている。2030年までに「誰一人取り残さない」社会の実現を目指すSDGsのターゲットは,社会科教育の目標と合致する。SDGsは,「答えのある問題集」であり,その「実現過程」を考えることで「思考力・判断力」が育つ。「ポジティブ」「ネガティブ」のどちらであろうが,「未来の世界のかたち」を「想像」する力は「変化を生む羅針盤」である。

 そして,「行動に移すこと」である。学習指導要領では「学びに向かう力,人間性等」で,「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るかを目標にしなければならない」と「参加・参画」の視点が示されている。例えば,マクドナルドが,水産資源と環境に配慮したアラスカのMSC認証漁業からスケトウダラを輸入していることから,MSCアンバサダーのココリコ田中直樹さんは以下のように語っている。「僕はマクドナルドでエッグマックマフィンを注文していました。マクドナルドがMSC認証の魚を使ったフィレオフィッシュ(R)を提供するようになり,注文が変わりました。でも毎回注文するわけではありません。……続かない気がするからです。フィレオフィッシュを注文することが増えた。それくらいでいいと思っています」(要旨)。自分の「興味」あることを切り口に“ちょっとした行動”が地球や地域,未来を変え,地球市民としての社会正義を考える授業が問われている。

 最後に,「社会的な見方・考え方」である。学習指導要領の中では「社会的事象等を見たり考えたりする際の視点や方法」とされているが,平たく言えば「知識を忘れても残る思考力・判断力」とも言える。これからの授業は「見方・考え方」を培い,急速に変化する「予測困難な時代」に向けて持続可能な社会の担い手を育てようとするものである。しかし,何度も何度も……「暗記社会科」からの脱却が問われてきたが,いまだに克服ができない現状がある。生徒の知的好奇心に火をつける「わかる楽しい授業」も大切だが,「先生! 世の中って複雑ですね」「立場やいろんな見方・考え方があるんですね」「家に帰って勉強します」という,「もやもやするけど楽しい」“深い学び”から,社会に対峙しつつ「思考力・判断力」を育てる授業実践が問われている。

 本書は,“誰一人取り残さない”すべての生徒がわかる授業を目指してきた筆者が,すべての生徒に「社会的見方・考え方」をつける授業に挑戦した試みである。それも従来の「授業記録」「授業プラン」ではなく「ワーク」形式で紹介させていただいた。多くの先生に本書を手にとっていただき,「社会科=考える教科」となることを願うばかりである。


  2021年7月   /河原 和之

著者紹介

河原 和之(かわはら かずゆき)著書を検索»

京都府木津町(現木津川市)生まれ。

関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て,東大阪市立縄手中学校退職。現在,立命館大学,大阪教育大学他,5校の非常勤講師。

授業のネタ研究会常任理事。

NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」出演。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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