- まえがき
- T いま改めて、人物・文化遺産中心の歴史学習を
- /北 俊夫
- 1 小学校における歴史学習の改善 なぜいま、人物・文化遺産中心なのか
- 2 小学校の歴史学習で身につけたい資質・能力
- 3 小学校らしい歴史学習を進めるポイント
- 4 新しい学習指導要領の内容構成
- U 小学校らしい歴史学習をどう進めるか*わたしの提案
- 1 我が国の歴史に対する理解と愛情をどうはぐくむか /羽豆 成二
- (1) 歴史学習の改善の経緯と学校での取り組み
- (2) 歴史に対する理解と愛情をはぐくむ
- 2 夢と目標を感じる歴史学習をどう進めるか /小堀 美須津
- (1) 小学校の歴史学習で大切にしたいこと
- (2) 夢と目標を感じる歴史学習
- (3) 明治以降の歴史学習
- 3 小学校としての歴史的な見方をどう育てるか /小原 友行
- (1) 学習指導要領の改訂と小学校歴史学習の実践的課題
- (2) 小学校らしい歴史学習で育てる歴史的な見方
- (3) 歴史的な見方を育てる歴史学習論
- (4) 新しい歴史学習の授業構成
- 4 人物中心の歴史学習・指導計画をどう改善するか /安野 功
- (1) 人物中心の歴史学習の魅力と実践上の課題
- (2) 人物中心の歴史学習・指導計画改善の手順とポイント
- (3) 人物中心の歴史学習・年間指導計画例
- V 小学校の歴史教科書の現状と課題*わたしの教科書研究
- /澤井 陽介
- 1 現行の歴史教科書はどう構成されているか〜人物の扱い,現行学習指導要領との関連〜
- (1) 教科書の内容が抱える課題
- (2) 教科書の構成のしかたが抱える課題
- 2 教科書の内容構成をどう工夫・改善するか〜つくる側への注文とモデルの提案〜
- (1) 内容をどう絞り込むか
- (2) 構成をどう工夫するか
- 3 教科書をどう効果的に活用するか〜活用する側の改善点〜
- (1) 学習内容の重点を決めること
- (2) 学び方を重視すること
- (3) 「歴史を学ぶ意欲を育てる」と割り切ること
- W 小学校らしい歴史学習のプラン
- 1 「大仏造営」にかかわって聖武天皇や行基を取り上げたプラン
- 小単元 「聖武天皇と奈良の大仏」 /田沼 哲哉
- (1) 本プランの特徴点―従来との違い
- (2) 小単元のねらいと指導計画
- (3) 指導に当たってのポイント 以下の各プランに共通
- 2 「鎌倉幕府の始まり」にかかわって源頼朝を取り上げたプラン
- 小単元 「行こう鎌倉へ,頼朝に会いに」 /井上 健
- 3 室町時代の「絵画」にかかわって雪舟を取り上げたプラン
- 小単元 「雪舟と水墨画」 /山下 真一
- 4 「天下統一」にかかわって織田信長,豊臣秀吉,徳川家康を取り上げたプラン
- 小単元 「三人の武将と天下統一」 /吉村 潔
- 5 江戸時代の「新しい学問」にかかわって杉田玄白を取り上げたプラン
- 小単元 「杉田玄白と蘭学」 /坂本 正彦
- 6 「明治維新」にかかわって西郷隆盛や大久保利通を取り上げたプラン
- 小単元 「西郷・大久保と明治維新」 /坂本 正
- X 学習指導要領に見る小学校の歴史学習の変遷と解説
- /北 俊夫
- 1 社会科の発足期における学習指導要領(試案)
- 2 昭和30年版小学校学習指導要領
- 3 昭和33年版小学校学習指導要領
- 4 昭和43年版小学校学習指導要領
- 5 昭和52年版小学校学習指導要領
- 6 平成元年版小学校学習指導要領
- 7 平成10年版小学校学習指導要領
まえがき
学校で歴史好きの子どもを育てたい。これはわたくしの願いである。なぜあえて「学校で」なのか。それには,次のような理由や背景がある。
「子どもは歴史が嫌いか」といえば,そうではないように思う。ある調査によると,小学校高学年の子どもたちが,学校の図書館で借り出している図書で,もっとも多いジャンルが伝記などの歴史物であるという報告がある。また,テレビで放映される歴史ドラマやアニメ風に展開されている漫画の本などに夢中になる子どもも多いと聞く。こうした実態を見ると,子どもたちは,本来人間の生き方に触れることのできる歴史に関心があり,興味をいだいているのではないかと思う。
なのに,なぜ学校での歴史学習は好きになれないのか。子どもたちは「学校での歴史は覚えることが多くていやだ」「出来事が複雑にからみ合ってわかりにくい」という。学校での歴史学習が,子どもの発達やニーズに十分応えきれていないように思われる。
わたしたち大人は,すでに何十年間にもわたって,過去の歴史を学んだり接したりする機会があり,それらの成果を蓄積してきている。一人一人のなかに歴史のイメージや知識がかなり形成されているのである。子どもの指導に当たるとき,どうしても何十年間で培われてきた自分のイメージや知識が先行する。このことが,つい教え込みになってしまうのであろう。
小学校の6年生の子どもたちは,日本の歴史を初めて学ぶ。これから生涯にわたって歴史を学んでいく,文字どおり「初めの一歩」である。歴史を学ぶ初心者に適した指導や学習の仕方がなければならない。
小学校の歴史学習は,従来から,人物の働きや代表的な文化遺産をとおして我が国の歴史を学ぶという特色を打ち出している。これは,人物や文化遺産という具体的な人や物をとおして学ぶことにより,歴史を学ぶ楽しさを味わい,歴史に対する興味や関心を高めることができるというものである。歴史の学習は,いうまでもなく小学校で完結されるものではない。中学校でも学び,高等学校でも学ぶ機会がある。小学校は,その入口であり,入門期である。それにふさわしい歴史学習を展開する必要があると考える。
本書は,こうした意図のもとに,小学校らしい歴史学習のあり方について提案したものである。本書は,五つの章から構成されている。
T章では,人物・文化遺産を中心にした小学校らしい歴史学習のねらいやそこで身につけたい資質・能力などについて,編者がまとめた。U章では,小学校らしい歴史学習をどう進めたらよいか。4人の先生方から貴重なご提案をいただいた。V章では,小学校の歴史教科書の現状と課題について,そして,W章では,小学校らしい歴史学習のプランを6事例紹介した。最後のX章では,学習指導要領に見る小学校の歴史学習の変遷を資料的に紹介し解説した。
各学校で,子どもたちが楽しくて,うずうずする歴史学習を創っていくために,本書がお役に立てれば望外の喜びとするところである。
本書をまとめるに当たって,お忙しいなか,ご提案,ご執筆をいただいた先生方に心よりお礼申しあげる。また,本書の企画段階から,いろいろと貴重なご指導やアドバイスをいただいた,明治図書出版編集長の樋口雅子さんに感謝の意を表したい。
平成11年3月 編著者 /北 俊夫
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- 明治図書