- まえがき
- T 社会科の小・中連携をどう考えるか
- 1 なぜ,小・中連携なのか――問題の所在
- 2 社会科の目標・内容はどう構造化されているか
- (1) 社会科のねらい
- (2) 社会科の内容構成
- 3 小・中連携を図るために――三つの提言
- おわりに――今後の課題
- U 小・中連携で,授業を変えよう! 子どもを変えよう!
- 1 学習者を中核に据えた,小・中学校社会科教員の地域的連携
- (1) 地域的な連携の必要性
- (2) 問題の所在
- (3) 地域的な連携に求められるもの
- 2 小・中学校の7年間で学ぶ内容の関連・系統化
- (1) 小・中学校ともに内容の改善を――「社会科は嫌い」
- (2) 小・中学校の社会科の目標から
- (3) 小・中学校における内容の関連から
- (4) 社会科の内容の系統化を――「社会科好きの子」を育てる
- 3 小・中学校の7年間で育てる学び方や調べ方の関連・系統化
- (1) ある授業から
- (2) 新学習指導要領が目指す授業像
- (3) 学び方や調べ方の関連・系統化
- V 地域学習における小・中学校の実践
- 1 小学校における地域学習
- 2 中学校における地域学習
- 3 地域学習における小・中系統化へのポイント
- 4 身近な地域学習の事例
- 5 埼玉県の学習事例
- W 産業と国土の学習における小・中学校の実践
- 1 小学校における産業と国土の学習
- 2 中学校における産業と国土の学習
- 3 産業と国土の学習における小・中系統化へのポイント
- 4 産業の事例
- 5 国土の学習事例
- X 歴史学習における小・中学校の実践
- 1 小学校における歴史学習
- 2 中学校における歴史学習
- 3 歴史学習における小・中系統化へのポイント
- 4 人物の取り上げ方に視点をおいた事例
- 5 歴史学習における戦争にかかわる単元の事例
- Y 政治に関する学習における小・中学校の実践
- 1 小学校における政治に関する学習
- 2 中学校における政治に関する学習
- 3 政治に関する学習における小・中系統化へのポイント
- 4 身近な問題を取り上げた政治に関する学習の事例
- 5 人間の尊重と日本国憲法を扱った事例
- Z 国際理解に関する学習における小・中学校の実践
- 1 小学校における国際理解に関する学習
- 2 中学校における国際理解に関する学習
- 3 国際理解に関する学習における小・中系統化へのポイント
- 4 国際連合の活動を取り上げた事例
- [ 巻末資料
- おわりに
まえがき
我が国においては,子どもたちが社会科を小学校で4か年間学び,その後中学校に進んで3か年間学んでいる。それは義務教育であることから,すべての子どもがほぼ共通の内容を履修している。このことは,少なくとも7か年間という幅のなかで,また小学校での学習経験を踏まえた中学校での学習という観点から,社会科の指導の目標や内容はもとより,子どもたちの学習活動や教材などが,系統的,発展的に展開されなければならないことを意味している。
従来から,小学校と中学校との連携ということは,各方面で盛んに言われてきた。ところが,実際の実践レベルの取り組みを見ると,なかなか実があがっていないようである。教員の人事面をはじめ,研究組織などさまざまな面での制約もあって,十分な交流・連携が図られていないというのが実情であろう。小学校と中学校の社会科授業には,相変わらずギャップがあるというのが,わたくしの率直な認識である。このようなギャップの存在は,子どもたちだけでなく,教える教師にとっても不幸なことである。スムーズな接続・発展のもとに,子どもたちが社会科の学習に対する興味・関心を深め,社会に対する見方や考え方を徐々に培っていくようにしたい。
本書は,このような授業の実態と問題点,それに対する願いのもとに企画されたものである。
本書をまとめたのは,「北埼玉地区社会科研究会」である。本研究会は,埼玉県の北東部に位置する市町村の小・中学校や教育委員会などに勤務する先生方の自主的な研究組織である。相互に授業を参観するなど,何よりも小学校と中学校の実践レベルでの交流と連携を重視して,長年にわたって研究・実践を継続してきた。本研究会はエネルギーとフレッシュさとアイディアに満ちた組織であり,そのなかで,20歳代,30歳代の若い先生方が多数育ってきている。
本研究会では,研究・実践を進めるに当たって,まず小学校と中学校の学習内容を踏まえて,「地域」「歴史」「政治」「国際理解」などのキーワードを共通に抽出した。そして,小学校と中学校においてそれぞれの単元計画を作成して実践し,両者の望ましい連携のあり方を検討した。具体的な実践内容は,本書に紹介されている。
わたくしも,研究の過程で多少かかわらせていただいた。そして,小学校と中学校が共に交流・連携を図っていくためには,T章のなかで述べているように,次の三つのことが重要であると痛感した。
○まず,異校種の学習指導要領と教科書を読もう。
○次に,相互に授業を参観しよう。
○そして,共に授業をつくり,実践しよう。
きわめて原則的な当たり前のことである。しかし,この当然のことが十分に行われていないところに,小・中連携の難しさと大切さがある。本書は,こうした「当たり前のことへのチャレンジ」の具体的な姿である。本書が各学校において有効に活用され,小学校と中学校の社会科授業が一層充実・活性化することを願っている。
終わりに,北埼玉地区社会科研究会のメンバーの方々の精力的な研究ぶりに心からエールを送りたい。また,本書の出版の機会を与えてくださり,構成や内容に対して適切なアドバイスをいただいた明治図書出版の樋口雅子編集長に感謝とお礼を申しあげたい。
編著者 /北 俊夫
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- 明治図書