- まえがき
- 序 章
- 情報教育と国語科授業の構想
- 1 情報教育と「横断的・総合的な学習」
- 2 情報活用能力と国語科授業論
- 3 情報活用能力の育成と国語科授業の具体化
- 情報活用能力の育成と国語科授業の実践事例
- 〈小単元の主な項目〉
- 1 単元名/ 2 子供の願い・教師の願い/ 3 単元の目標/ 4 学習の構想/ 5 学習の展開/ 6 子供の声・子供の姿/ 7 まとめと今後の課題
- 事 例1
- 第2学年 同じ町内の学校との交流で,学びを進める学習/ 取材のセンス・取材の豊かさを願っての作文指導
- 事 例2
- 第2学年 昔話を絵本にしよう
- 事 例3
- 第3学年 紙芝居をつくって1・2年生に読み聞かせをしよう
- 事 例4
- 第3学年 季節の特徴的な姿を探り,ふるさとから発信/ 個性豊かな文章表現力を支える体験活動
- 事 例5
- 第4学年 家庭・地域社会との関わりを生かした国語科授業の工夫
- 事 例6
- 第4学年 主体的に情報を活用し,本に親しむ子供の育成をめざして
- 事 例7
- 第4学年 言葉辞典をつくって外国の人に教えてあげよう
- 事 例8
- 第4学年 情報を自分の言葉で話し,聞き合う情報処理活用の学習
- 事 例9
- 第5学年 自分の疑問や課題を追究し,まとめて,交流する/ 情報操作能力の育成
- 事 例10
- 第5学年 調べたことを共有し,活用する情報教育
- 事 例11
- 第5学年 いきいき地球館――環境問題について考え,友達と交流しよう/ 言語情報を活用して
まえがき
1「生きる力」の育成と国語科授業の構想と展開
21世紀の学校教育の基調は,「ゆとり」の中で「生きる力」を育成することである。
その「生きる力」とは,「自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力であり,また,自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心など,豊かな人間性」等(註1)である。また,「ゆとり」の中とは,子供たちの「生きる力」を育成するために,単に学校教育だけでなく,家庭や地域社会と連携し,子供たちが「主体的に使える時間」を確保できる「学校週5日制」の完全実施を導入することである。(註2)
とすると,21世紀の国語科授業は,次のような資質や能力を重視する国語科授業へその基調を転換する必要がある。
@ 自分の考えをもち,論理的に意見を述べる資質や能力
→例えば,話すこと・聞くことの力を育成することであり,具体的にスピーチや説明,紹介や報告,話し合いや討論ができる資質や能力を育成することである。
A 自分の考えをもち,目的や場面などに応じて適切に表現する資質や能力
→例えば,書くことの力を育成することであり,相手や目的,意図や場面に応じて手紙や文書を書いたり,記録や報告書をまとめたり自分の考えを筋道立てて文章表現できる資質や能力を育成することである。
B 目的や意図に応じて的確に読み取る能力や自分の考えを豊かにするために読書に親しむ態度
→例えば,読むことの能力を育成することであり,具体的な目的に応じて要点を読み取ったり,必要な文献資料を収集・選択・活用する能力や自分の考えをもったり深めたりできる資質や態度を育成することである。
2 21世紀の国語科授業を創造するために
「生きる力」を育成する国語科授業を創造するためには,次のような観点を重視する必要がある。
○自分で疑問や課題を見つけ,自ら主体的に学習計画を立て,身に付けた既習の学習方法や内容等を意図的・計画的に活用する。
○自分で主体的に考え,想像し,表現したり行動したりして,自分の疑問や課題をよりよく解決したり追究したりできる「場面と時間」を十分に確保する。
○その際,教師は一人一人の子供たちが自信をもって主体的な学習計画や学習活動を展開できるよう,「子供たちと対話する場面と時間」も十分に確保する。
○子供たちが自分に本当に必要な情報を収集・選択・活用できる学習・情報センターとしての学校図書館を意図的・計画的に活用する。
○その際,司書教諭等とのティームティーチングも意図的・計画的に位置付ける。
○年間や単元の指導計画,「本時の学習指導案」等では,次の観点を生かすようにする。
特に,子供たちが毎日の国語科授業で学習し獲得している国語の力(@国語への関心・意欲・態度/A表現の能力/B理解の能力/C言語についての知識・理解・技能)を共感的に理解し,「本時の学習指導案」に位置付け,意図的に生かしたり活用したりすることが必要である。
それは,子供たちの既習の学習内容や方法等を共感的に理解し,「本時の学習指導案」,「単元の学習指導計画案」,「年間の学習指導計画案」等に,意図的・計画的に位置付ける工夫をすることである。
3 本企画の主なねらい
第1巻・「環境教育と国語科授業の構想と展開」のねらい
子供たちが毎日の国語科授業で学習し獲得している国語の力を意図的に生かしたり活用したりしながら,自分の生活としての「環境」に主体的にかかわり,必要な資料を収集・選択・活用しながら,言葉で(を)自ら考え,判断し,自分の言葉で表現したり行動したりできる資質や能力へ高める必要がある。
その実現のためには,T・Tの位置付けや他教科等との関連,地域社会の素材の教材化と効率的な活用を工夫する必要がある。
第2巻・「豊かな心と読書指導・学校図書館の活用」のねらい
「生きる力」を育成するためには,自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性に培うような読書指導・学校図書館利用を位置付けた読書指導を具体化する必要がある。
特に,説明的文章教材や文学的文章教材の場合,子供たちの思いや願い,国語への関心・意欲・態度を大切にしながら,導入部,展開部,終末部等の学習指導の過程に,読書指導・学校図書館利用を位置付けた学習指導計画を工夫することである。
第3巻・「情報教育と国語科授業の構想と展開」のねらい
「生きる力」を育成する国語科授業を構想し展開するためには,あふれる情報の中から,自分に本当に必要な情報を選択し,主体的に自らの考えを築き上げていくような,作文の学習指導を一層推進する必要がある。
その推進のためには,国語科授業を拠点に他教科等の学習体験や学習方法等の関連を図りながら,学習・情報センターを活用したり,発表・交流学習等を展開したりする工夫が必要である。
(註1)中央教育審議会・第一次答申を参照。
(註2)教育課程審議会「中間まとめ」を参照。
1998年7月 /小森 茂
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- 明治図書