- まえがき
- T章 社会科(地理)授業はどう変わるのか
- ――「知識・技能」活用型授業への転換――
- §1 学習指導要領はなぜ変わるのか
- §2 社会科授業の何が変わるのか
- §3 地理的分野はどう変わるのか
- §4 地理的分野の「知識・技能」活用のコンセプトを解説する
- U章 社会科(地理)新授業メソッド
- ――「知識・技能」活用型授業の創造――
- §1 「知識・技能」活用型指導法の提案
- §2 教材開発の視点
- §3 地理的分野の特質を踏まえた展開モデル
- §4 評価の改善
- V章 地理新授業メソッド
- ――「知識・技能」活用型ファックス教材集――
- §1 世界の様々な地域の調査
- 1 世界各地の人々はどのような生活をしているの? 違いを資料から読み取ってまとめてみよう!
- 2 世界の大国アメリカってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 3 急激に経済発展している中国ってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 4 東南アジアの小さな国シンガポールってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 5 南アジアのIT新興国インドってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 6 古代文明発祥の国エジプトってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 7 地球の肺をもつ国ブラジルってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 8 世界一観光客が集まる国 フランスの特色を調べて説明してみよう!
- 9 輸出の世界チャンピオン ドイツの特色を調べて説明してみよう!
- 10 世界一領土の広い国ロシアってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- 11 カンガルーの国オーストラリアってどのような国? 特色を調べて説明してみよう!
- §2 日本の様々な地域
- 1 「大地北海道! 自然いっぱいの北海道!」このフレーズって,本当かな。確かめてみよう!
- 2 東北地方の人口を増やすためには,どうすればよいだろう。 ―人口減少は,地域社会にどのような影響があるのか―
- 3 関東地方を他地域との結びつきを中心に調べ,地域的特色を説明してみよう!
- 4 中部地方を産業中心に調べ,地域的特色を説明してみよう!
- 5 日本文化の源泉 近畿地方を訪ね,案内文を作成しよう!
- 6 地域の生活・文化はどのように変わっていくのか? ―中四国地方を例に―
- 7 九州各県の環境保全に関する憲章や条例から,地域的特色を説明してみよう!
- 8 なぜ,「歴史とみどり豊かな文化のまち」づくりなのか? 私たちの大宰府市の課題を考え,自分のまちづくりプランをまとめてみよう!
まえがき
現行学習指導要領社会科は,激しく変化する社会に対応できる児童生徒の育成を目指し,学び方や調べ方を身に付けることを重視してつくられた。そして「覚える社会科から,調べて考える社会科へ」といったキャッチフレーズで社会科の授業づくりが目指されてきた。しかし,様々な実践が展開される中で「調査,発表,話し合いは多くなっているものの,話し合いの基盤となるべき共通の知識量が少なくなっていて,深い話し合いになっていない。因果関係や背景,理由等を話し合うには,それなりの知識が必要ではないか」という先生方の声が聞こえるとともに,各種調査からも知識,概念が身に付いておらず,思考も深まらないという結果が明らかにされてきた。
こうした課題を克服する新しい学習指導要領が平成20年3月28日に告示された。この中で特に注目すべきは,知識,概念や技能の「活用」という考え方が示されたことである。これは,学校教育法第30条2項に示された「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養う」という考え方に基づいている。調べ方や学び方といった方法だけでなく,知識を使って課題を考え,判断し,その過程や結果を表現することを求めたのである。
これを受け,社会科では,まず学ぶべき知識,概念を明確にし,技能とともに習得させること。そして,それらを「活用」して「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」という学習活動(いわゆる言語活動)を充実させることを重視して改善が行われている。それは新学習指導要領の各分野の「内容の取扱い」にそれぞれ具体的に記述されている。
例えば,地理的分野では,内容(1)の「エ 世界の様々な地域の調査」について,「様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して事象を説明したりするなどの作業的な学習活動を取り入れること。また,自分の解釈を加えて論述したり,意見交換したりするなどの学習活動を充実させること」と述べられている。
また,歴史的分野では,「歴史的事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,課題を設けて追究したり,意見交換したりするなどの学習を重視して,思考力,判断力,表現力等を養う」と述べられている。
さらに公民的分野では,「習得した知識を活用して,社会的事象について考えたことを説明させたり,自分の意見をまとめさせたりすることにより,思考力,判断力,表現力等を養うこと」と述べられている。
本書では,以上のような,知識・技能を活用して行う「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」といった言語活動の効果的な方法を各執筆者が工夫を凝らしながら具体的な授業の姿を通して提案している。その際,一つの仮説に基づいた提案の仕方を行っていることに留意していただきたい。それは,「解釈,説明,論述といった活動は,『どのような意義があるか』『なぜこのようなことが起こるのか』『あなたはこの問題をどう思うか』などの『問い』(疑問形の学習テーマ)に対して回答を行う活動である」という仮説である。そのため,本書の目次を見てもらえばすぐに分かるように,具体的な教材を示したV章ではほとんどが疑問形の学習テーマの形となっている。そして,それらの「問い」に答えるために必要な知識,概念や資料を準備しているのである。
新学習指導要領の趣旨を実現する授業づくりに向けて様々な研究や準備がなされているこの時期に,本書が多くの先生方に役立つことができれば幸いである。
平成21年12月 編者 /大杉 昭英
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- 明治図書