- まえがき
- T章 社会科(歴史)授業はどう変わるのか
- ――「知識・技能」活用型授業への転換――
- §1 学習指導要領はなぜ変わるのか
- §2 社会科授業の何が変わるのか
- §3 歴史的分野はどう変わるのか
- §4 歴史的分野の「知識・技能」活用のコンセプトを解説する
- U章 社会科(歴史)新授業メソッド
- ――「知識・技能」活用型授業の創造――
- §1 「知識・技能」活用型指導法の提案
- §2 教材開発の視点
- §3 歴史的分野の特質を踏まえた展開モデル
- §4 評価の改善
- V章 歴史新授業メソッド
- ――「知識・技能」活用型ファックス教材集――
- §1 身近な地域の歴史を調べてみよう
- 1 私たちの住む地域(京都)の歴史を調べ,地域から見た古代の日本を説明してみよう!
- 2 私たちの住む地域(神奈川)の歴史を調べ,地域から見た中世の日本を説明してみよう!
- 3 私たちの住む地域(京都)の歴史を調べ,地域から見た近世の日本を説明してみよう!
- 4 私たちの住む地域(山口)の歴史を調べ,地域から見た近代の日本を説明してみよう!
- 5 私たちの住む地域(東京)の歴史を調べ,地域から見た現代の日本を説明してみよう!
- §2 古代までの日本
- 1 東アジアとの結び付きを調べ,その影響を説明してみよう!
- 2 古代の日本,時代の転換点はどこにある?
- 3 仏教の伝来は,我が国の文化にどのような影響を与えたか!
- 4 古代日本はどのような時代? 自分の考えをまとめてみよう!
- §3 中世の日本
- 1 東アジア世界の国際関係,日本とのかかわりについて調べ,説明してみよう!
- 2 武士の政治の変遷を調べ,その特色を説明してみよう!
- 3 産業の発達や都市や農村の自治を調べ,中世日本の文化の特色を説明してみよう!
- 4 中世日本はどのような時代? 自分の考えをまとめてみよう!
- §4 近世の日本
- 1 16世紀,なぜヨーロッパ人は来航したのだろうか,ヨーロッパで何があったのだろうか?
- 2 なぜ江戸時代には簡単な手配書で犯人を捕まえることができたのだろうか?
- 3 町人はどのような生活をしていたのだろうか,現代との生活と比べてみよう!
- 4 近世の日本はどのような時代? 様々な資料から考えよう!
- §5 近代の日本と世界
- 1 欧米諸国のアジア進出の背景とアジア諸国の歩んだ道について調べ,説明してみよう!
- 2 明治維新から第二次世界大戦終結までの政治的変遷を調べ,その特色を説明してみよう!
- 3 産業の発達について考えてみよう!
- 4 近代日本はどのような時代? 自分の考えをまとめてみよう!
- §6 現代の日本と世界
- 1 国民生活の変化を調べ,社会生活の特色を説明してみよう!
- 2 日本と国際社会とのかかわりの変遷を調べ,国際社会における日本の役割を説明してみよう!
- 3 これまでの学習を振り返り,日本の歴史の大きな流れを自分なりにまとめてみよう!
まえがき
現行学習指導要領社会科は,激しく変化する社会に対応できる児童生徒の育成を目指し,学び方や調べ方を身に付けることを重視してつくられた。そして「覚える社会科から,調べて考える社会科へ」といったキャッチフレーズで社会科の授業づくりが目指されてきた。しかし,様々な実践が展開される中で「調査,発表,話し合いは多くなっているものの,話し合いの基盤となるべき共通の知識量が少なくなっていて,深い話し合いになっていない。因果関係や背景,理由等を話し合うには,それなりの知識が必要ではないか」という先生方の声が聞こえるとともに,各種調査からも知識,概念が身に付いておらず,思考も深まらないという結果が明らかにされてきた。
こうした課題を克服する新しい学習指導要領が平成20年3月28日に告示された。この中で特に注目すべきは,知識,概念や技能の「活用」という考え方が示されたことである。これは,学校教育法第30条2項に示された「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養う」という考え方に基づいている。調べ方や学び方といった方法だけでなく,知識を使って課題を考え,判断し,その過程や結果を表現することを求めたのである。
これを受け,社会科では,まず学ぶべき知識,概念を明確にし,技能とともに習得させること。そして,それらを「活用」して「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」という学習活動(いわゆる言語活動)を充実させることを重視して改善が行われている。それは新学習指導要領の各分野の「内容の取扱い」にそれぞれ具体的に記述されている。
例えば,地理的分野では,内容(1)の「エ 世界の様々な地域の調査」について,「様々な資料を的確に読み取ったり,地図を有効に活用して説明したりするなど作業的な学習活動を取り入れること。また,自分の解釈を加えて論述したり,意見交換するなどの学習活動を充実させること」と述べられている。
また,歴史的分野では,「歴史的事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,課題を設けて追究したり,意見交換したりするなどの学習を重視して,思考力,判断力,表現力等を養う」と述べられている。
さらに公民的分野では,「習得した知識を活用して,社会的事象について考えたことを説明させたり,自分の意見をまとめさせたりすることにより,思考力,判断力,表現力を養うこと」と述べられている。
本書では,以上のような,知識・技能を活用して行う「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」といった言語活動の効果的な方法を各執筆者が工夫を凝らしながら具体的な授業の姿を通して提案している。その際,一つの仮説に基づいた提案の仕方を行っていることに留意していただきたい。それは,「解釈,説明,論述といった活動は,『どのような意義があるか』『なぜこのようなことが起こるのか』『あなたはこの問題をどう思うか』などの『問い』(疑問形の学習テーマ)に対して回答を行う活動である」という仮説である。そのため,本書の目次を見てもらえばすぐに分かるように,具体的な教材を示したV章ではほとんどが疑問形の学習テーマの形となっている。そして,それらの「問い」に答えるために必要な知識,概念や資料を準備しているのである。
新学習指導要領の趣旨を実現する授業づくりに向けて様々な研究や準備がなされているこの時期に,本書が多くの先生方に役立つことができれば幸いである。
平成21年12月 編者 /大杉 昭英
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- 明治図書