- はじめに
- 序章 本書のねらいと指導の誤りのタイプ
- §1 明らかな,大きな誤り
- §2 既に発表した10事例
- §3 指導の誤りのタイプ
- 第T章 タイプ1 指導する内容の意味や重点を間違えている授業
- 事例1 0のたし算,ひき算,かけ算,わり算
- 【1,3年】「輪投げで,1回目と2回目に入った数を合わせると,いくつになるでしょう」
- 事例2 1位数でわるわり算の文章題
- 【4年】「60円を3人で同じ金額ずつ分けると,1人分はいくらでしょう」
- 事例3 小数の乗除の重点
- 【5年】(授業のまとめ)
- 事例4 分数乗法の第1時のねらい
- 【6年】「1分間に 阿の水が水道から漏れていた。 分間ではどれだけの水が漏れるか」
- 事例5 図形の性質と作図
- 【5年】「平行四辺形を描きましょう」
- 事例6 円の周や面積を求めるための測定個所
- 【5年】「円周の長さの求め方を考えよう」
- 事例7 図形についての論理的説明
- 【6年】「平行四辺形の面積の求め方を見出そう。そして,その正しい訳の説明の仕方を考えよう」
- 事例8 地球に縄をまわそう
- 【6年】「地球は,赤道の半径が約6,000,000mの大きな球とみることができる。地球の表面から1m離して縄を張るとすると,綱の長さは,赤道の長さより,何m長くなるか」
- 第U章 タイプ2 既に分かっていることや考えさせることと,教えることを間違えている授業
- 事例9 ひき算の意味
- 【1年】「きんぎょが5ひきいます。ここから3びきとると,のこりは,いくつになるでしょう」
- 事例10 かけ算の最初の指導
- 【2年】「コーヒーカップに乗っている人は何人でしょう」
- 事例11 九九表とかけ算のきまり
- 【2,3年】「九九表を見て,どんなきまりがあるか,調べましょう」
- 事例12 変わり方調べ
- 【4年】「周りの長さが18cmの長方形をたくさん集めて,縦と横の長さの関係を調べましょう」
- 事例13 教具や絵の提示
- 【1〜6年】「たかおさんがどんぐりを9こ,みきさんが4こひろいました。あわせてなんこひろいましたか」
- 第V章 タイプ3 子どもの考えをとらえられなかったり無視したりしている間違った授業
- 事例14 60÷20の仕方
- 【4年】「サクランボが60個あります。1人に20個ずつ分けると何人に分けられますか」
- 事例15 広さ比べの指導
- 【4年】「この2つの紙はどちらが広いでしょう」
- 事例16 正三角形の数
- 【5,6年】「図のように,マッチ棒を並べていって,正三角形を100個作るには,マッチ棒は何本いるか」
- 第W章 タイプ4 子どもの考えを生かせなかった間違い授業
- 事例17 2位数×1位数の計算の仕方
- 【3年】「1人が折り紙を20枚ずつ使います。6人では何枚いるでしょう」
- 事例18 小数×整数の計算の仕方
- 【4年】「3.6哀入りのバケツ7つ分では,何哀ですか。この式と計算の仕方を考えよう」
- 事例19 分数の乗除計算の仕方を見つける図
- 【6年】「塀にペンキをぬります。ペンキは1dlで2/7m2の塀がぬれます。このペンキ3唖では,何m2の塀がぬれるでしょうか」
- 事例20 方眼を利用した,三角形や平行四辺形の求積
- 【5年】「下のような三角形の面積の求め方を考えよう」
- 事例21 平行四辺形の求積公式を導く
- 【5年】「下の図の平行四辺形の面積の求め方を考えよう」
- 第X章 タイプ5 授業のねらいを間違えている授業
- 事例22 1問だけでまとめること
- 【4〜6年】「平行四辺形で,向かい合った頂点を結んだ直線がどう交わるか。図で調べよう」
- 事例23 問題解決 正方形の個数
- 【5,6年】「右の図に正方形はいくつありますか」
- 事例24 かさくらべ
- 【3年】「持ってきた水筒の大きさを,グループごとに比べよう」
- 事例25 数学的な考え方を目標としてどうとらえるか
- 【1〜6年】(授業の目標)
- 数学的な考え方・態度一覧
- 数学的な考え方・態度についての発問一覧
はじめに
算数で指導する内容は,指導するものにとってはよく分かっていることであって,授業でとりあげる問題の意味も,その答えが正しいかどうかということも容易に分かることである。そして,指導も教科書どおりすればそう難しいことではない,と考えられがちな教科である。
ところが,いろいろな人の指導案や授業の中で,間違った指導に出会うことがある。指導案を書いた人や授業者は,子どもたちに興味を持たせ,より能率的な指導をしようと考えて,工夫しているのだろうが,それが実は間違っている。そのために子どもたちに間違えたことを教えたり,教えなくてはならないことを抜かしてしまったり,かえって遠回りな指導をしてしまうということが時々見られるのである。時には教科書にさえこのことが見られるのである。
そこで,どこが間違っているのか
なぜ間違っているのか
それならどう直したらよいのか
ということを,すべての指導者の方々に,明確に認識してもらうことが極めて重要だと考えた。
そこで,長年拝見してきた多数の授業や指導案の中で気づいた,誤りの事例を取り上げて,上のような考察をすることにした。
実はこのことについては,すでに,『算数科の指導内容の体系』(東洋館出版社,2001年1月)の第1章で,10個の事例を示してある。
ここではさらに25個の事例を挙げる。もちろんこれで誤りの事例すべてということではない。
本書は誤り事例の見本のようなものである。この一つひとつの事例を基に,どの学年の事例かということにはこだわらず,これと類似な,他の学年,他の場合を推測していただくことを,是非お願いしたいと思う。
このようにして,誤りを正していき,これをより正しい楽しい,能率の上がる授業になるように工夫していけば,すばらしい,望ましい授業ができるようになるのである。
2002年3月 /片桐 重男
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