- まえがき
- T 時代が変わり、授業を変える
- 一 時代とともに授業も変わる
- 1 子どもが変われば授業も変わる
- 2 学習指導要領が変われば授業も変わる
- 3 一夜にして変心?
- 二 今の授業はスマートだが迫力がない
- 1 本物のバスを使った授業
- 2 今「くさい授業」ができるか
- 三 時代が変われば取り上げるも変わる
- 1 「オンドル」で朝鮮半島の学習
- 2 時代が変われば「典型」も変わる
- 四 できなくなった「炭鉱の授業」
- 1 エネルギー政策の転換
- 2 の絵をみつける
- 3 川舟の写真を使っての授業
- 五 今、こんな授業ができるか?
- 1 今の水産業の授業はよくない?
- 2 教材をかためるまで
- 3 こんな授業が今できるか?
- 六 教師が「意識変革」をする時代
- 1 印刷機は変化したが授業は変わらず
- 2 変わりつつある中学の授業
- 3 教師の意識変革を
- 七 「視聴率の高い授業」へむけて変わりつつある?
- 1 変わり方が問題
- 2 教師の指導意識は変わりつつある?
- 八 今学校は、何を、どうすべきか?
- 1 公教育を民間教育会社へ委託
- 2 「学習塾へ委託」がおこるかも?
- 3 学校は何をするところか
- 九 授業の改革に挑戦しよう
- 1 国立病院の民営化構想
- 2 公立・国立学校独立法人化・民営化論?
- 3 授業のやり方にもっと工夫や挑戦を
- 十 生活科の新設で「学校が楽しくなった」?
- 1 今必要感の高い教材を取り上げる
- 2 生活科で学校が楽しくなった?
- 十一 今こそ真の「学級・学校」の回復を
- 1 「学級」の成立はいつごろか?
- 2 「学級」は崩壊しつつあるのではないか?
- 3 よい授業は学級づくりから
- 十二 大学の授業改革はできるのか?
- 1 東大でさえ授業改革をしている
- 2 わたしのささやかな授業改革
- 3 医者は勉強するが教師はしない?
- U プロ教師をめざす後輩たちへ
- ―教師修業は果てしなく―
- 一 「伸びたい」という意欲を持ち努力を楽しむ
- 1 「伸びたい」という意欲を持ち続ける
- 2 自分らしい学び方を創り出す
- 二 新しい目あてをつくって修業する
- 1 社会科への興味関心
- 2 本物の授業との出会い
- 3 修業につぐ修業
- 4 自分らしい授業づくり
- 三 教師が基礎的技能をみがくこと
- 1 しつけの大切さ
- 2 鍛えれば子どもは伸びる
- 3 教師の力量が問題
- 4 教師も進化しなくては!
- 四 自分を変えようと「努力と挑戦」できる教師
- 1 子どもに学べる教師
- 2 環境とチャンスを生かせる教師
- 五 真のプロ教師・五条件
- 1 プロとは何か考えよう
- 2 プロ教師の五条件
- 六 工夫しながら勉強する教師は必ず伸びる
- 1 アンテナを高く広く張っている
- 2 教材研究をよくする
- 3 毎日の授業が研究そのもの
- 七 いい授業を見て、具体的な目標を創る
- 1 心をゆさぶられる授業と出会う
- 2 目あてにする授業に出会う
- (1) 「ザ・授業」に偶然出会う
- (2) 追試不能の授業にあこがれる
- (3) 具体的な目あてを創る
- 八 教師は教える内容のプロになろう!
- 1 ホームランよりヒット主義
- 2 わたしの提案三つ
- 3 米とパンの消費量は?
- 九 校内研修の必要性を感じているか?
- 1 研究会で本当のことをいわない
- 2 研究物を作ることを目的にした研修
- 3 帳面消しの形式的研究授業
- 4 口のうまい人が「やり手」になっている
- 5 リーダーシップを取れる人がいない
- 十 「開かれた学校づくり」は地域の特色を取り上げることから
- 1 開かれた学校づくりの必要性
- 2 地域の特色を取り上げる
- 十一 学校の個性を育てる研究と活動
- ―藤枝市立高洲南小の研究を中心に―
- 1 学校の個性づくりは容易でない
- 2 個性ある学校づくりへの道
- (1) 子どもと授業で勝負する学校
- (2) 学級の目標を「求める授業像」で表現
- (3) 「聞く力」が基礎だと心得ている
- (4) ユーモアが生きている授業
- (5) 授業は布石の連続である
- 3 実践の事実で実現を
- 十二 広い視野と見通しをもつこと
- 1 みごとな学級経営
- 2 視野が狭い教師
- 3 見通しをもたない教師
- 十三 専門的特徴のある学校が生き残る
- 1 先進校とは何か?
- 2 子ども中心の学校づくり
- 3 教科・教材中心の学校づくり
- 十四 実践の事実から理論化をはかれ!
- 1 むずかしいことを書きすぎる
- 2 理論と実践は別物?
- 3 よい授業は理論の裏づけがある
- あとがき
- 有田和正主要著書一覧
まえがき
今に限らず、いつの時代でも教育界に向けられる目は厳しい。それは、社会の人々が日本の将来のために有為な人材を育ててほしいと願っているからである。教育のあり方が、国の将来にかかっているからである。この社会の要請に、今の日本の教育界は応えているといえるだろうか。ちょっと心もとない感じがしている。
学力低下、学級崩壊、マナー不足の子どもの続出。それに何よりも授業の質の低下が指摘され、教師の研修も、初任研からとうとう十年研までしなくてはならなくなった。社会はどんどん変化しているのに、教育界は旧態依然としてなかなか変わらない。
子どもたちは、面白くもおかしくもない授業に耐えかねて、小・中学生まで新聞に投稿するまでになっている。ある高校生は、「教師の質の悪化はすさまじい。もっと生徒本位の授業を考えてほしい」と、悲鳴とも思えるような投稿をしている。これは、子どもたちの「声の代表」とわたしは受け止めた。これとの関係か、大阪では学力不足と認定された教師が分限免職になった。
こうした社会的状況を「社会からの要請」と受け止め、「指導力アップ術シリーズ18巻」を、この機に出すことにした。今ほど教師の指導力が注目されている時代はないからである。
まず、「授業とは何か」ということを明らかにしながら、今求められている「真のプロ教師像」を究明してみた。それはただの指導技術ではダメである。プロ教師は、深く確かな内容と、子どもに対する深い愛情の裏づけのある人ではなくてはならない。
保護者たちは、担任教師の実力を、いろいろな面から常に観察している。昔ながらの授業をしていたのでは、たちまち「指導力不足」のレッテルをはられる時代である。こうならないよう、教師は常に研修にはげまなくてはならない。そのお手伝いを本シリーズでしてみたいと考えたのである。
授業を面白くし、子どもに実力をつけるには、教材の把握はもちろんであるが、学級の質が大きくものをいう。学級づくり、それも楽しい学級づくりをしながら、子どもが「はてな?」を発見し、それを追究することに熱中し、ひいては「追究の鬼」といわれる子どもを育てたいのである。
長年の経験を生かして、学級づくり、授業づくり、授業がうまくなるレシピを書いた。教材開発のしかた、子どもに調べる力のつけ方なども明らかにした。平成一四年度から総合的学習が本格的に実施に移された。これについても今までいろんな提案をしてきたが、今回のシリーズの中でも、「こうすれば必ずうまくいく」という内容と方法を明らかにし、それを提案している。やり方によっては、総合は実に面白い。力もつく。
今の教師たちに足りないのは、実力だけではなくユーモアも足りない。ゆとりがない。もちろん、保護者にも足りない。このギスギスした社会をユーモアで乗り切ってほしいと願い、この面の提案もした。
要するに、本シリーズは、授業論、学級経営論、教材開発論、総合的学習論、指導技術論、そして、ユーモア教育論等々、現時点での私の総力をあげて総合的に取り組んだものを提案したものである。一読されて御指導いただければ幸いである。
二〇〇三年六月吉日 /有田 和正
-
- 明治図書