子ども文化ネットワーク2
今すぐ始めよう,子ども文化を取り入れた教育開発

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『真の学力』を自力で獲得できる授業を創造する

児童文化手法を駆使して子ども文化の新しい展開を図る。インタビュー、劇的表現、パネルシアター、演劇表現、リズムなわとび、言葉あそび、ロールプレイング、腹話術など。


復刊時予価: 2,387円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-513011-2
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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巻頭言 二十一世紀の教育を拓く子ども文化研究の課題 /瀬川 榮志
まえがき 子ども文化の創造 /飯口 進
第T章 子ども文化の機能を生かした教育の創造
★子ども文化で子どもが変わる
一 子どもの創造性の育成 /恩田 彰
二 群読で、子どもの心を輝かそう! /曽我 正雄
三 「子どもの遊び」の変遷と未来像を文化史に探る /野口 久雄
第U章 子ども文化で学校が変わる
★子ども文化の実践で幼稚園・保育園が変わる
一 教師の思いを伝える手作り教材 /野島 康子
二 幼児の適切なとらえ方あっての文化論 /市川 賢一
三 子どもの文化を育てる三つの心がけ /小寺 義人
★子ども文化の実践で園児が変わる
四 パネルシアター「すきですかきらいですか」で園児が変わる /阿部 恵
五 身近な自然とのかかわりから /荒井 初子
六 わらべうた遊びで子どもが変わる /一方井 律子
七 子どもたちは「人形」が大好き! 「腹話術」が大好き! /丹羽 静代
八 手あそび、歌あそびで子どもの集中力を養う /平良 和歌子
★子ども文化の実践で小学校が変わる
九 児童文化手法とその実践 /山下 徹
十 子ども文化と二つの実践 /柴田 正幸
十一 学校経営と子ども文化「人形を活用した教育活動」 /谷 信正
★子ども文化の実践で児童が変わる
十二 インタビューで〈社会・歴史〉の授業を変える /市川 弘美
十三 劇的な表現で〈総合的な学習〉の授業を変える /松宮 文子
十四 パネルシアターで〈算数〉の授業を変える /田中 正代
十五 演劇表現で〈総合的な学習〉の授業を変える /村田 隆
十六 リズムなわとびで〈体育〉の授業を変える /高野 義邦
十七 言葉あそびで〈国語〉の授業を変える /染井 美智代
十八 三分間子ども劇場で〈特別活動〉の授業を変える /浅利 順子
十九 ロールプレイングで〈自立活動〉の授業を変える /黒須 真希
二十 腹話術で〈道徳〉の学習を変える /飯口 進
第V章 子ども文化を必要とする家庭や地域
★子ども文化の実践で家庭・地域が変わる
一 手作り遊び道具づくりの実践で地域と親子の心のふれあい /石川 直樹
二 手品の実践で地域に広がる共感の輪 /小澤 徹
三 折紙の実践で折紙の楽しみを知った子どもたち /中島 進
四 語りの実践で瞳を輝かし、集中する子どもたち /風間 操
五 パネルシアターの実践で地域の子育て仲間づくりのお手伝いができ、子どもの集中力が養える /関 稚子
六 和太鼓の実践で地域活動を健全育成 /清藤 公清
七 オペレッタの実践で子どもの感情を育む /永山 友美子
八 演劇的ワークショップの実践で表現する楽しさを味わい、積極的に劇作りに取り組む子どもたち /福島 康
九 腹話術の実践で子育て中の母親の心にせまる /ひぐらしスーサン
十 レクリエーションの実践でコミュニケーションと仲間作り /菅野 清子
十一 劇ごっこの実践で子どもを生かす /大森 靖枝
十二 素話の成せる、深く大きな仕事 /大竹 麗子
あとがき 新しい時代に生きる確かな子ども文化を取り入れた教育開発 /帆足 文宏
日本子ども文化学会のご案内

巻頭言

 二十一世紀の教育を拓く子ども文化研究の課題
 ――「生きて働く『真の学力』向上」に必要な子ども文化教育の体系化と指導法の組織化――
   日本子ども文化学会名誉会長 /瀬川 榮志


 解決を迫られているわが国の重要課題は「世界の中の日本人として国際社会に伍していく国民の育成」である。人間が人間としてどう生きるか、どのような日本人像を求めていけばよいか、などを、哲学的に思索することが必要である。また、日本人として、高い理念に基づく強固な信念や普遍性と独創性を調和統一した思想で一貫し、堅持することも大切である。加えて、自国の伝統文化を継承しつつ新しい文化を創造していくことも軽視してはならない。教育課程審議会の答申の第二部の八に「教育を育む哲学・思想・文化の創造」が提示されている。その内容にも、わが国最高の叡智を集めて学校教育を支えている、「哲学・思想・文化」を徹底的に議論して長期的な教育の基礎に据えること――」という文言がある。

 以上のような、基本的理念を押さえた教育活動が各学校で展開されているだろうか――とういう視点で、学校経営や学級経営について、すべての国民は、「深い思索による施策が徹底・浸透」しているかどうかを厳しく点検する必要がある。特に日々の授業においては、教師の哲学的思索と確固たる信念、透徹一貫した思想と豊かな文化的教養がないと、授業内容が感動のやま場もなく、軽薄となるのではないだろうか。


一 価値ある文化を獲得する「子ども文化教育」の体系化

 二十一世紀の教育を「子ども文化研究」を通して充実発展させたいという願いを抱き続けている実践研究者は、哲学する精神と確かな思想を追究する意欲をもち、香り高い日本文化の研究に積極的に取り組みたいものである。このように考えていくと、子どもたちに文化を教え育てる立場にある側の資質・能力や支援・指導力が重視されなければならない。子ども文化研究の原点は、一人一人の個性や可能性を最大限に引き出すことである。知性や感性を磨き、思考力や想像力を鍛え、躍動する心と内発力を昂揚することが大切である。この活動源を原点・起点として、はじめて、文化獲得の方法を駆使する実践行動力が活性化する。

 教育の究極のねらいは、文化の獲得であると言っても過言ではない。文化の獲得の方法は、(1)価値ある文化を獲得する目的・方法を決める。(2)課題解決・追究のための価値ある行動を展開する。(3)内容的に価値ある文化を生産する。――学習過程を段階的に踏むことになる。この課題解決力は、新学力観に立つ「真学力」でもある。

 子どもが獲得すべき価値ある文化は多種多様である。手紙文化・朗読文化・言語文化・読書文化・食文化・茶道華道・書道・剣道・柔道・弓道などの文化、遊びの文化――等々、これらには、子どもの学力向上や日本人として生きる力の源泉となるものがある。これらを分析し細分化して、各学年の「文化獲得行動力」の発達段階に即して螺旋的系統表を作成することが必要である。

 加えて、前記の(1)→(2)→(3)〜の学習過程に合わせて、ペープサート・ゲーム・エプロンシアター・パネルシアター・ダンス・腹話術・指人形・演劇表現・人形劇・素話――などの児童文化手法を織り込み駆使し、「いきいきと行動を展開する過程で価値ある文化を獲得する」よい授業を創造したいものである。

 このように、〇質的に高く価値ある文化とは何かを吟味し、螺旋的に系統化する。〇系統表に基づき「課題解決力」を発揮して文化を獲得する。〇児童文化手法を指導過程に導入して学習を活性化する。――等の手順で「子ども文化教育」の秩序化・体系化を図ることが重要である。


二 学力向上を促進する子ども文化の授業の組織化

 「生きる力」に連動する「生きて働く真の学力」を、子どもの心を揺さぶり、魂が躍動する魅力あふれる児童文化手法で定着しなければならない。そのためには、学習過程を中軸に、学習形態と指導技術や秘策を相互に関連させ有機的に組み立てることが前提である。つまり、だらだら授業にならないように指導法を立体的に組織化するのである。指導技術や秘策には、教師の発問や板書技術等に加えて児童文化手法を駆使するのである。

 次に、言語文化を獲得する基礎的技能(言語に関する技能・知識・理解)「語彙の拡充」<国語科>の授業を紹介する。(平成十四年九月、東京都小学校児童文化研究発表大会<赤堤小>授業者、半田幸子、浅利順子)

★単元「おとであそぼう」一年(三時間扱いの第二次)<児童文化手法――ゲーム・音読・動作化>

 ◆課題解決学習の特徴(学習者が、知的理解だけでなく行動を通して自己変革し、できる自信をもつ過程)

T わかる過程→耳をすませて音を集めよう(学習目的)音あつめのやり方を発表する(学習方法)

 *教師が、ペットボトル(砂等を入れて色紙でくるんでいる)を振って「何が入っているか。どんな音か」表情・身振り・言語表現等、楽しくおもしろく秘策を駆使して子どもの好奇心・興味・関心を昂揚する。

U かわる過程→六つのグループに分かれて、音あてゲームをする。(ホップ→ステップ→ジャンプ〜の過程)

 一 ホップ→おはじき・水・砂を入れて「ゆっくり」振る。聞こえた音をカードに書いて発表する。

 *おはじき→じゃらんじゃらん・がしゃがしゃ・じゃらじゃら・しゃりしゃり・じゃんじゃん――等々多数

 水→ざあーざあー・しゅうしゅう・ぽこぽこ・ぽちゃぽちゃ・からから・ごろごろ――等々、次々に挙手

 砂→しゃらしゃら・かちゃかちゃ・じゃあじゃあ・ぱちゃぱちゃ・ちゃかちゃか――等々、交流行動活発

 二 ステップ→おはじき・水・砂を入れて「はやく」振る。伝え合い活動が充実し、学習法が向上的変容。

 *おはじき→ばばばん・ばきばきざー 水→ごーごー・ざざざざ 砂→きちきち・ぷちゅぷちゅ――と語彙拡大

 (この過程では、レベル一、レベルニ、レベル三……とスモールステップによる段階的学手法で語彙を獲得)

 三 ジャンプ→黒板に、おはじき・水・砂に分けて各グループごとに貼付し、適否感覚練磨、語彙を精選。

 *聴覚を働かせ、語感を磨き、適切な言葉を選んで語彙を最大限に広げていく。しかも一、ニの力を波及

 (箱・缶・紙袋などいろいろな容器に、ビー玉・ボタンを入れて、振ったり叩いたりして音と言葉を結合)

V できる過程→わかる、かわる過程で獲得した技能を、できる過程の学習に生きて働く力として波及・応用

 * 段階的学習で身につけた語感・語彙力を活かして「詩」音読集(光文書院)を音読する(達成感満喫)

 (詩「おと」 ぽちゃん ぽちょん ちゅぴ じゃぶ ざぶん ばしゃ ぴち ちょん ざざ だぶ ぱしゅ ぽしょ たぷん ぷく ぽつ どぼん……<工藤直子作>)

 ホップ→ステップ→ジャンプの過程で生きて働く語彙力を習得し、わかる→かわる→できる過程で確実に基礎的技能を獲得する。さらにその力が基本的能力に波及し、情報発信力に応用される。国語科教育の体系化に基づく組織化された指導法で身につけた「生きる力」に連動する「生きて働く国語力」は総合的学習や他教科はもちろん、日常生活や社会生活にも生きて働き、充実した人生となる。

 学力向上を目指す新課題は、以上述べたように「子ども文化教育の体系化」と「指導法の組織化」を解明して、『真の学力』を自力で獲得できる授業を創造することである。

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