- まえがき
- 一 「一つの花」を意味づける
- 1 人間の真実・戦争の本質にせまる読みを
- 2 教授=学習過程
- 文芸研の教授=学習過程/授業の構想
- 二 「一つの花」の授業の実際(四年)
- 1 《たしかめよみ》(一場面)
- 題名や一場面で仕掛を意味づける/ @題名の中の仕掛/ A一場面冒頭の仕掛/ 作品の特質をふまえ、目撃者体験をする
- 2 《たしかめよみ》(二場面)
- お父さん・お母さんの言動を比較して意味づける
- 3 《たしかめよみ》(三場面)
- お母さんの言動を類比し意味づける/ 文芸の美をとらえ、深く意味づける比喩表現を意味づける/ @〈コスモスの花〉を比喩として意味づける/ A〈一つだけのお花〉を比喩・象徴として意味づける
- 4 《まとめよみ》(四場面)
- 人間の真実について意味づける/ @十年後のゆみ子を二重のイメージで読み取る/ Aコスモスの花を二重のイメージで読み取る/ B〈ミシンの音〉を意味づける/ Cゆみ子の人物像を戦争中と戦後で対比する/ 人間の真実(性と相)について考えさせる/ 題名「一つの花」を象徴としてとらえる/ @象徴とは何か/ A題名「一つの花」は何の象徴か/ B「一つの花」のかわりにどのような題名がつけられるか/ 親の愛を典型化する
- 5 《まとめ》
- おわりの感想/ 授業についての子どもたちの感想
- 三 「一つの花」の授業を終えて
- 1 〈つづけよみ〉で意味づけを深める
- 「むらさき花だいこん」〈よみきかせ〉の後の感想
- 2 国語科を軸とした関連系統指導をどのようにしたか
- 3 授業のまとめ
- 四 「一つの花」の授業をめぐって(西郷先生に聞く)
- 1 文芸を深く読むということ
- 人物をどうとらえるか/ 教材分析の大事な観点/ 文体効果をおさえる/ プラットホームの場面の意味づけ/ 登場人物の言動の真実をとらえる
- 2 作品を意味づけて
- 「一つの花」の構造/ 戦争でも奪えなかったものは何か/ ゆみ子の人物像/ 違う題名を考える意味/ 〈典型をめざす読み〉とは/ 〈つづけよみ〉の方法とねらい
まえがき
最近の教育現場は、多くの教師たちが実感しているとおり、昏迷する文教政策によって、戦後、最低最悪の状態にあります。このままでは、子どもたちの花咲く可能性も芽生えのうちに枯渇せざるを得ない危機にあります。
この現状を打開する唯一の道は、子どもたちに「真の学力」を育てる教育を確立する以外にありません。
私ども文芸教育研究協議会(文芸研)は、創設以来、半世紀にわたる歴史のなかで、子どもたちを〈自己と自己をとりまく世界を変革する主体〉に育てあげるために〈のぞましい人間観・世界観の育成〉をめざして、ひたすら研究と実践を地道につみかさねてきました。
〈ものの見方・考え方〉(認識方法)の関連・系統指導の原理に立って、文芸の授業、作文の指導、読書の指導においては、西郷文芸学の理論と方法をふまえ、また、説明文の指導においては、説得の論法をふまえて、〈ゆたかな、ふかい認識・表現の力〉を育ててきました。
本シリーズ『文芸研の授業』は、私ども文芸研の過去半世紀の歴史の到達点を示す企画といえましょう。本シリーズの各巻とも、これまでの文芸研の全国大会に提出されたレポートを中心にまとめたもので、会内外のきびしい批判検討を経たのものであります。
全国大会のレポートは、すべて、各サークルの月例研究会において討議をかさねたものを、年に二回の全国規模の二日間にわたる合宿研究会に提出し、厳正、綿密な検討を受けたものを大会分科会に提出します。勿論、分科会においては全国各地より参集された教師のみなさんによって、あらゆる角度から批判と助言を受けます。これらの成果をふまえ次の年度のレポートはさらに一層の研鑽をかさね、かくして一つの教材が多くの仲間たちによってすくなくとも十数年の長期の批判・検討を経たものになります。
本シリーズの各巻の執筆を担当した者は、以上の成果を充分に踏まえて、まとめております。したがって、本シリーズのすべての巻きは、執筆者一個人の業績というよりも集団的な所産というべきものであります。
たとえ、すぐれたベテラン教師の教材研究・授業実践といえども個人の力量には限界があります。私どもは、仲間・集団の具体的な力の結集の上に一個人の限界をこえる成果を生み出すことをめざしています。
その意味において、本巻を手にとられた読者諸氏にもぜひきびしい、かつあたたかいご批判とご助言をお寄せいただきたいと願っております。
本シリーズは、文芸、説明文、作文、読書の領域はもちろん総合学習やその他の領域にもわたる実践がまとめられ刊行の予定です。
なお、本シリーズのどの巻も、概念・用語はすべて統一されております。一つの基本的な思想・主張・理論に基づいた実践である以上当然のことでありますが、読者にとっては、どの巻から読みすすめられても、概念・用語などの不統一でとまどわれることはあり得ないと信じます。すべての巻が相互にひびき合い、それぞれの成果を相乗的にせりあげるものになるはずです。
巻末には、執筆者とサークル員、監修の西郷との対談あるいは座談会の形式でいくつかの問題点をひきだし、解説を加えることにしました。参考になれば幸いです。
本シリーズでも、これまでと同様、企画から刊行にいたるまで、編集担当の庄司進氏の献身的な協力をいただきました。紙面を借りて厚くお礼を申し上げます。
二〇〇三年七月 文芸教育研究協議会会長 /西郷 竹彦
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