- はじめに
- T 不登校についての基本的なとらえ方・考え方
- 1 不登校はどのようにして起きるのか
- 1 不登校問題解消の主人公としての教師
- 2 不登校──「学校が嫌」だから起きる問題
- 3 不登校の原因を知る意義
- 4 不登校になる子どもは,学校のどこが嫌なのか
- 5 内省力がない教師たち
- 2 早期発見・早期対応の重要性
- 1 一次予防と二次予防
- (1) 不登校問題の一次予防
- (2) 不登校問題の二次予防
- 2 二次予防から始める
- 3 早期発見・早期対応の実際
- 1 欠席に敏感に動く
- 2 ストレス反応への気づきと対応
- (1) ストレス反応に気づく
- (2) 身体症状
- (3) 不安・緊張
- (4) 攻撃・怒り
- (5) 無気力・憂鬱──褒める機会をつくる
- 3 ストレスの元にはたらきかけ,味方を増やす
- (1) ストレスの元にはたらきかける
- (2) 子どもに「味方」と思ってもらえる教師になる
- (3) すべての子どもをえこひいきする
- (4) 子どもを支える人を増やす
- U 熊谷市での不登校半減への取り組み
- 1 取り組みに至る経緯,実際の取り組みについての概要
- 1 不登校半減計画とは
- (1) 埼玉県熊谷市について
- (2) なぜ,半減なのか
- (3) なぜ,3年間なのか
- 2 不登校半減計画の始まり
- (1) 熊谷市との出会い
- (2) 熊谷市不登校半減計画のスタート
- (3) 筆者の本格的な熊谷市支援の開始
- 2 熊谷市での不登校対策
- 1 対応策の概要
- 2 月3日以上の欠席の把握
- 3 個別支援票によるカルテ管理と紙上コンサルテーション
- (1) 個別支援票(個票)によるカルテ管理
- (2) 個別支援票(個票)に隠された本当の目的
- 4 個票の所見による紙上コンサルテーションの実際
- (1) 病欠の場合
- (2) 緊張や不安が見られる場合
- (3) 非行・怠けがある場合
- (4) 不登校が長期化している場合
- (5) 病院やクリニックなどの専門機関がかかわっている場合
- 5 熊谷市半減計画の2年目までの成果
- (1) 1年目「月3日以上の欠席管理」の効果
- (2) 2年目「個票による紙上コンサルテーション」の成果
- 3 熊谷市での不登校予防と半減計画の終結に向けて
- 1 不登校問題予防のための2つの予防策
- 2 小中連携申し送り個票の活用と個を見ること
- 3 不登校半減計画の終了に向けて
- 4 「行きたくなる学校」をめざして
- V A町での不登校減少プロジェクト
- ―発生率ワーストワンから不登校ゼロへの軌跡―
- 1 不登校減少プロジェクト開始の経緯と趣旨
- 1 プロジェクト開始の背景
- 2 不登校減少プロジェクトの取り組みについて
- 1 不登校減少プロジェクトの目的
- 2 不登校減少プロジェクトの方法
- (1) プロジェクトチーム
- (2) 方法
- 3 不登校減少プロジェクトの特徴
- 3 プロジェクトの途中結果とそれまでの経過
- 1 不登校プロジェクトの途中経過結果
- 2 不登校減少プロジェクトの経過
- (1) 第T期:再登校支援準備期
- (2) 第U期:教室登校および登校維持成功モデル学習期
- (3) 第V期:A町流教室登校および登校維持支援構築期
- (4) 第W期:教師によるA町流不登校対策実施期
- 3 学校復帰支援の実際
- (1) 手続きの実際
- (2) 校内研修会の実際
- (3) 初めての再登校支援成功事例
- 4 なぜ,A町は1年足らずで不登校ゼロとなったか
- 1 不登校多発原因について
- 2 不登校多発問題解決をめぐって
- (1) A町の不登校問題解決のためのパターン
- (2) 不登校問題解消のための教師の役割
- (3) 教育委員会,校長,教頭の役割
- (4) 真のプロジェクトの開始
- (5) 再登校支援成功教師からのネットワークの形成
- (6) 子どもの視点からの教師たちの主体的な対策提案
- (7) 子どもと教師が共に育っての好相互作用
- W 不登校問題解決に向けて
- 1 不登校対策の町レベルの体制について ―ワンユニット方式の提案―
- 1 教育委員会の役割
- (1) 再登校支援・再発防止に関する体制をめぐって
- (2) 不登校発生予防に関する体制をめぐって
- 2 不登校対策における学校体制について
- 1 学校長・教頭の役割
- (1) プロジェクト1年目のH校長先生の不登校対策
- (2) プロジェクト2代目のY校長先生の不登校対策
- (3) 教頭先生の役割
- 2 学校管理職の役割
- 3 教師の役割
- (1) 予防
- (2) 再登校支援
- (3) 再発防止
- 4 養護教諭の役割
- (1) 予防
- (2) 再登校支援
- (3) 再発防止
- 5 適応指導教室指導員の役割
- 6 教師の努力を実りあるものとするために
- 参考文献
- あとがき
はじめに
書名のとおり,本書は,教師のための「不登校」サポートマニュアルです。学校の先生が,不登校問題を解決していくための方法や手筋を示すのが目的です。この問題は,熱意があれば解決するものではありません。熱意も必要ですが,確かな方法論と手筋がない熱意は,問題をこじらせます。
マニュアルと聞くと,味気なく感じる人もいるでしょう。ですが,本書は単なるマニュアルではありません。これは,最新の心理学の科学的な理論に基づいています。その方法論と手筋を,実践を通して示したものなのです。本書では,不登校問題が減少した実例を具体的に示します。一つは,市の単位で,不登校の児童・生徒の半減をめざした実践です。もう一つは,町の単位で,不登校をゼロにした実践です。
これらの実践の主人公は,数多くの教師たちでした。教師たちが力を合わせれば,不登校は確実に減ります。教師は,教育の専門家です。教師ほど,数多くの子どもと長い時間一緒にいて,向き合っている専門家はいません。その専門家のプロ意識と力を信頼し,教師の実践を,心理学の専門家がバックアップしたのです。
「なぜ,そのような実践ができたのか」という本質を,見誤ることなく,虚心坦懐にご覧ください。それぞれの実践報告の背景には,実践を通して,「子どもの教育を受ける権利を守りたい」との願いがあります。願いを実現する人々がいます。それを感じてほしいのです。確かな方法論が,確実な成果につながっていく道筋を理解していただければと思います。教師や学校が,その願いを実現するために,どのように構え,何をしていくべきなのかを問題意識としてもってください。そして,高い教育理想を抱き,子どもたちのために,確かな方法で教育実践に生かしていただきたいと願ってやまないのです。
2005年1月 /小林 正幸
本書は、二人の大学の研究者(プロ)が地道な実践研究をもとに、問題解決の道筋を明快に提案している。そして、これほど義務教育の問題解決に熱意をもって取り組まれた著者に、頭が下がる。
不登校は、発生後の対応が如何に厄介かを考えると、「問題解決の要諦は予防にある」こと、また、何よりも日々子供たちと向き合っている教師自身が、子供たちに対する「目配り・気配り・心配り」に心することの大切さを改めて痛感する。
学級担任や管理職など全学校関係者、行政関係者、保護者それぞれが不登校問題解決に具体的&有効な示唆を得ることが出来る。
難しい問題を分かり易く説く「プロの一冊」は、若い教師にも必読書。