- プロローグ
- 第1章 学力向上プラン
- 第1節 学力を高める
- 1 考える力の育成
- 2 計算力の向上
- 3 算数的活動の充実
- 第2節 学力を拡げる
- 1 問題解決
- 2 数学的なコミュニケーション
- 第3節 学力を伸ばす
- 1 発展的な学習
- 2 算数科総合学習
- 第2章 算数科授業改善モデル
- 第1節 ふえるといくつ
- <計算力の向上> ―第1学年「10までのたし算」―
- 1 本授業のエッセンス
- 2 教材の検討
- (1) 教材観 / (2) 指導上の留意点
- 3 学力向上に向けて
- 4 授業の実際
- (1) 指導計画 /(2) 本時のねらい /(3) 授業の実際 /(4) 授業の考察
- (以下,各節の項目だては,同様の構成)
- 第2節 かけ算をつくる
- <考える力の育成> ―第2学年「かけ算」―
- 第3節 四角形を2つに分ける
- <算数的活動の充実> ―第2学年「三角形・四角形」―
- 第4節 23×12
- <数学的なコミュニケーション> ―第3学年「2位数×2位数」―
- 第5節 正方形の数
- <考える力の育成> ―第4学年「伴って変わる量」―
- 第6節 64÷21
- <問題解決> ―第4学年「わり算の筆算」―
- 第7節 台形の面積
- <発展的な学習> ―第5学年「図形の面積」―
- 第8節 六角形の内角の和
- <数学的なコミュニケーション> ―第5学年「内角の和」―
- 第9節 円柱を作ろう
- <数学的なコミュニケーション> ―第6学年「立体」―
- 第10節 東大寺を考えよう
- <算数科総合学習> ―第6学年―
- エピローグ
プロローグ
広島大学附属小学校では,2年ごとに研究部長の改選が行われてきた。私は2003年4月に,研究部長に選ばれた。そのとき掲げた研究テーマが「学力保障を目指した教育課程の編成」である。
当時としては,「学力低下」が叫ばれてはいたが,「学力保障」を前面に打ち出した研究テーマが余り見られない時期であった。
2年間の研究方針を提案するのが通例なのだが,そのとき,今後4年間の2つの研究方針を示した。
その1つ目が,次期教育課程の改訂に向けた,本校の研究の取り組みのまとめとして,2007年2月に「学力保障を目指した教育課程の編成」というテーマで教育課程を編集,刊行することである。
2つ目が,全教科から,「学力に関わって」自分たちが普段から考えていること,研究会等で実践してきたことをまとめることを提案した。
1つ目については,学校全体として取り組み,今も着々と準備が進められており,2007年2月に向けて,校内研修会及び授業研究会が進められている。
2つ目については,各教科を代表して,1人ずつが今まで考えてきたことを広く公開していこうということが決まった。
このような経緯で,出版が計画されて以後は,実際に今まで,各教科で学力の質的向上に向けて,どのような取り組みをしてきたのか,問い直すことから始まった。私自身も,今まで子どもの学力を向上させようとして算数科授業を行ってきたものの,全体像を意識していたのではなく,目の前の子どもに学力をつけたいと思うことだけだったようである。
しかし,公開研究会や校内研究会などの場では,テーマを持って算数科授業を行ってきた。今回の出版に際して,これまでの算数科授業を行うに当たって,考えてきたテーマを整理してみると,「数学的な考え方」「学ぶ力の育成」「算数的活動」「計算力向上」「問題解決」「数学的なコミュニケーション能力の育成」「発展的な学習」「算数科総合学習」が浮かび上がってくる。そこで,これらの授業テーマを学力の質的向上という観点から見直してみることにした。
そして,それ以前に学力をどう向上させようと説明してきたのか,振り返ってみた。まず,すべての子どもに最低基準とされる学習指導要領に示された内容と数学的な考え方を習得させたいと思う。このことが「学力を高める」として,「算数的活動」「学ぶ力の育成」「計算力向上」をテーマとした授業が位置づけられると考えた。
また,獲得した学力を同心円状に拡げる必要がある。そのために「学力を拡げる」として,「問題解決」や「数学的なコミュニケーション」をテーマとした授業を位置づけた。
さらに,学習指導要領をベースとして拡げられた学力を一層伸ばすと同時に,算数教育のみだけでなく,それ以外の世界にも拡張していくことが重要と考え,「学力を伸ばす」として,「発展的な学習」「算数科総合学習」をテーマとした授業を位置づけた。
しかし,それぞれのテーマは,その3つの「学力を高める」「学力を拡げる」「学力を伸ばす」場だけで,独立して行われるのではなく,それぞれの場で複合して授業が展開されていたものである。
学力の質的向上をテーマに,この3つの場を意識して算数科授業を展開していくことが重要であると確信して,今まで考えてきたことや研究会等で実践してきた授業を整理して,本書を刊行することにした。
2005年11月 /赤井 利行
-
- 明治図書