- はじめに
- 一 追試自由自在! 教材研究ノートを完成させる原則十箇条
- 原則1 情報を集める
- 原則2 情報を寝かせる
- 原則3 情報を取捨選択する
- 原則4 情報を結びつける
- 原則5 授業の核「問題提起」を明確にする
- 原則6 授業を組み立てる
- 原則7 第一次授業案の作成
- 原則8 実践にかける
- 原則9 第二次授業案の作成
- 原則10 授業サイトを作る
- 二 観客を唸らせた授業「正岡子規」ノートはどのようにしてできたか
- 1 単純作業をしながら見えてくるもの
- 2 文字情報、写真情報を組み合わせる
- 3 ほんのわずかなつながりをたどる
- 4 授業で扱う俳句を選ぶ
- 5 授業案作成は楽しくやろう
- 6 観客を唸らせたもう一つの授業
- 7 体が震えたWEBサイト作り
- 8 「正岡子規」ノート ―― TOSS長崎の真摯な学び
- 三 トリオ研究で明らかになった二冊の研究ノート「小景異情その二」
- 1 先行実践を疑う
- 2 発問一〇〇作りとすべての言葉の意味調べ
- 3 トリオ研究の始まり
- 4 不可解な言葉から広がる思考
- 5 ある日突然! 新発見 ―― 松藤理論の完成
- 6 松藤理論をWEBで表現する
- 7 学習指導案と子ども向け教材
- 四 新事実を明らかにした「聖徳太子」研究
- 1 十七条憲法の矛盾の発見
- 2 新発見にどのように説得力を持たせるか
- 五 シンプルな授業
- ――「は」と「が」の授業
- 六 会場が涙した「夭折の俳人・住宅顕信」の授業
はじめに
研究授業をする時は一冊のノートを用意すること。
TOSS代表向山洋一氏から学んだ方法である。
一冊のノートを用意し、そのノートが全部埋まるぐらい教材研究をすること。
これがいかに大変なことか、やった教師でないとわからない。
徹底的に教材研究をするとはどういうことか。
それは関連する文献を一〇冊以上読破するということ、時には自分の背丈ぐらいの冊数に目を通すということである。
それは今まで実践された先行研究をすべて調べるということ。
それは原点に戻って研究するということ。
原点とは学習指導要領であったり、教材の原文であったり、向山氏の実践であったりする。
学習指導要領でも現行のものだけでなく、過去のものすべてにあたるということを意味している。
なぜこれほど大変な作業を何日もかけてやるのか。
それは「研究」だからである。
向山氏は言う。
研究とは、それまでの成果に対して、何らかの新しい価値を付与することである。
(教え方のプロ・向山洋一全集二〇「『授業研究』で教える力を伸ばす」明治図書)
一冊のノートを埋め尽くさないと価値ある新しいものが見えてこないのである。
新しいものが見えてこそ「問題提起のある授業」を作ることができるのである。
私は一五〇回を越える研究授業を行ってきた。先生方の前で行う模擬授業を合わせると二〇〇回は越えている。
これだけたくさんの授業を行ってきた私でも、一冊のノートを埋め尽くしたのはわずか数回である。
学校での研究授業の折りには、教材研究で調べたことや、子どもたちの実態調査、研究授業までの授業記録などを「研究通信」として公開していた。しかし、それもほんの二、三回の経験しかない。
それほど大変な作業なのだが、一冊のノートを完成させた時、自分が変わったことに気付く。視野がサーと開けていくような爽快感を持つ。
本書は主に教師向けの模擬授業をする折りに調べた数冊のノートにもとづいて書いた。
先生方の前で行った授業はいずれも好評であった。その一つ「正岡子規」の研究ノートはTOSS長崎(代表 伴一孝氏)の先生方が冊子としてまとめてくれている。TOSSのセミナーで手に入れることができる。
本書ではその冊子に書かれていないこともかなり加えた。
ぜひ多くの先生方に一冊のノートを埋め尽くす研究に挑戦していただきたい。
最後になったが、執筆の機会を与えていただいた明治図書江部満編集長に感謝の意を表したい。
二〇〇四年一一月吉日 /松藤 司
-
- 明治図書