- まえがき
- 1章 数学科における複合型ティーム・ティーチング
- 〜複合型授業実践になぜ注目するか〜
- 1 数学学習の理解とティーム・ティーチング
- 2 ティーム・ティーチングにおける複合型授業実践の形態
- 3 数学科におけるこれまでのティーム・ティーチングの成果
- 4 これからのティーム・ティーチングの課題と期待
- 2章 ティーム・ティーチングによる複合型授業実践
- §1 1年・ティーム・ティーチングの授業事例
- 1 コース別学習と習熟度別学習を組み合わせたティーム・ティーチング〜文字の式
- 2 コンピュータを活用した習熟度別学習をティーム・ティーチングで〜量の変化と比例
- 3 コース別学習を学級の枠をはずしたティーム・ティーチングで〜平面図形『条件を満たす点の集まりと作図』
- §2 2年・ティーム・ティーチングの授業事例
- 1 コース別学習と達成度学習を学級再編成〜コンピュータ活用・ティーム・ティーチングの組み合わせで
- 2 一斉授業の中でティーム・ティーチングを〜三角形・四角形
- 3 生徒の自己分析に基づく課題選択学習をティーム・ティーチングで〜一次関数
- §3 3年・ティーム・ティーチングの授業事例
- 1 オープン・スペースを活用したコース別学習をティーム・ティーチングで〜素因数分解
- 2 コンピュータを使った導入指導をティーム・ティーチングで〜2乗に比例する関数
- 3 習熱度別学習が主体で一斉指導でもティーム・ティーチング導入〜二次方程式
- 4 同一学級で習熟度に応じた3コース指導をティーム・ティーチング〜黄金比
- 3章 数学科ティーム・ティーチングの実践相談
- Q1 初めてティーム・ティーチングをすることになりました。教職員や生徒,保護者などにティーム・ティーチングについて説明しておいた方がいいでしょうか。もし説明するとしたら,どんなことを言えばよいのでしょうか。
- Q2 私は一人で授業がやりたいです。ティーム・ティーチングだと,もう一人の先生に監視されているようで,気になって,言いたいことも言えないんです。
- Q3 ティーム・ティーチングを行う場合,年間を通してメインになる教師とサブになる教師を固定して行うほうがよいのでしょうか。
- Q4 ティーム・ティーチングの授業について,毎時間,打合せをしないといけないんですか。時間がなかなかとれないんですが…。また,ティーム・ティーチングについて,全校教職員にしておくことは何ですか。
- Q5 ティーム・ティーチングの授業では,毎時間の指導案を作らなければいけませんか。作るとしたら,誰が作るのですか。また,指導案の形式にはどんなものが考えられますか。
- Q7 ティーム・ティーチングはどんな効果がありますか。その効果は,いつ,誰が,どうやって評価するのですか。
- Q8 ティーム・ティーチングで,とくに気を付けなければいけないことは何ですか。
- Q9 同じ形態でティーム・ティーチングをしても,学級によって反応がすごく違うんです。どの学級でも効果のあるティーム・ティーチングはないのでしょうか。
- Q10 年度の初めにティーム・ティーチングの年間指導計画をたてるのですが。どういう立て方がありますか。
- Q11 ティーム・ティーチングは,生徒の数学学習の理解にどのように役立つのでしょうか。一人で指導しても,十分に理解されると思いますが。
- Q12 複合型ティーム・ティーチングで気を付けることは何ですか。
- 4章 数学科ティーム・ティーチングの課題と展望
- §1 ティーム・ティーチングにおける学習指導の前提となる課題
- 1 個を生かす学習指導の視点の明確化
- 2 学校運営上の諸問題
- 3 プログラミングと共通理解の問題
- §2 数学科ティーム・ティーチングの課題
- 1 生徒の学習能力の押さえ方
- 2 ティーム・ティーチングによる学習指導の組み方
- 3 教材に内容とティーム・ティーチング
- 4 数学科ティーム・ティーチングの多様化
- 5 広がりのある学習コースとティーム・ティーチング
- 6 数学科ティーム・ティーチングにおいての配慮事項
- §3 数学科ティーム・ティーチングの展望
- 1 教材開発とティーム・ティーチング
- 2 指導計画とティーム・ティーチング
- 3 ティーム・ティーチングの広がり
まえがき
本書は,「学習内容を確実に身に付けることができるよう,生徒の実態等に応じ,学習内容の習熱の程度に応じた指導など個に応じた指導方法の工夫改善に努める」(「学習指導要領」第1章第6の2の(5))ことの実現を願って編集された「中学校数学科のティーム・ティーチング」(明治図書平成6年9月刊)の続編である。
その“まえがき”に「時期的にみてティーム・ティーチングの実践研究が始められたばかり……」と記したことを記憶している。教職員配置改善計画(第六次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画)が示されてから,すでに4年が経過した。この間,指導方法の工夫など個に応じた教育の展開は,条件付きではあるものの加配が行われた学校を中心にティーム・ティーチングという形をとって積極的に実施され,その成果も多く紹介されるようになった。1年ほど前の第5回日本教師教育学会(筑波大学で開催)や,各都道府県での取り組みでも個別指導が充実し,ティーム・ティーチングは個性教育に有効であるという教育効果が報告されている。
実施状況について,昨年,筆者が全国の都道府県,及び政令都市の各教育委員会に対して行った調査(平成8年12月現在,平成9年2月に集計)では,各都道府県における教員の加配校数は全国で約52%(公立中学校10,537校中5,477校)であり,加配校での数学科ティーム・ティーチング実施率(数学科TT実施校数/加配校数)は半数を越える64.8%(3,550/5,477)に及んでいる。中学校数学科でのティーム・ティーチング実施校の全体としての割合は,したがって,33.7%(3,550/10537)である。
単純に考えると中学校10校のうち,3校で数学科でのティーム・ティーチングが実施されていることになる。(ただし,これは学校数としての比率であるので,個々の教員がどれだけティーム・ティーチングに関わっているかは分からない。)が,各都道府県を個別にみると実施率(TT実施校/加配校)が100%を越えている県もある。このことを考えると,加配が行われなかった学校でも数学科でのティーム・ティーチングを積極的に導入し実践しているということになり,このことから多くの先生方に協力していただいていることがうかがえる。
それだけに,先般(平成8年7月19日)出された第15期中央教育審議会第一次答申にある教員配置の改善に関して「人的整備を一層進める」という提言には注目したいところである。(p.24)
同答申ではまた,これからの教育において子供たち一人一人が,伸び伸びと自らの個性を十分発揮しながら「時代を超えて変わらない価値あるもの」をしっかりと身に付けられるようにすること(p.9),そのための学校は,子供たち一人一人を大切にし,子供たちが自分のよさを見いだし,それを伸ばし,存在感や自己実現の喜びを実感できるような学校となるべきことが切に訴えられている。(p.15)
そして,一人一人の個性を生かすために,具体的に「…子供たちの発達段階に即し,ティーム・ティーチング,グループ学習,個別学習などの指導方法の一層の改善を図りつつ,個に応じた指導の充実を図る。また,自ら学び,自ら考える教育を行っていく上でも,問題解決的な学習や体験的な学習の一層の充実を図る。」(p.21)と述べられている。
本審議会の審議の中で,これまで私たちが実施してきたティーム・ティーチング等,授業改善への努力が認められたことを改めて確認するとともに,これをさらに発展的に押し進めていくことを肝に銘じなければならない。
新たな試みは,数学科におけるティーム・ティーチングでもすでに現れはじめている。すなわち,課題学習や選択教科としての「数学」の学習,あるいは,コンピュータを活用しての学習など巻き込んだ複合型ティーム・ティーチングの授業実践である。生徒一人一人に対する数学理解の深化を願い,授業改善を追究して止まないという姿勢からすれば,1章の1節で述べるように,それはむしろ授業の自然な姿といえよう。
とはいっても,それまでにはおそらく次のようなことが繰り返して論じられてきたはずである。
・本教材(本単元)をどうしてティーム・ティーチングで実施しようとしたのか ・計画の段階でどんなことが課題となったか
・話し合いの結果としてどのような実践がなされたか
・その実践(ティーム・ティーチング)からどのような成果が得られたか
・指導実践上新たにどのような課題(問題点)がでてきたか
本書に掲げる事例(2章)は,各学年ともすべてこうした考察を加えた上での実践例である。また,各学校におけるさまざまな課題にこたえるために,ティーム・ティーチングの実践相談のコーナーも設けた(3章)。さらに,これからの数学科におけるティーム・ティーチングの課題と展望についても示している。(4章)。
こうした事例を参考にして,実践,検討はもちろんであるが,本書全体の議論を通して,これからの数学科におけるティーム・ティーチングをどのように構築していけばよいかを考え,一層の工夫改善を図っていただきたいと願っている。
最後になりましたが,編者の再三に及ぶ要望をお汲み取りいただき,庶稿を整えていただいた指導主事の先生方や中学校数学担当の先生方に,刊行が遅れましたことをお詫び申し上げるとともに心からお札を申し上げます。また,何度となく私のところに来ていただいたり,先生方とのやりとりや校正の労をとっていただいた明治図書編集担当の安藤征宏氏,竹内敦子氏に心から感謝申し上げたいと思います。
1997年8月 編者 /根本 博
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