- はじめに
- 理論編 生徒が自ら考えを発展する授業を創る
- この発問が発展のきっかけをつくる
- 第1節 楽しめるようにしたい数学的活動とは
- 第2節 自ら学び自ら考える生徒を育てる発問
- 第3節 数学らしい話し合いを構成する発問
- 第4節 問いによる発展を求める指導計画と支援策
- 事例編
- 1.正の数・負の数の必要性とよさ
- 猪苗代湖の断面図を描き,正・負の数の特徴を調べよう
- 2.正の数・負の数の計算
- 負の数を引くと,答えが引かれる数より大きくなるのはなぜだろうか?
- 3.数量の関係を表す式
- 1からnまでの数を足すにはどうしたらよいだろう
- 4.一元一次方程式の利用
- 方程式の解法を知ろう
- 5.一元一次方程式の利用
- 方程式を使わずに解けるかな?
- 6.点対称な図形の性質
- 点対称作図器のしくみを調べよう
- 7.基本的な作図
- 角を二等分しよう
- 8.ねじれの位置にある2直線
- この2直線の位置関係は平行だろうか,それとも垂直だろうか
- 9.面や線を動かしてできる立体
- 回転体を正しく描こう
- 10.直線・平面の決定条件
- 街灯の下を歩く人の影の動き
- 11.反比例
- 表からいえることは?
- 12.比例,反比例の見方や考え方の活用
- 2つの数量の関係を表や式で表すと?
- 指導法編
- 1.T.T.による弾力的な学級編成
- 〔文字と式〕
はじめに
「確かな学力」を育む学習指導への社会的要請が高まっている。中学校学習指導要領(平成10年12月解説 数学編)では,数学科の目標として「数量,図形などに関する基礎的な概念や原理・法則の理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさ,数学的な見方や考え方のよさを知り,それらを進んで活用する能力を育てる」と記されている。「確かな学力」を育むとは,ここに記された目標を発展的に実現することであろう。
本書は,確かな学力の中でも,生徒が自ら学び自ら考える発展的な学習を,発問の改善を通じて実現する授業研究書として計画した。取り上げるのは,普段の授業である。日々の教育内容を自ら発展的に学ぶことができれば,数学の楽しさを知ることができ,そのことでまた数学を自ら学び自ら考える生徒が育つのである。そのために,まずは,生徒が学んでいる普段の教材を,発展的に学べるように工夫し,生徒が自ら学べるような学習指導を実現したい。
このような願いから,本書では生徒が発展的に学べるようにする工夫として,単元の指導計画の中でも,少なくとも数時間の内容の数学的な発展の流れを見通すことを大切にし,その見通しのもとで,本時の授業のどのような発問が,生徒が自ら活動しながら数学の学習を楽しむきっかけとなるか,そして,つまずきやすい生徒をどのように支援する必要があるかを,学習指導の計画とその実際例において示すことにした。
本書のもう一つのねらいは,「研究授業」といわれると気が重くなる先生方を,日々の授業において進める発問と,研究主題を定めた授業研究の事例から応援することにある。普段から授業を工夫していれば,先生の思いや願いを先取りする自ら学ぶ生徒が育っていく。その成果が,自ら学び自ら考える生徒の姿として研究授業の際にも現れる。それぞれに研究主題を設けて成果を執筆してくださったのは,日本や地域で知られたベテランの先生方であり,この本を手がかりに,それを超えた工夫を見いだされるのは読者の先生方である。次は,読者の先生方からこんな実践をしたという声を聞かせていただけることを心待ちにしたい。本書は,みなさんが提案するためのきっかけでもある。
出版に際して明治図書の仁井田康義氏,相田芳子氏にお世話になった。お礼を申し上げたい。
平成15年5月 /礒田 正美 /大根田 裕
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- 明治図書