新時代の授業づくり:理論と実践の展開4
学力の質的向上をめざす理科授業の創造

新時代の授業づくり:理論と実践の展開4学力の質的向上をめざす理科授業の創造

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ものの本質を見ていける力をつける授業プランを示した。

本書では、理科教育において何を重視するべきかについて述べている。「微視的な視点」「巨視的な視点」の必要性、また、身につけた力を適切に応用できるように「逆問題的課題解決」の必要性を述べ、子どもたちにものの本質を見る力をつけることをめざしている。


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ISBN:
4-18-615914-9
ジャンル:
理科
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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第1章 学力向上プラン
第1節 自然を豊かにとらえる
1 自然はわからないことばかり
2 理科は役に立つか
3 理科では何を教えなければならないか
4 理科の学力
5 アメリカ理科教育の流れから
6 自然を豊かにとらえる
第2節 学習指導要領の変遷
1 学習指導要領の変遷から
2 磁石学習の変遷
3 語句の頻出による各学習指導要領での違い(内容)
4 語句の頻出による各学習指導要領での違い(科学的な見方・考え方)
5 これからの学習で大切にしたいこと
第3節 科学的思考
1 科学的思考とは
2 磁石教材からの検討
3 科学的思考の分析
(1)分析の方法
(2)全ての子どものノート分析
(3)A児・B児についてのノート分析
4 科学的思考のとらえ方
5 授業での落とし穴
第4節 微視的な視点・巨視的な視点
1 構造を見る
2 科学史から
(1)ものの本質は何か
(2)熱の場合
(3)溶解の場合
(4)天文学の場合
3 学習指導要領から
4 自然の階層性
第5節 逆問題
1 逆問題とは何か
2 順問題から逆問題へ
3 使える知識にするために
第6節 これからの科学技術と理科教育
1 これまでの科学技術史,これからの科学技術の動向
2 理科教育の役割(意志決定できる力)
第2章 理科授業改善モデル
第1節 微視的な視点を取り入れた実践
1 第3学年 磁石につけよう
2 第4学年 空気
第2節 巨視的な視点を取り入れた実践
1 第4学年 ものの温まり方
2 第6学年 人と環境
第3節 逆問題的課題解決を取り入れた実践
1 第5学年 もののつり合い(使える知識を目指す実践)
2 第5学年 ものの溶け方(逆問題的課題解決を取り入れた実践)
エピローグ

プロローグ

 現在,「学力低下」が各方面から叫ばれている。今までの要素的知識の網羅的記憶だった学力論を「新しい学力観」によって,学力をより豊かでバランスのとれたものへ拡張していこうという試みがされてきた。しかし,平成10年の学習指導要領において内容,授業時数の削減もあり,結果的に「学力低下」の批判が噴出した。

 学力を幅広くとらえていこうとすると常に学力低下を危惧する声がついてまわる。反対に,知識を重視すれば,子どもの意欲が減退する等の批判がされる。このような動向は,過去繰り返されてきたことであり,よく振り子を例に示される。昭和20年代の日本でも読み書き算を「基礎学力の防衛」として強調する「学力低下」批判が渦巻き,系統主義を基調とする昭和33年の学習指導要領改訂を導いた。内容系統重視のこの流れは,昭和43年の改訂でさらに強化される。その当時の教科書は学習内容がとても豊富である。内容が豊富であると,今度は一転,「知識偏重」「詰め込み教育」批判がさまざまな立場からなされ始める。これを受けて昭和52年の改訂では教育内容の精選と授業時数の削減が行われた。前回,今回の学習指導要領改訂は,この流れの先に位置づく。

 そして現在「学力低下」問題が再び叫ばれている状況である。平成15年12月26日に文部科学省は,新学習指導要領の総則を中心にその一部を改正した。一部改正等の趣旨は,「児童生徒に,知識や技能に加え,学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自ら学び,主体的に判断し,行動し,問題を解決する資質や能力などの確かな学力を育成し,生きる力をはぐくむという新学習指導要領のねらいの一層の実現を図るため」である。教科に示された指導内容に関して,その範囲や程度を学校において特に必要がある場合には,範囲や程度をこえて指導することができるとし「はどめ規定」に関わる制約がなくなった。

 一部改正で大きく取り上げられる「はどめ規定」の緩和にだけ目が行ってしまうと以前の知識の詰め込み教育と何も変わらなくなるのではないだろうか。昨今の理科教育を「理科教育,校門を出ず」と酷評されて久しい。言い換えれば,学校で行われている理科授業が必ずしも子どもたちに生きてはたらく力を育成していないことになる。発展的な学習と称して豊富に知識を詰め込むのでは,知識もいずれ剥落してしまうだろう。何をどのように育むのか,重要なことは何かについて考えていかなければならないのではないかと考える。

 本書では,理科教育において何を重視しなければならないのか,またどのように見ていかなければならないのかについて述べた。子どもたちには,ものの本質を見ていける力をつけて欲しいと願っている。ものの本質を見ていくためには,構造をとらえていかなければならない。自然に切り込んでいくためには,「階層」「空間」「時間」によってとらえていかなければならないが,本書では,構造をとらえるための視点として主に「階層性」に注目し,「微視的な視点」「巨視的な視点」の必要性について述べた。状況に応じて,視点を変更しながら,ものごとをとらえていかなければならない。これらの視点を意識することにより,「自然を豊かにとらえる」ことができるようになるのではないかと考える。

 また,身に付けた力を適切に応用できるように「逆問題的課題解決」の必要性について述べた。「逆問題」の考え方は決して新しいものではない。教師が意識して取り入れることにより,子どもの見方は鋭くなる。教師側から子どもの成長を見ることができ,自分の実践を振り返ることができる。多くの先生方に取り入れて欲しいと思っている。


   2005年11月 /中田 晋介

著者紹介

中田 晋介(なかた しんすけ)著書を検索»

1973年生まれ/広島県出身

広島市公立小学校教諭を経て,現在広島大学附属小学校教諭日本理科教育学会会員

平成15年度小学校理科教育課程実施状況調査分析委員(国立教育政策研究所)

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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