- 刊行のことば /竹内 脩
- 刊行にあたって
- 大阪からの熱いメッセージ /稲垣 卓
- 「新しい風」を /志水 宏吉
- T 地域密着で進める大阪の教育改革
- U 教育7日制と義務教育活性化プラン
- 1 小学校低学年35人学級と効果のある学校づくり
- 2 義務教育活性化プラン
- 3 学力等実態調査と家庭学習支援
- 4 わがまちの誇れる学校づくりと学力向上プロジェクト
- 5 子ども元気アッププロジェクトと『げんきアップノート』
- V 多様な生徒実態に対応した高校改革
- 1 府立高校の特色づくりと再編整備
- 2 ものづくりと工科高校
- 3 定時制高校の再編とクリエイティブスクール
- 4 普通科高校の改革と高大連携
- 5 キャリア教育とデュアルシステム
- 6 特色づくりに対応した入学者選抜方法の改善
- W 非行と不登校の克服のために
- 1 こころ元気プロジェクト
- 2 少年非行と行動連携
- 3 不登校とハートフレンド・スクラム相談員
- 4 児童虐待から子どもを救おう〜岸和田児童虐待事件が投げかけたもの〜
- 5 学校における子どもの人権侵害防止
- X 「共に学び共に育つ」障害教育
- 1 知的障害のある生徒の高等学校受け入れにかかわる調査研究
- 2 自立就労をめざした「特別支援学校」(仮称)
- 3 医療的ケアについて
- 4 特別支援教育の基盤整備
- Y 違いを認め合って共に生きる
- 1 子どもの姿を出発点に進める人権教育
- 2 人権教育副読本『改訂版にんげん ひとシリーズ』
- 3 夢を育てる奨学金(奨学金改革と進路選択支援事業)
- 4 帰国渡日生徒の学校生活をサポートする
- Z 教育コミュニティづくり
- 1 地域教育協議会(すこやかネット)
- 2 親自身が育つ「親学習プログラム」
- 3 家庭の教育機能総合支援モデル事業
- 4 余裕教室の活用と高校教育NPO
- [ 地域に信頼される学校づくり
- 1 学校教育自己診断と学校協議会
- 2 学校の安全と「子どもを守る大人のスクラム」
- 3 意欲を高め、学校の活性化をめざす教職員の評価・育成システム
- 4 熱中先生獲得戦略
- 5 指導力不足等教員対策
- あとがき /和佐 眞宏
刊行のことば
大阪府教育委員会 教育長 /竹内 脩
わが国の教育は、今、改革のまっただなかにあります。
人間、百人集まれば、みな教育評論家と言われます。人それぞれに学校での様々な思い出があり、子育ての苦労、その中で感じた学校の指導に対する不満やいきどおりなど、教育についてはだれもが何か言える。そのような状況がこのように表現されるのでしょうが、今や議論から実行の時代になっています。
戦後の教育行政の歴史を振り返りますと、日本国憲法の三原則、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を具現化するための取り組み、たとえば長欠・不就学・低学力の克服とともに就学機会保障のための新制中学校をはじめ学校の大量建設に膨大な精力を費やしてきました。その量的対応も一九八〇年代後半に、中学校卒業生のピークを迎えた後、収束に向かいました。
他方、経済的には、わが国は、世界最高水準の豊かさを実現するなかで、学校においては、校内暴力・いじめ・学習についていけない子どもの問題などが顕在化し、さらには高校進学率が上昇するなか不本意入学や中退の増加、そして小学校におけるいわゆる学級崩壊、中学校や小学校における不登校などの新しい課題が生じてきました。また教育内容との関係では少子高齢化、情報化、国際化、環境問題の深刻化など社会的諸条件の変化のなかで子どもたちに新しい時代を主体的かつ創造的に生き抜いていく力を育む教育の展開が求められています。完全学校週五日制も平成十四年度から実施されることになりました。
このような背景のなかで、大阪府では平成十一年四月に『大阪府教育改革プログラム』を策定し、学校改革や教育内容の改善など学校教育の再構築と学校・家庭・地域社会の連携による総合的な教育力の再構築に取り組んでいます。『大阪府教育改革プログラム』の策定作業は、公立中学校卒業生がピークを迎えた昭和六十二年から遅れること八年、平成七年の大阪府学校教育審議会への「大阪府教育の基本的な課題を踏まえたこれからの教育の在り方について」の諮問をもって始まります。その検討にあたっては昭和五十九年から始まった国における臨時教育審議会での議論、さらにはその具体化をはかる中央教育審議会をはじめとする当時の文部省所管各種審議会の答申等も大阪府の教育課題を見据えて取捨選択しました。その基本姿勢は、あくまでも大阪府の子どもたちの育ちと学びをどう保障するかであります。
そして今、教育改革プログラム策定からまる五年が経ち、その実践を行う中で、二つの「シンカ」、すなわち内容の深化と進化が進行しています。一度ここで、教育改革プログラム策定にあたっての基本姿勢である子どもファースト≠検証する意味からも、われわれの取り組みを客体化しようという思いから本書の刊行に至りました。
本書の題名『行政が熱い 大阪は教育をどう変えようとしているのか』は、子どもは家庭のぬくもりと地域のなかに育つという人類普遍の原理―国際競争の苛烈さや高度情報化による仮想現実の氾濫のなかではともするとなおざりにされるものですが―に立脚する大阪府教育改革の基本理念をあらためて確認するものです。
執筆は、府教育委員会にあって、教育改革プログラムの具体化に向け施策の立案、執行に従事する指導主事が担当しました。厳しい財政事情のもと職員定数の削減が余儀なくされ、日夜多忙を極めるなかにあって、寸暇を惜しんで筆をとってくれた職員の努力をねぎらいたいと思います。また、貴重な時間を本書に割いていただいた皆さんには、施策背景の掘り下げや今後の施策展開の方向性に突っ込み不足をお感じになるかも知れませんが、大阪の教育を一歩でも前に進めたいという大阪府教育委員会事務局職員の熱い思いは十分ご理解いただけるものと確信いたします。温かくまた厳しいご批評をお待ちいたします。
過去、種々の教育改革の方針が出されましたが、時には現実と遊離し、さらには政治的な争いを引き起こすといった不幸な事例が見られました。子どもたちをめぐる状況が困難を増す今こそ、観念論を排し子どもたちと真摯に向かい合い、解決・改善の糸口を見出したいと思います。
カントは「人間は教育によってはじめて人間となる」と喝破しましたが、人類は教育によって先人の文化的成果を引き継ぐとともに自らの精神的・肉体的可能性を開花させ、新しい地平を切り開いてきました。本書の刊行を契機に教育にかかわる多くの人々が全国各地でより一層活発な議論と地域に根ざした教育実践を展開されることを期待いたします。
最後になりましたが、大阪の取り組みを全国に発信できる場をご提供いただいた明治図書のみなさまに厚くお礼申し上げます。
一次・二次それぞれの面接試験、一次受験時のエントリーシート(自己PR)や二次受験時の面接個票の記入、さらに一次の筆記試験で必ず出題される大阪府の教育に関わる出題にも対応できます。
大阪府教育委員会がどのような施策を行い、どのような教員を求めているのかが非常によくわかります。
情報元としてはこれ以上に無いものであり、あらゆる分野が網羅されかつコンパクトにまとめられている。
関係者必読の書です。