- まえがき
- 第1章 説明的な文章の指導の改善に向けて
- ―絶対評価を踏まえて―
- 1 これからの国語科の目指すもの
- 2 読む能力の育成
- 3 「C 読むこと」の指導の改善
- 4 説明的な文章の指導
- (1) 年間指導計画に基づいて適切な指導時数を配当すること
- (2) 目的や意図を明確にして読ませること
- (3) 情報活用能力の育成を図ること
- (4) 論理の展開を的確にとらえること
- 5 説明的な文章の指導と評価
- 第2章 絶対評価を踏まえた説明的な文章の指導実践例
- 1 「シンデレラの時計」の指導実践例 《第2学年》
- (1) 育成を目指す言語能力/ (2) 教材設定の理由/ (3) 指導上の工夫・ポイント(実践的な創意工夫)/ (4) 指導計画/ (5) 本時/ (6) 評価/ (7) 成果と課題/ (8) 目標に準拠した評価のための問題例
- 2 「魚を育てる森」の指導実践例 《第1学年》
- 3 「自然の小さな診断役」の指導実践例 《第1学年》
- 4 「かけがえのない地球」の指導実践例 《第1学年》
- 5 「江戸の人々と浮世絵」の指導実践例 《第2学年》
- 6 「ピーターラビットとナショナルトラスト」 《第2学年》/ 「かけがえのない地球」の指導実践例 《第1学年》
- 7 「人との共存を選択した野鳥たち」 《第3学年》/ 「ヤドカリとイソギンチャク」の指導実践例 《小学校第4学年》
- 8 「マスメディアを通した現実世界」の指導実践例 《第3学年》
- 第3章 実践から学ぶ
- 1 全体的な特徴について
- 2 個々の実践事例について
- 3 まとめ
まえがき
かつて教育課程審議会はその答申で,「文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導」を改めるよう指摘した。この指摘を受けて,平成10年12月に告示された学習指導要領国語においては,「各学年で説明的な文章や文学的な文章などの文章形態を調和的に取り扱うこと」が示された。
「文学的な文章の指導」について様々な議論が交わされる中で,「説明的な文章」の指導はどのように行われているのか。これからの中学校国語科は,「社会生活に必要な言語能力を確実に育成することを重視」する必要がある。社会生活に必要な言語能力は,「話す・聞く能力」「書く能力」「読む能力」を調和よく育成することにより生徒に身に付けさせることができるが,「読む能力」の育成に限れば,それは,「説明的な文章や文学的な文章などの文章形態を調和的に取り扱う」国語科の授業を通して実現されることになる。「説明的な文章」の指導を今まで以上に充実させることが求められている。
本書において,貴重な実践例を提案してくれた「説楽会」は,学習指導要領のねらいを実現するための具体的な手だてを求める若い先生方の研究会である。平成12年の春に発足して以来,月一度の定例会を通して,中学校国語科の様々な課題について精力的に検討してきた。その主なものは,「言語の教育としての立場を重視する国語科の授業の在り方」「年間指導計画の作成」「目標に準拠した評価の進め方」「観点別学習状況の評価と評定の関係」そして「説明的な文章の指導法」である。これらの課題はその一つ一つが大きな課題であり,容易に解決できるものではないが,それぞれの課題に取り組みつつ,終始意識されていたのが「説明的な文章の指導法」であった。定例会では,各自が持ち寄った説明的な文章を扱った学習指導案を検討し,提案者が,修正された学習指導案によって授業を行い,次の定例会までにその授業結果を整理して報告することを重ねてきた。幸いにも私はすべての研究授業を拝見することができた。もちろん会員個々の指導力の差による授業の巧拙はあった。しかし,「説楽会」の説明的な文章による授業に共通しているのは,育成すべき言語能力を明確にして授業に臨む姿勢である。育成を目指す能力をどのようにして一人一人の生徒に身に付けさせるかに悪戦苦闘している姿である。「この授業で学習指導要領の求める言語能力を生徒の身に付けさせることができたのか」という検討が繰り返された。おりから,「目標に準拠した評価」を一層重視するという教育課程審議会の答申「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方」が出された。「説楽会」の研究は,「説明的な文章の指導法」に「目標に準拠した評価」を組み入れたものになっていった。2年に及ぶ会員一人一人の努力が,目標に準拠した評価を組み込んだ説明的な文章の指導法として,ここにようやく結実した。
これからの国語科が重視すべき「説明的な文章」の指導と,一人一人の生徒に基礎的・基本的な学習内容を確実に身に付けさせるために必要な「目標に準拠した評価」に取り組んだ実践の記録である本書が,全国の国語科教育実践者のために役立つことを心より願っている。
なお,本書を刊行するにあたり,明治図書の石塚嘉典,松本幸子の両氏に企画・編集等様々な面で懇切にご指導・ご協力をいただいた。ここに記して感謝を伝えたい。
平成14年8月 編著者 /河野 庸介
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- 明治図書