- まえがき
- 1章 理科教育でどのような力を培いたいか?
- 1 理科の目標〜小学校で培いたい学力〜
- (1) 小学校学習指導要領の改訂 /秋吉 博之
- 2 小学校学習指導要領(理科)の変遷 /秋吉 博之
- 3 新学力観 /内山 裕之
- (1) 新学力観や生きる力が出てきた背景
- (2) 新学力観とは何か?
- 4 科学概念 /内山 裕之
- (1) 概念とはどういうことか?
- (2) 科学の精神とは?
- (3) 子どもの自然事象に対する見方
- (4) 科学概念獲得のための7つの要素
- 5 義務教育で培いたい科学概念
- (1) 原子・分子をいつ教えるか〜小学校理科と粒子概念の形成〜 /武田 富美子
- (2) 生物分野 身につけさせたい生物学的リテラシー /石渡 正志
- (3) 物理分野 エネルギー概念 /秋吉 博之
- (4) 理科に関連する環境教育の学び /谷川 直也
- (5) 食と農業の学び /山崎 功
- (6) 暦(こよみ)や星座早見を使いこなして子どもに宇宙を近づけよう /中野 英之
- (7) 理科に関する情報リテラシー /畑 宗平
- 2章 理科をどう教えるか?
- 1 導入の工夫
- (1) 意外性と認知的葛藤 /内山 裕之
- (2) 素朴概念と認知的葛藤〜導入の工夫・意外性〜 /小笠原 豊
- 2 問題解決学習,系統学習,探究学習 /内山 裕之
- (1) 問題解決学習のあらまし
- (2) 系統学習
- (3) 探究学習
- 3 民間団体の理科教育へ果たした役割 /宮内 主斗
- 4 仮説実験授業と極地研サークル /内山 裕之
- (1) 戦後の理科教育を振り返って
- (2) 民間理科教育団体「科学教育研究協議会」誕生の経緯
- (3) 民間教育団体の果たした役割
- 5 概念地図法(コンセプトマップ)の理論と実践 /大黒 孝文
- (1) 概念地図法とは
- (2) 概念地図法の利用
- 6 協同学習理論編 /大黒 孝文
- (1) はじめに
- (2) 理科の授業における協同学習研究
- (3) ジョンソンらの協同学習理論
- 7 協同学習実践編 /大黒 孝文
- (1) 理科における協同学習の方法
- (2) 相互協力関係を高める方法
- (3) 対面的―積極的相互作用を高めるために
- (4) 個人の責任を高めるために
- (5) 小集団での対人技能とグループの改善手続きを高めるために
- 8 探究学習理論編 /村上 忠幸
- (1) その1 日本における探究学習のこだわりと弱点
- (2) その2 探究学習における前仮説段階を考慮した探究過程
- (3) その3 messing aboutとコミュニケーション
- 9 探究学習の実践例
- (1) その1 T・REX の生態に挑む探究学習 /小笠原 豊
- (2) その2 ペットボトルを使った生態系・地球温暖化のしくみの探究学習 /松林 昭
- (3) その3 アリの観察・空気と温度などの探究学習 /西川 光二
- 10 マイクロスケール実験について /芝原 寛泰
- (1) マイクロスケール実験とは
- 11 マイクロスケール実験の実践例 /佐藤 美子
- (1) マイクロスケール実験の実践状況
- (2) マイクロスケール実験の活用方法
- 12 認知的な発達を促す理科授業の展開〜英国CASEプログラムの応用〜 /谷口 和成
- (1) はじめに
- (2) CASEプログラムとは
- (3) 日本における適用の意義
- 13 日本におけるケーススタディー /畑 宗平
- (1) 日本の学習指導要領と英国のCASE理論の関係
- (2) 日本版CASEプロジェクトの可能性と課題
- 14 CASE実践 小学校の具体的内容をどう教えるか?〜ものの溶け方〜 /畑 宗平
- (1) 日本の理科教科書の活動とピアジェの発達理論の関係
- (2) 小学校学習指導要領における粒子概念の導入
- (3) 粒子概念の教授方法と視覚化
- (4) 「ものの溶け方」における粒子概念とモデル化教材
- 15 自然博物館の理科教育への活用 /谷川 直也
- (1) 博物館について〜その意味と範囲〜
- (2) 博物館と学校教育
- (3) 「兵庫県立人と自然の博物館」(「ひとはく」)へ来館した小学校の実態と課題そして提案
- (4) 博物館と学校の連携における課題
- 16 科学館の理科教育への活用 /小野 則子
- (1) 科学館の理科教育への活用
- (2) 学校現場から考える科学館の理科教育への活用
- (3) 科学館の理科教育への活用にあたり望むこと
- 17 自然探検・発見・ほっとけん〜傾聴,共感ですすめる自然探検ニュース〜 /内山 裕之
- (1) 自然探検・発見・ほっとけんの自然の3けん主義
- (2) 自然探検ニュースの取り組み方
- 3章 理科の授業はどう計画するか?
- 1 評価規準と評価基準,指導と評価の一体化 /秋吉 博之
- (1) 評価の対象と方法
- (2) 形成的評価
- (3) 相対評価と絶対評価
- (4) 評価規準と評価基準
- 2 学習指導案作成(単元設定の理由) /内山 裕之
- (1) 学習指導案を書く理由
- (2) 学習指導案の構造
- 3 学習指導案作成その2(学習指導過程) /内山 裕之
- (1) 本時のねらい
- (2) 学習指導過程(本時の展開)
- (3) 板書計画
- 4 学習指導案 見本
- (1) 6年 生物分野 /新田 早苗
- (2) 6年 化学分野 /福岡 亮治
- (3) 4年 地学分野 (略案) /角川 佳久子
- (4) 3年 物理分野(略案) /黒沢 恵
- 5 指導計画作成の具体的事例 /秋吉 博之
- (1) 学習指導の改善と評価
- (2) 情意面の評価と学習意欲
- 6 理科学習の評価と授業研究 /秋吉 博之
- (1) 評価を踏まえた授業の改善
- (2) 理科学習における「活用」の評価
- (3) 理科教師の指導力向上と評価
- 7 カリキュラム再編に連なる教材開発の方策 /広木 正紀
- (1) 教材のとらえ方
- (2) 教材開発のタイプ
- (3) これからの教材開発の方策〜カリキュラムが先か,教材が先か〜
- 8 理科へつなげる生活科での学び /新田 早苗
- (1) 生活科のあらまし〜子どもの生活と遊び〜
- (2) 学習指導要領の位置づけ
- (3) 探究学習展開例
- (4) 理科へつなげる気づきの質を高める指導
- 9 実験・観察の安全指導 /秋吉 博之
- (1) 事故の防止
- (2) 事故発生の対応
- (3) 留意すべき事故が起こりやすい実験器具
- 4章 小学校の具体的な内容をどう教えるか?
- 1 「生物」領域の内容の基本事項1 動物の連続性 小学校5年 生命の誕生,小学校6年 発展 動物の解剖 /内山 裕之
- (1) ヒトの誕生
- (2) 小学校6年 人の体のつくりとはたらき
- 2 「生物」領域の内容の基本事項2 動物の構造と機能 小学校6年 人と動物の体 /寄木 康彦
- (1) 呼吸って何?
- (2) 肺の仕組みを実感しよう
- (3) 最初の消化は口の中から
- (4) 肺循環を通して,血液の循環について知ろう
- (5) 内臓の名前と位置関係を知ろう
- (6) ねらいは
- 3 「生物」領域の内容の基本事項3 植物の連続性 小学校5年 発芽と成長 /釜渕 章
- (1) びっくり! 種パワー!!
- (2) いろんな種をまいてみよう
- (3) 植物がスクスク育つには?
- (4) 花の仕組みを調べる
- (5) 花粉の観察
- (6) 受粉した雌花の観察
- (7) 種ができるまで
- 4 「生物」領域の内容の基本事項4 小学校3年 身近な自然の観察 /黒沢 恵
- (1) おもしろい植物を探そう
- (2) 植物の種のデザインを考えよう
- 5 「生物」領域の内容の基本事項5 生物と環境のかかわり 小学校6年 生物と環境〜国語科の学習内容と理科の学習内容を横断的にとらえて〜 /山崎 功
- (1) この章について
- (2) 小学校理科で取り組める教科横断的な学習の可能性
- (3) 国語科で取り扱う環境や生物に関連する内容と小中連携の可能性
- (4) 国語科と理科で教科横断的に学習する効果
- (5) 国語の学習内容にみられる理科の学習内容についての例
- 6 「化学」領域の内容の基本事項1 粒子概念 小学校4年 空気と水の性質 /小笠原 豊
- (1) ブラックデビルをやっつけろ
- (2) 「何で,水がいっぱいの……」「何で,空気だけの……」
- (3) 仮説から検証へ
- (4) 納得のいくまで調べ考える
- (5) ところで,ペットボトルロケットはどうして水を入れるの?
- 7 「化学」領域の内容の基本事項2 粒子概念 小学校6年 水溶液のはたらき /松林 昭
- (1) 目標
- (2) 物質概念について
- (3) 炭酸水の実験から(児童の活動と指導のポイント)
- (4) 水溶液と金属の実験(児童の活動と指導のポイント)
- 8 「化学」領域の内容の基本事項3 粒子概念 小学校6年 ものの燃え方 /畑 宗平
- (1) 授業の導入
- (2) 授業の展開
- (3) 指導のポイント
- 9 「化学」領域の内容の基本事項4 粒子概念 小学校3年&4年 もののあたたまり方を調べよう /福岡 亮治
- (1) 「もののあたたまり方を調べよう」という単元
- (2) 空気のあたたまり方
- (3) 空気のあたたまり方を観察する実験の考察
- (4) ナットを熱源にした空気のあたたまり方観察装置
- 10 「物理」領域の内容の基本事項1 小学校5年 電流の働き /福生 真也
- (1) はじめに
- (2) 単元の目標と指導上の留意点
- (3) 発展的学習内容例と活動の様子
- (4) おわりに
- 11 「地学」領域の内容の基本事項1 地球の内部 小学校6年 土地のつくりと変化 /岩野 翼
- (1) 化石レプリカをつくろう!
- (2) ボーリング標本の活用
- 12 「地学」領域の内容の基本事項2 地球の内部 小学校6年 大地のつくり /角川 佳久子
- (1) 単元のポイント
- (2) 地層がどうしてしまもようになっているのか調べよう
- (3) 岩石でできている地層
- 5章 外国では理科をどう教えているか?
- 1 フィンランドと日本の学校教育の比較 /内山 裕之
- (1) はじめに
- (2) フィンランドの学校教育制度の特徴〜教育委員会委員長インタビュー調査から〜
- (3) 就学前教育校の特徴〜the pre-school groups connected to winellska視察調査〜
- (4) 基礎学校の特徴〜隣接するスウェーデン語系基礎学校(Winellska skolan, grades 1-9)とフィンランド語基礎学校(Gesterbyn koulu, grades 1-9)やフィンランド語基礎学校(Veikkolan koulu, grades 1-9)視察調査〜
- (5) おわりに
- 2 アメリカの初等理科教育 /岩野 翼
- (1) 米国に学ぶ“学ぶ意義”
- (2) 小学校理科でできること
- 3 ケニアの理科教育 /秋吉 博之
- (1) ケニアの風土
- (2) 子どもたちの表情
- (3) ケニアの教育事情
- (4) 就学前教育
- (5) ケニアの初等教育
- (6) ケニアの理科教育
まえがき
理科を苦手と思っている先生が増えている?
かつて小学校教員養成系の大学は国立大学がほとんどでした。ところが近年,小学校教員養成系の私立大学が増えました。平成15年42大学,平成17年50大学,平成19年96大学,平成20年115大学というような増加ぶりです。小学校採用者の私立大学の占める割合も平成13年40.9%から平成19年56.5%へと増加しています。
さて,私立大学における小学校教員養成系の中身を見ますと,受験科目から理科や数学が外れていることが多いです。だから,小学校教員養成系を受験する高校生はほとんどが文系になります
20代の小学校の先生にインタビューしますと,国語や社会の授業に比べ,理科の授業に自信が持てないと言います。理由として「実験準備の仕方がわからない」とか,「知識がないので教えるのに自信がない」等の答えが返ってきます。
本書は,もちろん大学における「理科指導法」「理科教育法」のテキストを目的として書かれていますが,それ以上に,理科を不得手と考える小学校現場の先生方にも読んでいただきたいと願って書かれています。
「プロ教師をめざす 新理科教育早わかり事典」というタイトルは,まさに,現場の先生方に読んでいただき,理科を好きになり,自信を持って授業をすすめてもらいたいという願いのあらわれです。
探検・発見・ほっとけんの理科の3けん主義
新しい学力観以降,学んで得た知識よりも学ぼうとする意欲こそ大切であるという考え方が主流になりました。その考え方は「生きる力」とともに,系統性重視と言われる第7期の学習指導要領でも大切な柱です。理科系の大学で学んでも,科学技術が日進月歩で発達する今の時代,大学で学んで得た知識などすぐに古くなってしまいます。実際,私が大学の頃(1970年代初め),世界でNo.1と言われたスーパーコンピュータの性能は,今,各家庭にあるパソコンよりはるかに劣っていると言われています。だから,何歳になっても,新しいことにチャレンジして,新しい課題を見つけ,目を輝かせ学ぼうとする姿勢や学びきるスキルこそ重要であるというわけです。
文系出身の小学校の先生方に声を大にして言いたいのです。理科の知識がないことで自信をなくし,理科の授業を敬遠しないでください。子どもたちは昔も今も理科とりわけ実験や観察が好きです。だから,子どもたちと一緒に理科を楽しんでください。理科を探検してください。理科を探検すれば新たな発見があります。発見が積み重なれば,理科が好きになります。理科が好きになれば,理科をほっとけんという思いになります。まさに理科の3けん主義です。
「私は理科が嫌い」と思い込んでいる先生,騙されてはいけません。理科が嫌いなのではなく,理科の探検をしていないだけなのです。わくわく理科を探検し,「うわー!」と叫んでください。さまざまな発見を繰り返せば理科が好きになります。私はそう断言してはばかりません。どうぞ,本書を活用し,理科好きなプロ教師になってください。
現場人がつくった生きてはたらく理科教育法の本
本書を執筆したのは,理科好きな現場の先生方です。大学の先生も多いですが,元,小中高の先生がほとんどです。私も今は大学に勤めていますが,中学校に30年勤めていました。
だから本書は授業実践で裏打ちされた授業で生きてはたらく内容になっています。
先生方が本書を常に携帯し,授業で生かしてくださるならば,こんなうれしいことはありません。
さて,本書が刊行される2010年は,私が長い間,読んで勉強した月刊誌『楽しい理科授業』が廃刊になりました。とても残念です。したがって,「子どもたちにとって楽しく,しかもよくわかる理科授業をどう構築すればいいのか」という『楽しい理科授業』の精神を本書で受け継げたらいいなと思っています。
ぜひ,本書を読んでください。
最後に,本書をつくることを快く引き受けてくださり,しかも,丁寧に査読,校正をしてくださった明治図書の樋口雅子編集長に厚くお礼を申し上げます。
近大姫路大学教育学部こども未来学科 /内山 裕之
-
- 明治図書