- はじめに
- 第1部 理論編
- T章 確かな学力を育てる数学科の学習指導
- U章 中学校 数学科評価のポイント
- 第2部 教育課程の基準と評価規準
- 評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料(中学校/数学 1年)
- 第3部 事例編
- 1.正の数と負の数
- 2.正の数,負の数の加法と減法
- 3.正の数,負の数の乗法と除法
- 4.文字の使用
- 5.文字式の計算
- 6.方程式とその解き方
- 7.一次方程式の利用
- 8.比 例
- 9.反比例
- 10.比例と反比例の活用
- 11.対称な図形
- 12.基本的な作図
- 13.空間図形の基礎
- 14.いろいろな立体と計量
はじめに
確かな学力の育成,教育課程の基準と「指導と評価」の規準に基づく評定のあり方,それは,今先生方が,懸命に取り組んでおられる課題である。特に,この10余年,誰もが同じことを同じように学び,その到達度を相対的に評価する公平(equality)理念から,機会均等のもと,最低内容を保証し,学びたい人がさらに学べ,その到達度を絶対的に評価するという公正(equity)理念へと,教育行政の主軸転換が漸次進展してきた。それは,隣国の発展に対する技術開発競争力の維持,終身雇用制崩壊・少子化・高齢化などが進む中での豊かさの維持など,持続的に発展可能な社会の実現を求める国家的問題とも無縁ではない。その基本となる学力向上対策として,数学科教員の加配,選択数学の充実,数学科の授業時数増要請などがなされ,数学科への期待も,ますます増大している。
では,実際問題として公正理念のもと何をどう指導すればよいのか,それをどう評定すればよいのか,社会からの期待も大きいだけに数学科の先生方の悩みは尽きない。本書は,その悩みに答え,そのあり方をその本来の主旨から示すこと,授業において評定を得る具体的方法,評価・評定問題による評定の具体案を示すこと,それを確かな学力を育成する一環として提案することを目的に編纂された。本書の特徴は以下の点にある。
(1) 文部科学省教育政策研究所教育課程センターによる「平成13年度教育課程実施状況調査」の問題と結果から,確かな学力を育てる学習指導のあり方を示したこと。また,同センターによる「評価規準,評価方法の研究開発」に基づき,授業からの評定,個に応じた指導を通しての「評定の補正」という評点を出すまでの手順を確認したこと。
(2) 教育課程の基準,評価規準を前提にしつつも,学校毎に先生方自身が自ら評価基準を定めて評点を出すという実務課題に対して,そこでの評定化の問題と様々な評定手段を鑑み,望ましい評価・評定問題の作成の方途を提案したこと。
(3) 典型的な指導事例提案を通して,「指導と評価」から評定を判断する手順,具体的な評価・評定問題を例示すると同時に,確かな学力を育成する個に応じた指導の方策と,発展・補充問題を例示したこと。
評定方法は,先生方が実際にはどのような目標のもとで学習指導をしておられるかを映す鏡である。本書が,先生方の現在を映し,先生方が確かな学力を育成する手がかりとして役立ち,先生方から次の提案がなされる際の糸口となることを願う。出版は,明治図書の仁井田康義氏,相田芳子氏による辛抱強いご支援による。お礼を申し上げたい。
編者一同
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- 明治図書