- はじめに
- T 理科で「見える化」を実現する
- [1] 新しい理科における「見える化」
- [2] 科学的な思考力と表現力の一体化
- U 「科学的な思考力」を育てる
- [1] 「きまりや法則」のとらえ方
- [2] 理科の学習と「見えないきまりや法則」
- [3] 「見えるもの,見えないもの」と「見える化」の手だて
- ◆「見えないもの」を見える化する表 3年/ 4年/ 5年/ 6年
- V 「科学的な表現力」を育てる
- [1] 「見える化」を実現する
- ○観察図/ モデル図 ○3年生/ ○4年生/ ○5年生/ ○6年生
- [2] 「科学的な思考・表現」の評価方法
- 3年 じしゃくにつけよう/ 3年 植物のそだちかた/ 4年 天気のようすと気温/ 4年 ものの体積と力/ 5年 ふりこの運動/ 5年 もののとけかた/ 6年 ものの燃えかた/ 6年 植物の体のはたらき
- W 「見える化」を実現する実践事例
- 3年A 風やゴムのはたらき/ 4年A ものの体積と力/ 4年B 動物の体のつくりと運動/ 5年A ふりこの運動/ 6年B 動物の体のはたらき/ 6年B 月と太陽
- X これからの理科教育
- 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官インタビュー
- おわりに
はじめに
21世紀は,知識基盤社会の時代だと言われています。これは,自ら知識を創り,社会の変化の中でその知識を更新していくことの重要性を示唆しています。知を創造し,そして更新し続けることにより,生涯にわたる有意義な学習が可能になってくるのです。知を創り,更新していくためには,自ら問題を設定し,それを解決する力が必要になります。これは,まさに問題解決の力ということになります。
今回の学習指導要領の改訂においては,とりわけ理科における問題解決の力の育成が重視されています。そのため,学習内容の充実が図られ,それに必要な時間の確保として授業時数が増加されたのです。学習内容の充実は,新内容が設けられたことを意味しています。それを受けて,我々教師には,新内容で扱う教材や指導法の工夫・改善について,早急に研究を進めていくことが求められています。また,授業時数の増加は,観察や実験などの体験的な学習の充実を図ることを意味しています。それを受けて,我々教師には,「這い回る体験」にならないように,体験の質を高めて,一人一人の子どもが科学的な見方や考え方を養うことができるように授業の質を高めることが求められています。
昨年度から始まった移行措置は,今年度で終了します。来年度からは,いよいよ学習指導要領の全面実施となりますが,理科においては移行2年目の今年度から,既に実質的に全面実施という形で授業が行われているわけです。新しい理科の目標の下に,全ての新内容が授業として具体的な実践に移されています。
全国小学校理科研究協議会(全小理)は,我が国の小学校理科教育において学習指導要領を基盤としながら,新しい教材研究や指導法の開発を通して,ともに我が国の小学校理科教育をつくってきた研究団体です。その全小理の全国大会が,平成22年度は石川県で開催されます。そのテーマは「見えないきまりや法則」を「見える化」する理科授業。石川が,これまで大切に研究を積み重ねてきたテーマです。子ども一人一人が,自然の中に「見えないきまりや法則」をしっかりととらえ,それを生活の中に結晶化し「見える化」するのです。これは,問題解決を通してきまりや法則を習得し具体的な活用を図っていくことであり,今回の学習指導要領の改訂の本質と,ぴったりと一致するものと言うことができます。
本書は,この全小理石川大会において,理論的なご指導をいただいている講師の先生方,優れた実践を積み上げてきている実践者の先生が一堂に会し,具体的な学習計画として結実させたものです。新内容の授業はもちろんのこと,従来の内容の授業においても,新しい理科のめざしている方向性と違うことなく,質の高い授業を実現するための手頃なハンドブックとなるように,とりわけ編集には工夫を行いました。
本書が先生方の日々の理科授業の具体的な参考となり,一人一人の子どもが21世紀型の理科学力を育んでいくことを望んでいます。
平成22年10月吉日文部科学省初等中等教育局視学官 /日置 光久
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 /村山 哲哉
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