グレーゾーンの子どもに対応した作文ワーク・初級編

グレーゾーンの子どもに対応した作文ワーク・初級編

ロングセラー

好評29刷

医学の視点で作られたワークでどの子も文章が書けるようになる。

どの学級にもいるといわれるADHD・LDの子、いわゆるグレーゾーンの子どもに、基礎学力を保障するため、「書く」指導をどう見直すか。医療側との連携による新しい作文ワークを1年間かけて提案した。直ぐ使えて効果抜群は実践した教師の実証済み。


紙版価格: 2,926円(税込)

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ISBN:
978-4-18-685705-4
ジャンル:
国語特別支援教育
刊行:
29刷
対象:
小学校
仕様:
B5横判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年11月25日

もくじ

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監修のことば /横山 浩之
まえがき /大森 修
初級編 1
〔ユニット1〕 ひらがな「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」
〔ユニット2〕 のばす 音
〔ユニット3〕 のばす 音(おおきい こおりの なかま)
〔ユニット4〕 かなづかい
〔ユニット5〕 かたちの にている カタカナ
〔ユニット6〕 かたちの にている ひらがな
〔ユニット7〕 なかまの ことば
〔ユニット8〕 しゅごと じゅつご「〜は 何だ。」
〔ユニット9〕 しゅごと じゅつご「〜は どんなだ。」
〔ユニット10〕 しゅごと じゅつご「〜は どうする。」
〔ユニット11〕 ぶんを つくろう「〜が …。」
〔ユニット12〕 ぶんを つくろう「〜は ――を …。」
〔ユニット13〕 ぶんを つくろう「〜は ――へ …。」
〔ユニット14〕 ぶんを つくろう「〜が ――を …。」  (三つの 語の ならべかえ)
〔ユニット15〕 ぶんを つくろう「〜が ――へ …。」  (三つの 語の ならべかえ)
〔ユニット16〕 ぶんを うつそう(「 」の ある ぶん)
〔ユニット17〕 じゅんじょ よく かく  「はじめに」「つぎに」「さいごに」
〔ユニット18〕 てがみを かく「ともだちへ」
〔ユニット19〕 てがみを かく「せんせいへ」(敬体)
〔ユニット20〕 よく みて かく(観察)
〔ユニット21〕 たずねた ことを もとに かく(伝聞)
〔ユニット22〕 あいうえお さくぶん
初級編 2
〔ユニット1〕 かん字パズル
〔ユニット2〕 ことばを広げよう
〔ユニット3〕 カタカナでかくことば
〔ユニット4〕 くっつきの「は」「を」「へ」
〔ユニット5〕 文をかく
〔ユニット6〕 いろいろな形の文
〔ユニット7〕 「  」をつかう
〔ユニット8〕 はなしことばからかきだす
〔ユニット9〕 だらだら文をなおす
〔ユニット10〕 ていねいないいかた
〔ユニット11〕 じゅんじょよくかく
〔ユニット12〕 おはなしをかく
〔ユニット13〕 絵をみてかく
〔ユニット14〕 かんたんなせつめい
〔ユニット15〕 かんさつしてかく
〔ユニット16〕 りゆうをかく
〔ユニット17〕 どう行けばいいかな

監修のことば

 学習の基礎基本は、読み・書き・算(=そろばん)である。

 本書は、「書き」をはぐくむために作成された。従来の作文ワークとの最大の違いは、医学の視点から、「書き」の指導を見直したことだ。すなわち、医療と教育の連携が行われる場―――特別支援教育にも対応している。

 健常児の教育に役立つのは言うまでもない。「今後の特別支援教育の在り方について」で、文部科学省が示したように、普通学級に六%はいるとされたADHD、LDなど、グレーゾーンの児童にも役立つように、本書は作られている。その根拠を、神経心理学の力を借りて、以下に述べる。


 人間は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を通して、情報を出し入れする。言語に関係するのは、視覚と聴覚である。

 聴覚を介する言語とは、話しことば(音声)である。一方、視覚を介する言語とは、書き言葉(文字)・絵(静止画像)・パントマイム(動画)である。(図1、上側参照)

 「ことばの教室」などで、よく使用されているITPA言語学習能力検査では、言語を視覚・聴覚に分けるのみならず、情報の入出力についても考える。情報の入力―情報の統合(理解)―情報の出力である。(図1、右側参照)

 よって、ITPA言語学習能力検査の作業仮説では、次のように考える。

 この作業仮説は、一九五〇年代に端を発する。現代の脳科学の進展は、【聴覚受容】、【聴覚連合】などの機能が、異なる脳部位で行われていることを明らかにしてきている(注釈参照)。ただし、【聴覚受容】・【視覚連合】については、ある程度の共通部位が存在しているらしい。

 異なる脳部位で行われている事実は、これらの機能が、確かに別の機能であることの証明である。別の機能であるということは、同一人物の、おのおのの機能の発達や能力に、差があっても不思議はないということだ。学習障害(LD)が、その好例である。

(図省略)

 「書き」とは、考えたことを書き表す課題である。ITPA言語学習能力検査からみれば、【情報統合】→【動作表現】という課題(図2)である。この課題を補助するには、どうしたら良いか。

 何らかの形で情報を入力して補助することしかない。

 図2で、「書き」の回路に情報を入力できるのは、二か所ある。

 【聴覚受容】(聴覚性入力)から、【動作表現】(書く)内容を、そっくりそのまま入力してあげる作業の一例は、聴写(聞いたことを書く作業)である。

 【視覚受容】(視覚性入力)から、【動作表現】(書く)内容を、そっくりそのまま入力してあげる作業の一例は、視写(文章を書き写す作業)である。

 視写を行うための教材は、既に商品化され、存在している。光村教育図書の学校用教材「うつしまるくん」である。ある出版社の編集長に、自分のところで出版したかったと言わしめたほどの、ベストセラーである。

 視写という作業は、国語の教科書と原稿用紙あるいはマス目のあるノートがあれば、なし得る作業であり、私自身も、発達障害がある子どもたちに、「視写指導」をして、効果を上げている。

 視写は、書く内容を、そっくりそのまま入力しているので、これだけでは、「書き」を習得したとは言えない。スモールステップで、補助のために入力する情報をなくしていかねば、「書き」を習得したことにはならない。さらに、双方向性のコミュニケーションになり得る「書き」(例えば、感想文)を目指すことになる。

 多くの教師がしているように、視写の上の段階としては、「日記指導」がある。そして、その上の段階として、「作文指導」がある。

 私の個人的な経験では、視写が一〇分間で二〇〇字できるようになると、「日記指導」が可能となる。また、日記を毎日二〇〇字書けるようになると、作文が作文らしくなる。言葉を変えて言うと、いわゆる作文指導ができる。既存の作文ワーク(例えば、『楽しく力がつく作文ワーク』野口芳宏編、明治図書)を利用した指導が生きる。

 教師の誰もが感じているように、視写ができるようになっても、日記が日記らしくなるには、かなりの時間がかかる。すなわち、一行日記で終わってしまい、「日記指導」が本格化する前に、子どもが挫折感を味わい、日記書きを止めてしまうのである。

 確かに、「視写指導」と「日記指導」との間には、補助として与える【視覚受容】の落差が大きい。「視写指導」では、書く内容を全て与えるのに対して、「日記指導」では、書く内容を全く与えない。この差は、極めて大きい。

 さて、既存の教材で、「視写指導」と「日記指導」の間を埋める教材が存在しているだろうか? 部分的には、存在しているかもしれない。しかし、このポイントに焦点を定め、狙い撃ちした教材を見たことがない。あれば、ぜひ教えていただきたい。

 実をいうと、本書のような教材がないので、私は、ADHDやLD指導上、非常に困っていた。大森修氏は私の嘆きに即応して、教材作成を提案してくださった。


 平成一四年六月二九日、東北大学小児科の飯沼一宇教授は、第四四回日本小児神経学会において、ADHDの世界的な権威のバークレー博士を招いて、公開シンポジウムを開催された。この公開シンポジウムには、未曾有の一三〇〇人を超える参加者が殺到した。予定された会場には入りきれず、他会場を開放し、テレビ中継でシンポジウムに参加していただいた。

 この公開シンポジウムに参加された大森修氏は、「グレーゾーンの子どもにわかる指導法は、他の子どもにとってもわかる指導法である」ことを確信なされた。この確信なしに、この教材は生まれ得なかった。深く感謝を申し上げる次第である。


 大森修氏のご指導のもと、本書が編集され始めた。試作された教材は、大森修氏と私とが立ち会い、議論の上で、修正されていった。

 面白いことに、国語を専門としている教師が作成したものが、「使えない」と評定されることが、非常に多かった。既存のワークブックをたくさん知っており、それに引きずられてしまうからであろう。逆に、国語を専門としないが、教え上手な、子どもに好かれる教師が、本書が目的とした良い教材を量産した。こんなエピソードにも、本書の革新性が表れている。


 本書の編集には、一年余りを要した。本書を作成した先生方には、大変なご迷惑をおかけした。たくさんの修正をしていただいた。本当に、何度も何度も教材を作成してもらい、良いものだけを残した。本当に使える教材だけが、残せたと、自負している。

 本書は、「視写指導」と「日記指導」の間を埋めるための教材の第一歩である。私自身も、ADHD、LDといったグレーゾーンの子どもたちの指導に、この教材を使っていく。「視写指導」が順調に進み始めた頃に、この教材を使用し、「日記指導」に生かしたいと思う。ご使用いただき、ご叱正いただき、さらに、良い教材を作成していきたく思う。


   東北大学医学部小児科 /横山 浩之


注釈:このような知識を得るための一般向け書籍として、『読み・書き・計算が子どもの脳を育てる』(川島隆太著、子どもの未来社)がある。

著者紹介

横山 浩之(よこやま ひろゆき)著書を検索»

東北大学医学部附属病院小児科助手

医学博士

専門は小児神経学

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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