- はじめに 愛知教育大学教授 /志水 廣
- 第1章 少人数指導:はりきりコースでの授業展開の在り方
- ――示範授業:問題解決、テーブルといす―― /志水 廣
- 第2章 算数科習熟度別少人数指導実施の手引き
- 少人数指導の広がり
- T だれでもできる習熟度別少人数授業
- 1 保護者・児童への説明
- 2 たしかめプリントを作る
- 3 オリエンテーション授業
- 4 コースを決定する
- 5 習熟に応じた授業
- 6 授業の開始
- 7 評価の蓄積
- 8 授業力の向上
- U 習熟度別少人数授業のQ&A
- Q1 子供が自分で選んだコースが、その子にあっていない時は、どのようにしたらよいのでしょうか。
- Q2 習熟度別のコースを指導する教師は、どのように決めていけばよいのでしょうか。
- Q3 習熟度別のコースの分け方で迷っています。どのように分けるとよいのでしょうか。
- Q4 本校は、5学級あります。習熟度別少人数授業を行うには、どのようにすればよいのでしょうか。
- Q5 少人数指導には、十分な打ち合わせの時間が必要であると聞いていますが、どうしたらよいのでしょう。
- Q6 少人数指導では、みんな同じような授業をしないといけないのでしょうか。
- Q7 習熟度別少人数授業では、学習意欲の低い子は、どう指導すればよいのでしょう。
- Q8 習熟の低い子が算数嫌いになってしまう傾向があるのですが、どうしたらよいのでしょう。
- Q9 習熟の高いコースだと、学習内容がすぐに終わり、教材の準備が大変です。よい方法は、ないでしょうか。
- Q10 途中でコースを変わりたいという子がでてきました。コース変更を認めてよいのでしょうか。
- Q11 コースによって、扱う教材や扱い方が違ってしまいます。評価は、どうしていくのでしょうか。
- Q12 単元ごとに指導者が変わってしまうと、通知票や指導要録の評価は、どうしたらよいのでしょう。
- Q13 習熟度別指導を進めていくと、子供たちの間に、ますます学力の差が広がる心配があるのですが。
- Q14 習熟度別少人数授業で、子供たちの数学的な考えを伸ばすには、どのようにすればよいのでしょうか。
- Q15 習熟度別指導もいいけれど、もっと子供たちの間での学び合いを大切にするべきではないでしょうか。
- Q16 習熟度別少人数学習で、問題解決の授業ができるのでしょうか。
- 第3章 確かな学力をつける習熟度別少人数授業
- 本校の考える学力と基礎基本
- T 補充的な学習・発展的な学習
- 「ゆっくりコース」での補充的な学習
- 「はりきりコース」での発展的な学習
- 魅力的な教材開発
- U 習熟度別少人数授業の評価
- 指導と評価の一体化
- レディネステストの評価を生かす
- ○つけ法の評価を生かす
- 自己評価力を伸ばす算数日記
- 継続可能な評価システム
- V のびゆく日高っ子
- W 学生チューターによる授業支援
- 学生ボランティアの募集
- チューターの役割
- X チャレンジタイムの取り組み
- 基礎学力テストの作成
- チャレンジタイムの実施
- 習熟の違いに応じる問題づくり
- 日高マス計算
- がんばりカードの活用
- 第4章 そのまま使える「習熟度別コース分けプリント」(啓林館準拠)
- 5年
- 1 小数と整数
- 2 小数のかけ算とわり算(1)
- 3 四角形
- 4 計算の見積もり
- 5 変わり方のきまり
- 6 小数のかけ算(2)
- 7 小数のわり算(2)
- 8 面積
- 9 式と計算・同じものに目をつけて
- 10 分数
- 11 割合
- 12 円
- 6年
- 1 整数
- 2 分数のたし算・ひき算
- 3 立体
- 4 計算の見積もり
- 5 平均とその利用
- 6 単位量あたり
- 7 比例
- 8 体積
- 9 分数のかけ算
- 10 分数のわり算
- 11 割合を使って
- 12 比とその利用
- 第5章 習熟度別少人数授業の評価規準表
- 5年
- 1 小数と整数
- 2 小数のかけ算とわり算(1)
- 3 四角形
- 4 計算の見積もり
- 5 変わり方のきまり
- 6 小数のかけ算(2)
- 7 小数のわり算(2)
- 8 面積
- 9 式と計算・同じものに目をつけて
- 10 分数
- 11 割合
- 12 円
- 6年
- 1 整数
- 2 分数のたし算・ひき算
- 3 立体
- 4 計算の見積もり
- 5 平均とその利用
- 6 単位量あたり
- 7 比例
- 8 体積
- 9 分数のかけ算
- 10 分数のわり算
- 11 割合を使って
- 12 比とその利用
- おわりに
はじめに
日高小学校とは不思議な出会いであった。
平成14年1月に、岡崎で学校数学研究会が開かれた。土曜日の自主的な研究会で、筆者が1時間講演をした。「基礎学力のアップ」というような演題だったように思う。
このとき、筆者が講演をするというので、日高小学校の野々山里美校長と濱田毅研究主任が、刈谷から岡崎までわざわざお越しになり、講演を聴いてくれたのである。休憩時間にお二人と面談して、顧問依頼を受けた。基礎学力をつけるために、習熟度別学習に取り組み始めたということであった。
そうこうするうちに、文部科学省の「学力向上フロンティアスクール」の指定を受けたという連絡が入った。それもまた良し、という感じだった。3月末に大学の研究室で正式な相談を受けて、顧問校としての研究指導が始まった。同時に、学生チューターの派遣依頼も受けて、私のゼミ生を派遣することになり、今日まで続いている。
顧問の目的は、「教師の授業力アップ」である。よって、教師全員の授業を参観して、個別にアドバイスしていった。1日に12人ぐらいは指導したと思う。その記録は、「授業診断カルテ」として、日高小学校に残されている。ある人には教材の見方について、ある人には指導技術について、ある人には精神エネルギーについて、……と、多岐にわたった。
平成15年になってようやく効果が表れてきて、安心して授業が見られるようになった。授業力は、不断の努力の賜物である。素直にアドバイスを受け入れてくれたことが大きい。
気がついてみたら、「学力向上フロンティアスクール」としては、全国的にもトップを走っていたといえるだろう。日高小学校には、数学の免許を持っている教師は一人か二人しかいない。つまり、ごく普通の小学校教師が相互協力すれば可能な姿、ここでは、習熟度別学習のシステムができあがっていくことが証明されている。
何よりも素晴らしいのは、子供たちが生き生きと学習に取り組んでいることだ。「ゆっくりコース」は、決して学力の低い子が集まっているのではない。その子の性格として、ゆっくりと着実に学習したい子供たちが集まっているのである。もちろん、他のコースも同様である。
日高小学校の実践の素晴らしさは、文部科学省、渥美教育長、神田県知事等々の視察が相次いで行われていることからも推察できよう。
この、日高小学校の教職員・子供たちの日々の実践の成果を世に問うため、ここに2分冊にして公刊する次第である。
ただ一言付け加えるならば、習熟度別指導は、単にコースに分けたらできるというものではない。教師には、コースの特性に応じた日々の改善努力が求められるのである。
そうやって生まれたこの書を参考にしていただければ幸いである。
最後になったが、明治図書の石塚嘉典氏、木山麻衣子氏、多賀井寿雄氏には、無理な日程で本づくりをお願いし、刊行していただいたことに感謝したい。
2004年5月 愛知教育大学 /志水 廣
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- 明治図書