- まえがき
- 第T章 「記録」から「頭のカルテ」へ
- 一 ショッキングな出来事
- 1 メモ魔
- 2 記録を破り捨てる
- いたずらっ子出現
- 「記録」をみて叱る
- 「僕の逃げ場がありません!」
- 非をさとる
- 記録をやめる
- 二 「頭のカルテ」へ切り換える
- 1 「忘れる」ことを恐れない
- 2 子どものみかたが変わる
- 3 「頭のカルテ」の便利さ
- 第U章 子どもの声で異常発見
- 一 「おはよう」の声に異常発見
- 二 誰が、どんな声かつかむ
- 第V章 子どもをみる技術
- 一 子どもをみる「技術」の必要性
- 二 子どもをみる「下じき」 ――子どもの発達の特性――
- 三 追究する子どもの特徴
- 四 子どものちょっとした動きに着目する
- 1 子どもの問いかけで発見
- 2 子どもに聞く
- 3 暗示をかけて得意技を育てる
- 五 子どもの遊びをみる
- 1 子どもの遊びに感動する
- 2 一人で遊んでいるか集団で遊んでいるか
- 3 授業中と比べてどうか
- 六 子どもの「目線」をみる
- 1 目線が上向きか下向きか
- 2 目線の高さを同じにする
- 七 「この子のいいところは何か」とみる
- 1 どんなプロに育てたらよいか
- 2 プロに任命すると育つ
- 八 子どもの文を読む
- 1 読まれることを前提にして書いていること
- 2 本音の出る文を書かせる
- (1) 「おたよりノート」の書かせ方
- 「おたよりノート」はこんなもの
- どんな内容を書くか
- 保護者に読んでもらえるように工夫する
- 「おたよりノート」実況中継
- (2) 「はてな?帳」の書かせ方
- 「はてな?帳」とは何か
- 「はてな?帳」の効用
- 「はてな?帳」でユーモアのセンスをみがく
- 「はてな?帳」でみかたを学ぶ
- 九 子どもに手紙を書き、子どもの手紙を読む
- 1 手紙を書くのが趣味
- 2 子どもの生活がみえる手紙
- 十 子どもの「笑顔」をみる
- 1 この子はどんなとき、どんな笑い方をするか
- 2 笑いの効用
- 3 笑いの練習を楽しむ
- (1) 毎日、笑いの練習をする
- (2) 毎日、「笑い話」をする
- (3) 交代で「笑い話」をする
- 第W章 子どもをみる目の鍛え方
- 一 「みんなおもしろい子だ」と思ってみる
- 二 「子どもは多様な面があるのだ」と思ってみる
- 三 みる目を深化させるには知識が必要
- 四 みる目を鍛えるめやす
- 第X章 問題のある子の指導法Q&A
- 一 「忘れ物をする子」の指導
- (1) 手をうつが効果なし
- @ 効果のない一覧表づくり
- A メモ帳をつくらせる
- B 「おたよりノート」方式
- (2) 「教育係」をつくる
- 二 「基本的生活習慣のできていない子」の指導
- (1) 教師が気づいていない?
- (2) 実態をつかんで指導を
- (3) 「教育係」をつくる
- 三 「トラブルを起こす子」の指導
- 四 「いつも不満をもらす子」の指導
- 五 「もめごとを起こす子」の指導
- 六 「集団で遊べない子」の指導
- 七 「性格の暗い子」の指導
- 八 「授業中大声でさわぐ子」の指導
- 九 自重・自覚を促す話し方
- (1) 説教にならないように
- (2) 短く、端的に話す
- (3) ユーモアをまじえて話す
- (4) ほめるところと否定するところと
- 十 「宿題をやってこない子」の指導
- 十一 「発言しない子」の指導
- 十二 とびぬけて積極的な子どもの扱い方
まえがき
教材にしろ、子どもにしろ、指導法にしろ、その本質を把握することは、容易なことではない。
なかでも、子どもを的確に把握することは、特にむずかしいことである。三十年以上も教師として子どもと接しても、「確かに子どもを把握した」という実感はもてないものである。「つかんだ」と思った瞬間、もう子どもは変容している。
子どもを把握することなしに教育はできないのに、教材研究や指導法研究に比べて、子ども研究は遅れている。わたし自身の体験をふり返ってみても、やはりこの点が遅れている。担任するたびに、努力をしてきたにもかかわらず、子ども把握の技術は弱いと思っている。
長年、カルテなるものをつくって、子ども把握に努めてきた。
しかし、子どもから強烈なパンチをくらって、紙に記録するカルテから「頭のカルテ」へ切り変えた。これから、子どものとらえ方が変わった。いや、変えざるを得なくなったのである。
今、子どもたちが急激に変化している。この変化に、教師、だけではなく、親まで対応できなくなっている。子どもの変化に対応した新しい「子ども把握の技術」が必要になってきている。これに正面から取り組んでみた。これまでの体験と知識を総動員して取り組んでみた。
研究授業などをみると、メモ用紙をもって机間巡視し、何かメモしてはそれを授業に生かそうとしている。わずか二〜三分のノート作業、それも自分の担任しているクラスの子どもの作業の実態を、メモしないと覚えられないのだろうか。こういう様子を目にするたびに「頭のカルテ」の必要性を強く感じていた。
「この作業では、A児はこんなことを書くはずだ」という予測をもてるように、ふだんから「子どもをみる技術」を鍛えておかねばならない。「この問題でつまずくのは、B児とC児とD児のはずだ」と予測し、一直線に三人のところへ行き、確かめる――これが机間巡視である。思いもかけない子がつまずいているのを発見するのも、机間巡視の仕事である。
わたしは、本書で「子どもをみる技術」を七個にしぼり込んで、具体的に解説し、すぐに教室で使えるようにしたつもりである。いくら理屈を述べても、子どもをみる技術が明らかにならなければ、子どもを把握することはできない。また、子どもに対する愛情がいくらあっても、その愛情を生かす「技術」がなければ愛情は生きない。
「子どものちょっとした動きに着目する」「子どもの遊びをみる」「子どもの『目線』をみる」「『この子のいいところは何か』とみる」「子どもの文を読む」「子どもに手紙を書き、子どもの手紙を読む」「子どもの『笑顔』をみる」という七つの技術。そして、「子どもをみる目の鍛え方」に、わたしのこれまでの子ども研究の成果を盛り込んだつもりである。
この内容ではまだまだ不十分であることを十分承知している。が、意欲的だが技術不足の教師が子どもを把握しようとするとき、いくらか役に立つのではないかと思っている。
本書は、明治図書編集部の樋口雅子編集長のおすすめによりまとめさせていただいた。厚くお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
一九九八年三月吉日 /有田 和正
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- 明治図書
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