- まえがき―初めの一歩
- T 「生きる力」をパワーアップする総合的学習を創る
- 一 「生きる力」を問い直すことから始まる総合学習
- 1 「生きる力」は生きているか?
- 抽象論から授業づくりへ
- 2 「生きる力」を育てる社会科の教材開発
- 「学習を楽しむ力」を!
- 二 社会科は総合学習を指向していた!
- 1 「生きる力」を育む総合学習
- 「総合学習」への期待と要請
- 2 社会科における「総合学習」の教材開発
- 教科の枠をこわさない総合学習
- 三 総合学習が生活科から学ぶこと
- 1 生活科は総合学習に拡大できるか?
- 「テーマ性」の違いと生活科的な教育法
- 2 学習技能を「体得」する体験活動をつくる
- 「調べ学習」によって学ぶ
- 3 実際にやってみる(体験)調べ学習をつくる
- 「体験」で学ぶ総合学習
- U 「方法」を学ぶ総合学習を創る
- 一 「総合学習」の方法
- 1 社会科と総合学習をクロスさせる
- 「方法」を示した総合学習
- 2 調べ学習を「裏文化」の中で創る
- 「学び方」を学ぶ総合学習
- 3 みんなちがってみんないい
- 「選択する」調べ学習
- 二 学習技能としての情報教育と総合学習
- 1 手紙を書こう
- 学習技能としての情報活用能力
- 2 ニュースが生きている教室
- すわっ、阪神大震災
- 3 情報を「読み取る」から「読み破る」へ
- ニュース批判、まかり通る!
- 三 体験によって学ぶ総合学習
- 1 体験で知識と技能を総合化
- 「方法」としての体験活動
- 2 「本物の聴衆 Rial Audience」を教室に!
- 異質「体験」の場
- 3 体験も「いろいろ」
- 学習活動の工夫
- V 「内容」の統合としての総合学習を創る
- 一 心と頭とからだを「総合」する福祉教育
- 1 生きることの意味
- 「福祉教育」のめざすものは何か
- 2 福祉教育をどう取り込んでいくことができるか
- 「福祉教育」の方法
- 実践例 六年・くらしの中に生きる憲法 「豊かさ」とは何か
- 3 福祉教育の実践課題は何か
- 「福祉教育」の観点
- 実践例 四年・手話の授業 心のミスアメリカ
- 実践例 四年・Yくんに近づきたい みんないい人
- 二 「違い」と「よさ」を総合する国際理解教育
- 1 黒柳徹子さんに学んだこと
- だれでも、どこでもできる国際理解教育
- 2 身近に国際化、「モノ」から「ヒト」へ!
- 教室と世界を結ぶ
- 世界と結びついているわたしたちの町
- 不理解を理解する国際化
- 三 「つながり」と「共生」を学ぶ環境の総合学習
- 1 「元気」が出る環境学習
- 環境教育の可能性
- 2 「〜しない」環境教育から「〜する」環境教育へ
- 「参画する」環境教育
- 実践例 四年・住みよい暮らしをささえる 教えて空き缶くん
- 3 自然環境としての国土
- 富士山の見える日
- 富士山をどう教材化するか
- 富士山の見える日
まえがき―初めの一歩
中央教育審議会で「横断的・総合的な学習」を設けることが答申されて以来、にわかに総合学習への関心が高まってきた。
しかしこれを「大上段」に構えられると、わたしたちは身動きが取れなくなる。難解な理論構成がなされ、一糸乱れぬプランがあって、学習にふさわしい場を整備する。そんな「環境づくり」で、こころある者は肝腎の授業以前に精魂つきてしまうのである。
とてもそんなことはできそうにない。
果たしてそうだろうか。
もっと身近に、あたりまえのところから始められる「総合学習」が創造されてもいい。
「やれというからやる」という受け身で、総合学習の一歩目を記すというのは子どもたちに申し訳ない。
そこに、「子どもたち」を学習の中心におくこと。学習の主体が子どもにあるとすれば、総合学習こそあるべき学習活動のすがたに違いないからだ。
あたりまえのことを、あたりまえにしていくことほど難しい。
そうした視点で、実践を見直してみる必要がある。
加藤幸次氏は、総合学習をいくつかに類別しているが、なかでも「学際的」総合学習というのが、私たちにとって一番わかりやすく、また実践可能なアプローチだ。 と述べておられる。
教科を意識しながらも、いくつかの教科を横断的にひとつのテーマにせまるあり方は、まさに「総合」社会科 (ここは、あえて「総合」とつけたいところだ。)のめざした方向そのままである。
つまり社会科とクロスさせることによって、社会科が培ってきた「方法」を生かし、社会科がこだわってきた「テーマ(内容)」をより広く学ぶことができるのだ。
学習するということは、本来、頭だけによるものではない。手や体を使った体験的な学習であり、同時に心を動かした学習であるべきである。
ここに「総合学習」の初めの一歩がある。
格好つけずにやれる、まずはふだん着の「総合学習」を実践者自らがつくり出していくことだ。
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- 明治図書