- プロローグ
- 第1章 学力の質的向上をめざす音楽科授業の構想
- 第1節 授業の現状と課題
- 1 音楽科授業の実態
- 2 「教えない」授業と「学ばない」授業
- 3 「楽しい授業」の呪縛
- 第2節 創造的音楽学習の再考
- 1 創造的音楽学習
- 2 創造的音楽学習の理念
- 3 創造的音楽学習の実践上の課題
- 4 創造的音楽学習の本質的意義
- 第3節 音楽科の学力
- 1 音楽科の存在意義
- 2 音楽がわかるということ
- 第4節 授業改善の視点
- 1 音楽的思考力
- 2 音楽的識別力
- 3 旋律の構成に着目した授業づくりの意義
- 第5節 音楽科の授業成立に必要な指導のポイント
- 1 音楽科の学習規律
- 2 音楽表現活動に必要な技能
- 第2章 音楽科の授業改善モデル
- 第1節 音楽の構成要素に着目した音楽表現活動の実践例
- 1 ゆびづかいをかんがえよう 「こいぬのマーチ」(低学年)
- 1 本授業のエッセンス
- 2 学力の質的向上をめざすために
- (1) 実践上の課題
- (2) 授業改善の視点
- 3 授業の実際
- (1) 指導目標
- (2) 指導計画
- (3) 授業の実際
- (4) 授業の考察
- 2 おもなふしをもとにして工夫しよう 「茶色の小びん」(中学年)
- 3 日本のふしに親しもう 「おはやしをつくろう」(高学年)
- 4 演奏構成を工夫しよう 「エーデルワイス」(高学年)
- 第2節 音環境視点からの創造的音楽学習の実践例
- 1 みのまわりの音をさがそう 「ひみつの音」(低学年)
- 2 身の回りの音に耳をすませよう 「サウンド・ゲーム」(中学年)
- 3 生活の中にある「音」を表そう 「すずしい音」(高学年)
- 4 生活の中の音について調べよう 「『音』のフィールドワークに出かけよう」(高学年)
- エピローグ
プロローグ
新教育課程の実施に伴って,中学年と高学年では音楽科の授業時数が大幅に削減された。私が担当しているある学年の前期の時間割では,週に1時間しか音楽の授業がない。学級担任ならまだしも,音楽科の授業を中心に担当している教師にとっては,子どもの名前と顔すらなかなか覚えられない状況である。ましてや,あの子の歌声はどうだっただろうか,あの子はどんな音色を奏でていただろうか,そういえば,あの子は少し元気がなかった……一人一人の子どもが今日の音楽の授業をどのくらい楽しみ,どのくらいの達成感を得て教室に戻っていったのか……週に一度の授業では把握することすら難しくなってきているのが実情である。
このような状況の中で,それでも音楽科の教師は音楽の授業づくりを行っている。音楽科の授業を充実させるためには基礎・基本の徹底と内容の精選が必要であるという話も,もはや「今は昔」の感がある。しかし,時代が変わったからといって教科の本質が大きく変わるわけではないはずである。何をどう精選し,何をどう徹底させれば,どの子にも必ず音楽科の学力を保障することになるのだろうか。現場の教師はそれを知りたいのである。
私はかねてから,音楽の何(内容)をどのように(方法)教えることが音楽科教師の役割なのかについて,ずっと考えてきた。今回,これまで自分なりに学んだことと,自分なりに検証してきた実践内容をまとめる機会を得た。本書においてその一端を紹介させていただくこととなった。
教科教育における音楽科の役割と存在意義を明らかにする一助となれば幸いである。
2005年11月 /河邊 昭子
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- 明治図書