- はじめに
- T章 望ましい中学校英語教師の資質とは
- §1 「教師」という仕事
- §2 望ましい中学校英語教師の資質・能力を培おう
- 1 教師:teacherであると共に,教育者:educatorであれ。
- 2 学習の基礎・基本を押さえよう。
- 3 自己の英語運用力向上に心がけ,それを生かした効果的な指導計画,
- 指導法を工夫,充実しよう。
- U章 中学校英語科の目標を的確に捉えよう
- §1 中学校学習指導要領における「目標」の変遷
- 1 昭和22年:学習指導要領英語編[試案]における「目標」
- 2 昭和44年 第3回改訂の「目標」
- 3 昭和52年 第4回改訂の「目標」
- 4 平成元年 第5回改訂の「目標」
- 5 平成10年 第6回改訂:現行学習指導要領の「目標」
- §2 英語科の目標と「指導と評価の一体化」
- 1 「新しい学力観」に基づく評価:「観点別学習状況」の記録
- 2 「集団に準拠した評価」から「目標に準拠した評価」への転換
- §3 国際社会に役立つ英語の基礎作り
- 1 英語教育の諸改革
- 2 「国際社会に役立つ英語力」育成への道
- 3 必修・選択学習の発展としての「総合学習の時間」の善用
- V章 英語科の内容のポイントは何か
- §1 言語活動の指導
- 1 理解の能力:「聞くこと」「読むこと」
- 2 表現の能力:「話すこと」「書くこと」
- §2 言語活動の取扱い
- 1 3学年間を通した全体的な配慮事項
- 2 学習段階を考慮した指導上の配慮事項
- §3 言語材料の指導
- 1 基本的な英語の音声
- 2 語,連語及び慣用表現
- 3 文及び文型
- 4 基本的な文法事項
- W章 中学校英語科の指導と評価の実際に精通しよう
- §1 英語科の「目標」と「内容」
- 1 言語活動に関する「内容」
- 2 言語材料に関する内容
- §2 外国語科の「必修英語」と「選択英語」
- 1 「選択教科」の内容の取扱い
- 2 選択学習のねらいは「個に応じる指導」の充実
- 3 選択教科の開設状況
- 4 選択英語の実践例
- §3 指導と評価の適正な実施
- 1 評価の目的
- 2 学習評価の三側面と指導要録の「学習の記録欄」等への記録
- 3 「観点別学習状況」の評価手順
- §4 英語の教授理論・指導法の検討
- 1 オーラル・メソッド
- 2 グレイディド・ダイレクト・メソッド
- 3 オーラル・アプローチ
- 4 コミュニカティブ・アプローチ
- §5 学習指導案と授業展開・学習形態
- 1 学習指導案
- 2 授業展開
- 3 学習形態
- §6 小・中英語の接続と入門期指導
- 1 小・中英語の接続
- 2 入門期指導
- §7 基礎・基本の指導
- 1 英語の基礎・基本
- §8 クラスルーム・イングリッシュの生かし方
- 1 クラスルーム・イングリッシュ
- 2 クラスルーム・イングリッシュの生かし方
- §9 文字指導と辞書指導
- 1 アルファベットの指導
- 2 辞書の指導
- §10 学習の評価・指導の評価と授業改善
- 1 学習の評価
- 2 指導の評価と授業改善
- §11 選択英語の進め方
- 1 選択英語とは何か
- 2 選択英語の開設コースにはどのようなものがあるか
- 3 選択英語の具体的な実践例にはどのようなものがあるか
- §12 少人数指導・習熟度別指導
- 1 少人数指導
- 2 習熟度別指導
- §13 発展学習・補充学習・課題学習
- 1 発展学習
- 2 補充学習
- 3 課題学習
- §14 教育機器・情報機器の活用
- 1 教育機器の活用
- 2 情報機器の活用
- §15 研究・研修と指導力の向上
- 1 研究と研修の目的
- 2 研究・研修の種類
- §16 教科外英語活動と学校外英語活動
- 1 教科外英語活動
- 2 学校外英語活動
- X章 英語の応用力・実践力育成の方途を探る
- §1 「英語が使える日本人」育成行動計画の実施
- 1 「英語が使える日本人」の育成のための行動計画
- 2 英語教員集中研修
- §2 英語の応用力・実践力を育てる三層構造
- 1 「総合的な学習の時間」と国際理解
- 2 英語のコミュニケーション能力:応用力を育てる学習の三層構造
- 3 必修英語−選択英語の発展としての総合的・実践的な
- コミュニケーション活動の事例
- §3 「総合的な学習の時間」を生かした英語の応用力育成
- 1 国際理解教育の課題
- 2 国際理解教育は何を目標とするか
- 3 国際理解教育をどう進めていくか
- §4 英語科における小・中の効果的な連携・接続
- 1 小学校「英語活動」の現状
- 2 小・中を繋ぐ「ブリッジ学習」のすすめ
- §5 英語科における中・高の連携・接続
- 1 「連携・持続」の理念と課題
- 2 「段差」の実態と指導の改善
- 3 高1から高2への学習ギャップ
- 4 「読むこと」「書くこと」における中・高連携の指導
はじめに
もう20年も前に発行された『若い教師のための授業相談』(筆者編・明治図書)の「はじめに」を繙いてみると,「『この頃は,入学して間もない一年生で,もう英語の授業に興味を失っている生徒が少なくない。』とある教師が嘆いているのを思い出します。」という一節が目に止まった。当時は,(旧)文部省の推進するMEF(Monbushou English Fellow)や地教委の採用になるAET(ALT)等がちらほら中学校の英語授業に導入されつつあった時代。小学校を卒業し,希望に胸膨らませて入学してくる新入生たちの歓迎行事では,どの生徒も,「中学校では新しく英語の学習が始まるので,楽しみです。ぜひ頑張りたい。」と抱負を述べたものである。昨今の入学行事ではどうであろうか。
最近の文部科学省調査によれば,今や全国で約92%の公立小学校において,国際理解に関わる総合的な学習の一環として,何らかの形で「英語活動」と呼ばれる教育活動が展開されていると言う。しかし,その指導内容や方法は実に多様である。また,学区制の弾力化の進行に伴って,一つの中学校に入ってくる新一年生の出身小学校も数校から十数校にも増加する傾向にある。今日の中学校教育は,こうした多様な学習の背景や経験を持った生徒たちに対応していかなければならない時代になっている。
若い英語教師は,さすがに厳選の採用選考をパスした高い英語力を駆使してTeacher talkなどに挑戦するが,ともすれば授業が教師の一人舞台になってしまう場面も少なくない。また,中学校における英語科の目標や内容等,教科教育全般に立った基本的な認識や指導観などもまだまだ十分ではない。そこで,新規採用教員に対する研修体制も官民ともにかなり充実している今日,その研修や研究によって得られた成果を,日常の授業にいかに効果的に取り入れ,生徒たちの英語学習への関心を高め,「確かな学力」の向上へと繋げていくかが大きな鍵となっている。
本書は,中学校の若手英語教師が,このような課題をはじめ,日々の授業で出会う指導上の悩みや問題を取り上げて,その克服の方途を示すことを願って企画・編集されたものである。
第1章では,英語教師の資質について検討したが,とりわけ今後,小−中−高校と繋がる英語教育の中で,その中間に位置する中学校教師の在るべき姿とは何かを改めて考えてみる上で,表題を「中学校英語教師の…」とした。
第2〜4章にかけては,中学校英語科の「目標」の正しい把握のもと,この「目標に準拠した指導と評価の一体化」とは何かについて,指導内容のポイントを上げ,指導の実際について計16の観点から検討を試みた。
最終第5章は,現在の我が国では教育改革の一側面ともなっている「英語が使える日本人」育成の答申に関わる行動計画等の実施状況も見ながら,これからの英語教育の担い手となる若手教師への期待を込めて,国民の英語力向上をめざす時,特に中学校教育の分野からどう開拓していくべきか,その方途を探ってみた。
以上の意味から,本書の特色として,従来の中高校向け英語指導書には触れられていなかった「小−中英語を通した基礎力育成」の視点も組み込んだつもりである。従って,本書が,中学校英語教師のみならず,広く小学校「英語活動」の実施に関わる教育関係者にも講読して戴ければ幸いである。
なお,各項目の解説は,若手英語教師が直面するであろうと思われる指導上の問題にこたえるため,これまでの豊かな実践をもとに,中学校の教室現場で日々生徒と向かい合い,英語教育の新たな課題にも先進的に取り組んでいられる実績ある先生方にお願いした。多くの若手教師が,本書を活用されいくつかの有益なアドバイスを得て,あすからの授業に役立てて戴ければ誠に幸いである。
終わりに,本書の企画・編集から終始懇切なご援助を下さった明治図書出版の安藤征宏氏に心から感謝の意を表したい。
平成17年11月 編 者 /荒木 秀二
-
- 明治図書
- 英語教師として必要なことが書かれている。その点としては、これから英語教師になろうという方は参考になると思われる。現場の先生方が書かれているので、実際に自分の教室での実践も書かれていると読者としては、助かる。2006/1/2英語新米教師