- 作品の明るさについて /酒井 臣吾
- まえがき
- T 水彩画ほか
- 1 保護者,子ども,職員が感嘆の声 〜この時代の作品群
- (1) 保護者が立ち止まる作品群
- (2) 子どもが熱中する作品
- (3) 職員を感嘆させた作品群
- 2 私が初めて酒井式に取り組んだ授業 〜トレーニングとプラクティスの先にある子どもの笑顔
- 3 酒井式で自画像を描く 下描き編
- (1) 準備物
- (2) 指導の順序
- (3) 肌色を作る
- 4 必見! 保護者を驚愕させた自画像指導
- (1) 道具の確認
- (2) 鼻(鼻の頭・小鼻・穴)
- (3) 目(上まぶた・下まぶた)
- (4) 目(目ん玉)
- (5) くちびる(上くちびる・下くちびる)
- (6) くちびる(下くちびる)
- (7) 歯
- (8) 舌
- (9) 眉毛
- (10) 輪郭
- (11) 耳
- (12) 髪の毛
- (13) しわ
- (14) 分析
- 5 できばえはいかが? “今年の自画像”6年生
- 6 図工の授業開き“自画像”
- (1) 肌色を作る
- (2) 肌色を塗る
- (3) パーツを塗る
- 7 花の詩画集“ありがとう”
- 8 感動必至! なぞる,写す提案「花の詩画集」
- (1) 参考作品鑑賞
- (2) 見本の絵のなぞり
- (3) トレーシングペーパーでのなぞり
- (4) 作品の写し
- (5) 鑑賞
- (6) 参考作品の提示
- 9 「花の詩画集」
- (1) 制作途上 モノクロ編
- (2) 制作途上 カラー編
- (3) かぎりなく,やさしい花々
- 10 「学校の気に入った風景」野外スケッチにドラマを!
- (1) 野外スケッチにドラマを!
- (2) 野外スケッチの事前指導
- U 版画
- 1 版画「指先に集中した自分」
- (1) テーマを限定したバラバラの素材
- (2) 酒井式の人物を描く実践の追試
- (3) 版画の白黒の決め方を教える
- 2 複数教材を同時進行で指導することは可能か? 「指先を見つめた活動を描く」
- (1) 題材を選ぶ
- (2) 手を描く
- (3) 顔を描く
- (4) つなげる
- (5) 手の周りにあるものを描く
- (6) 背景を描く
- (7) 切り取る
- (8) 転写する
- (9) 白黒を決める
- 3 モノトーンのアート版画作品展
- 4 河田学級版画作品の客観的評価
- 5 一版多色の作品
- V その他
- 1 かたおし
- (1) かげ絵あそびをしよう
- (2) かげを写そう
- (3) 楽しいあそびばを作ろう
- (4) 生き物を写そう
- (5) 模様をつけよう
- 2 ちぎって貼ってちぎって貼って 紙版画
- (1) 版画紙上作品展
- (2) 酒井臣吾氏に河田学級の版画を見ていただいた
- 3 酒井臣吾氏の鑑賞の授業追試こんな鑑賞もあります“鳥獣人物戯画”のパロディ!
- 4 酒井臣吾氏のデザイン授業追試
- (1) “ネガ・ポジ”ツートーンの快感
- (2) “ネガ・ポジ”もう1つの作品
- (3) 酒井臣吾氏にコメントをいただいた
- 5 フォトコラージュ
- (1) 修学旅行フォトコラージュ
- (2) フォトコラージュ「ザ・自然教室」
- 6 ものさしを示して子どもがまとめる
- 生き物デザイン
- 7 絵画一言コメントカードの使い方
- 8 達意の作文力を培う 図工編
- 9 1年間のまとめ
- あとがき
作品の明るさについて
/酒井 臣吾
「明るい絵だなあ!」河田孝文氏からくる作品を見るたびにそう思います。
絵に限らず,版画もデザインもすべて明るく輝いて見えます。
この明るさこそが河田学級の特長であると言えるでしょう。
私のところには少なからず酒井式の追試作品が寄せられます。その中で河田学級の作品は圧倒的です。画面から子どもの明るさがはじけています。
読者の皆さんは,このような明るい作品が生まれてきた背景に何があるかを考えながら読んでみていただきたいと思います。
第一に子どものメッセージがすっきりと作品に表出されていますね。
「ぼくは実験をした。」「ぼくはボールを受けた。」「わたしは猫の頭をなでた。」と,それぞれの作品にしっかりと主語があります。
主語と言えば,風景やデザインにもそれがあります。
「ぼくは,この木をこう見た。」「わたしの見た鯉のぼりは大きかった。」という各自のメッセージが素直に作品に反映されています。
だから作品から子どもたちの「明るさ」が表われてくるのです。
河田氏が,どのようにしてこの子どもたちの主語を引き出したのか,そこに焦点をあてて読むと勉強になると思います。
第二に,河田学級の作品は,技術にとらわれすぎていません。だから明るい作品になるのです。
技術にだけとらわれると,作品から見えるものが技術だけになり,その作品を創った作者が見えなくなってしまいます。
だからといって,河田氏は技術を軽く見てはいません。表現を支える技術はしっかりと教えています。しかし,子どもたちはその技術を突き抜けて自分のメッセージを伝えてきます。明るくさわやかにです。
これは上級の腕です。
酒井式の造形技術の部分だけ盗んでも子どもたちは成長しません。
技術は,子どもの成長のためにあります。
子どもの成長に結びつかない技術は,ニセの技術です。
子どもの成長,いや教師自身の成長のために是非,「生きた技術」を学んでください。
本書で,河田氏は,その生きた技術の学び方の入口をしっかりと提示しています。酒井式を身につけるための2つの方法です。
1つは,教師が描いてみること,2つは教える練習をすること,です。
文章に書けばこれだけのことですが,やってみるとかなりショックがあります。未来が見えるほどのショックです。
75歳になる私でさえ,一つのシナリオを創るのに,スケッチも含めれば50枚以上の絵を描きます。そして何度もシナリオを練り直し,完成したら何度も授業の練習をします。それだけやってなんとか細い道筋をつかむことができるのです。
本書を読むときに,河田氏はどの場所でどのように描いてみたのか,どこでどのような練習をしたのか考えてみましょう。
追試をするときは,必ず自分も筆を取って描いてみましょう。描いたら声に出して練習してみましょう。
そうすれば,必ず光がみえてきます。
平成21年3月
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- 明治図書
- 指導の過程が分かりやすい。2016/4/1620代・小学校教員