英語授業改革双書36
学習集団をエンパワーする30の技
Subjectからprojectへ

英語授業改革双書36学習集団をエンパワーする30の技Subjectからprojectへ

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英語授業で生徒の学習意欲を高める画期的な方法を、場面づくり、授業マネージメント、グローバル教育などにスポットをあて詳しく紹介。


復刊時予価: 2,904円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-718607-7
ジャンル:
外国語・英語
刊行:
11刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 208頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

巻頭言 中嶋マジックのナゾ解きをする! /柏村 みね子
まえがき
第1章 仲間と学びあう場面をつくる
1.学び合えるシステムをつくるコツ
(1)comfortableになる集団をつくる/ (2)自学自習ができる集団をつくる
2.居心地のよいクラスをつくるコツ
(1)「生徒に時間を守らせる」から「大人が時間を守る」へ/ (2)「マイナス思考」から「プラス思考」へ/ (3)「説明・指示する授業」から「気づく授業」へ/ (4)「間違えさせない」から「間違いから学ぶ」へ
3.自己責任と遊び心で集団を高めるコツ
4.「全員参加」を保証する指導とそのコツ
5.生徒の信頼を得る指導とそのコツ
(1)横浜ベイスターズの優勝と阪神タイガースの変身/ (2)「笑い」は人間関係をよくする特効薬/ (3)説明したがる教師,自分で見つけたい生徒/ (4)人前で発表してこそ自信がつく/ (5)教師が信頼を勝ち取る指導とは/ (6)教師の指示を具体的にする
6.気づきを生かした指導とそのコツ
(1)詩人になろう/ (2)教師の仕掛けとタイミング/ (3)振り返りと気づきからよさを学びあう
7.「小さくても大切な習慣」の指導とそのコツ
【生徒の詩】 “Dear My Old Spike” '97卒業記念文集より
第2章 集団をempowerする授業マネージメント
1.ALTの話からヒントを得た語順の指導とそのコツ
2.「チャンク」で英語をわかるようにする指導とそのコツ
(1)チャンクとは何か/ (2)誰でも長文問題が解けるようになる!/ (3)4技能の指導で,どうチャンクを利用するか
3.日本文を書き換える指導とそのコツ
(1)日本文を英文の語順に書き換える方法/ (2)いくつかのパターンに気づかせる方法/ (3)方言を使って,伝える内容を考える方法
4.「聞く力」をみるみるつける指導とそのコツ
(1)シャドーイングをマスターする/ (2)シャドーイングを日常化させる技/ (3)次を予想する
5.「読む力」をみるみるつける指導とそのコツ
(1)腹式呼吸を訓練する/ (2)「指し読み」で鍛える/ (3)全員が評価をする音読テスト/ (4)表現読みを鍛えるreading theater/ (5)「驚いたところを探してごらん!」で意識が一変!
6.「話す力」をみるみるつける指導とそのコツ
(1)話したくなる必然性をどうつくり出すか/ (2) small talkで鍛える/ (3)1文を付け足す/ (4)話題を発展させるmapping(バルーン)/ (5)「ジェスチャー」と「連想ゲーム」で話したくなる/ (6)スピーキングを発展させる/ (7)話す活動を評価する
7.「書く力」をみるみるつける指導とそのコツ
(1)チェーン・レターで意見の拮抗を生む/ (2)リレー・ノートで意見の拮抗を日常化する/ (3)指導上留意することは何か/ (4)ALTのメッセージから/ (5)リレー・ノートを支持する生徒たちの声
【コラム】 リレー・ノートを追実践して /松村 敦子
8.カードで教室を騒然とさせる指導とそのコツ
(1)語順を定着させるカード・ゲーム/ (2)後置修飾のチャンクをマスターするカード・ゲーム/ (3)英語版「うすのろ」で教室が熱狂/ (4)神経衰弱で過去形や過去分詞形を覚える/ (5)生徒手作りのボード・ゲームで,教室の雰囲気が一変!/ (6)カードを首からかけて,いざフルーツ・バスケット!
9.力をつけるドリルの指導とそのコツ
10.頭にストンと入る指導とそのコツ
【生徒の詩】 “Should We Have a Soft And Warm Heart?” '97卒業記念文集より
第3章 集団の気づきを育てるグローバル教育
1.グローバル教育とは何か
(1)グローバル教育を象徴する4つの次元/ (2)学校教育とグローバル教育はどこで結びつくのか/ (3)アクティビティはどんな可能性をもつのか/ (4)なぜアクティビティが大切なのか/ (5)学びは楽しい行為/ (6)教師主導型の一斉授業で,民主主義を教えたことになるのか/ (7)授業を活性化させる5つのキーワード
2.グローバル教育で生徒はどう変容するのか
(1)グローバル教育と英語授業の接点を探る/ (2)フォト・ランゲージを扱った実践/ (3)ポスターセッションを使った実践/ (4)ことばを使わないでコミュニケーション能力をつける/ (5)「ダイヤモンド・ランキング」を使った実践/ (6)振り返り(リフレクション)の時間を生かす/ (7)インターネットは巨大なデータ・バンク
【コラム】 中嶋先生の授業を参観して /中村 絹代
3.愕然とした少女のスピーチ
(1)大人社会がつくりだした矛盾/ (2)自分が変われば,他人も変わる
【コラム】ドイツの小さな漁村であった出来事 /近藤 真紀子
あとがき
【グローバル教育・「総合的な学習」関係の参考文献】

まえがき

 巷では「英語ギライ」ということばがある。不思議なことに,他の教科ではあまりそういうことは聞かない。英語はなかなかものにならない,苦手意識を作りやすいということが,暗黙のうちに了解されているかのようだ。

 しかし,実際には,この「英語ギライ」を作り出しているのは,日々の授業であり,教師の姿勢なのだということがあまり理解されていない。

 教科書が変わっても,授業が変わらなければ,やはり英語ギライは生まれてくる。教育は学校でもカリキュラムでもなく,人がなすものだからだ。

 そして,もう1つ。見落とされがちなのが,居心地のいい集団で学べるかどうかという観点である。学習集団の質が高まらないと一人ひとりの力はつかない。

 以上,2つの観点から,自戒も含めて「英語ギライ」を作り出している要素を考えてみることにする。


―― ■英語ギライになる授業に共通する要素 ――

 ○学習規律がクラスの中にできていない。

 ○教師の思いつきで授業が仕組まれている。

 ○テストなどの結果ばかりが大切にされ,過程が大切にされていない。

 ○全て教師のペースで進められている。

 ○小さなミスが見逃されて,大きなミスをした時に叱られる。

 ○教師の感情で授業が行われ,特定の生徒がひいきされている。

 ○内容を詰め込みすぎている。

 ○教科書の内容・文法中心で,学びや「気づき」がない。

 ○自己表現が単発で,やりっぱなしである。

   など


 次に「英語が好きになる授業」(勤務校の生徒アンケートによる)に共通する要素をあげてみよう。

―― □英語が好きになる授業に共通する項目 ――

 ○comfortableな(間違いを認めあう)集団になっている。

 ○集団の中で関わりがあり,自ら学び気づく学習になっている。

 ○違い(diversity)を楽しもうという雰囲気になっている。

 ○全ての活動を,ビジョン(見通し)を持って仕組んでいる。

 ○活動がリンクされている(読んで話す,聞いて書く,など)。

 ○自己肯定感(self-esteem)が高まる学習過程になっている。

 ○教師がグループ・ダイナミクスを生み出す工夫をしている。

 ○教師が「できることより,変わること」を大切にしている。

 ○教師がチャレンジしたくなるタスク(課題)を用意している。

   など


 こう分析してみると,英語を好きにするには,やはり教師の姿勢と学習集団を育てるという2つの要素が不可欠であることが,おわかりいただけるのではないかと思う。

 教室をcomfortableにする。集団の中で生徒たちが,connectしあい,そこから生まれた気づきをshareしあうということである。

 世の中は,全てがつながっている(Only Connect)。つながりの中で,認め合い,学び合い,助け合う人間関係づくりをすることが大切だろう。

 そのためには,教師の方から,生徒たちが学習したくなるような仕掛けと布石をうつことである。

 しかし,残念ながら,現場では「教科書や文法をどう教えるか」というテクニック(その場しのぎの方法)だけに目がいきがちなことが多い。

 内容のあるものが,生徒の意欲や知的好奇心を育むのである。書いてあることも,話されることも,内容がなければ人は関心をもたない。

 中身を追求してこそ,スキル(熟練した技)が身につく。

 私は,教材は食材と同じだと考えている。そのままで食しておいしい食材もあれば,調理する場合もある。教師はコックである。コックは,食材の持ち味を最大限生かして料理をする。料理がおいしく見えるように,食器や盛りつけや並べ方にも細心の注意を払う。だからこそ,私たちの食指も動くのである。

 教材をどう生き生きとさせるかは,教師次第である。教科書中心で教科書に使われるのではなく,教科書を創造的に味付けする発想が必要だ。それによって生徒の関心が高まり,もっと知りたい,読みたい,聞きたい,書きたい,話したいと思えるようになれば,学んでいても楽しくなってくる。

 さて,この本は3つの章からできている。

 第1章では,「仲間と学びあう場面をどう作ればよいか」ということについて提案した。集団で力をどうつけるか,互いに気づき学ぶ授業をどうつくればいいかという観点で書いた。

 第2章では,「集団をempowerする授業マネージメント」についてご説明した。授業では,もっとマネージメント(授業運営技術)が大切にされるべきだ。何をどう教えるかという学習指導だけでは,生徒を惹きつけることはできない。この章では,英語の「情報を後へ付け足す」という特徴を,4つの技能で徹底する画期的な方法をご紹介した。生徒たちはこれを「中嶋マジック」と呼んでいる。

 人はできるようになれば,自ら使いたくなってくる。できなかったことをできるようにする。それが,集団をempowerするコツだ。

 第3章では,「集団の気づきを育てるグローバル教育」にスポットをあてた。ホリステックな(全体を包括する)学習は,気づきが大切にされるので,集団を高めるのにとても有効だ。これからはグローバル教育の時代になるだろう。

 この本が,読者のみなさんにとって『学習集団をエンパワーする授業』をつくるきっかけとなれば,こんなにうれしいことはない。


  2000年4月   著者記す

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      明治図書

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