体育授業づくりへの挑戦5基礎・基本を大切にする体育の授業

投票受付中

基礎・基本を大切にした授業づくりの考え方を解説し、学年別に体育授業づくりの実践例を共同研究で示した。楽しい授業づくりのコツがわかる。


復刊時予価: 2,563円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-725704-7
ジャンル:
保健・体育
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

刊行にあたって
はじめに /久保 加代子
T 授業づくりの考え方
/徳永 隆治
1 3つのキーワード
(1)生涯体育・スポーツに位置づく体育学習/ (2)学習内容の質的な高まりを求める授業/ (3)基礎・基本の習得
2 課題の持たせ方
(1)「教えたいこと」の焦点化/ (2)課題を持たせるための教師活動
3 かかわり合いを高める
(1)なぜ「かかわり合い」か/ (2)どのようにかかわり合うか/ (3)学習内容としてのかかわり合い
4 授業における指導的評価活動
(1)指導と評価の一体化/ (2)評価活動の組織化
U 授業の展開と展望
1「きょうりゅうにへんしん!」〔1年:模倣の運動〕 /土手 美由紀
1 なぜ「きょうりゅう」か
(1)子供たちが興味を持っている「きょうりゅう」/ (2)模倣しやすい「きょうりゅう」
2 どこに視点をおくか
(1)イメージをふくらませる/ (2)子供同士のかかわり合い
3 実際の授業は
(1)単元の計画/ (2)イメージをふくらませよう/ (3)きょうりゅうにへんしんしよう/ (4)本時の目標と学習過程(第3時)
4 子供たちはどう変わるか
(1) 指先まで動きが変わる/ (2) かかわり合いが動きを変える
5 実践を終えて
2 みんなで挑む「またぎ跳び」〔4年:走・跳の運動〕 /徳永 隆治
1 なぜ「またぎ跳び」か
(1)中学年での跳運動の学習/ (2)学習の方向づけ/ (3)安全で初歩的な跳び方の「またぎ跳び」
2 どこに視点をおくか
(1)踏み切りへの着目/ (2)個に応じて「競争」や「達成」を求める学習
3 実際の授業は
(1)単元の目標/ (2)学習の経過/ (3)本時の目標(第5時)/ (4)本時の学習過程/ (5)踏み切りへ着目させる場の設定
4 子供たちはどう変わるか
(1)わかったこと,気づいたこと/ (2)できるようになったこと
5 実践を終えて
3 スライドトラックでのリレー〔5年:陸上運動〕 /清水 剛
1 なぜ「スライドトラック」なのか
(1)これまでのリレーの学習から/ (2)スライドトラックとは/ (3)スライドトラックの特長
2 どこに視点をおくか
(1)目標タイムを目指して/ (2)バトンパスに着目して/ (3)チームでどうかかわるか
3 実際の授業は
(1)単元の計画/ (2)本時の目標と学習経過(第8時)
4 子供たちはどう変わるか
(1)タイムへの着目/ (2)バトンパスの技術が高まる/ (3)アドバイスが意欲づけに
5 実践を終えて
4 一人一人が生きるバスケットボール〔5年:ボール運動〕 /大上 輝明
1 一人一人が生きるバスケットボールとは
2 どこに視点をおくか
(1)学習課題は「よいチームづくり」/ (2)チームは男女混合の生活班で/ (3)チームと個人の課題を明確に/ (4)ルールづくりは自分たちで/ (5)5人チーム3人ゲーム制/ (6)子供同士のかかわり合い/ (7)どう記録をとらせるか/ (8)学習記録を生かす
3 実際の授業は
(1)単元の計画/ (2)本時の目標と学習過程(第9時)
4 子供たちはどう変わるか
(1)学習課題を「よいチームづくり」としたことで/ (2)チーム・自分の課題を明確に/ (3)みんなで納得し合えるルールづくり/ (4)どう記録をとり,どうかかわり合わせるか/ (5)バスケットボールで学んだこと
5 実践を終えて
5 チームワークを高める「カバディ」〔5年:ゲーム〕 /坂口 智子
1 なぜ「カバディ」なのか
(1)「カバディ」とはこんなスポーツ/ (2)だれでもどこでもすぐできる「カバディ」/ (3)作戦づくりを楽しむ
2 どこに視点をおくか
(1)ルールを自分たちのものに/ (2)作戦を立てる楽しさを味わう
3 実際の授業は
(1)指導目標/ (2)単元の計画/ (3)本時の目標と学習過程(第5時)
4 子供たちはどう変わるか
(1)ルールの工夫で動きが変わった/ (2)作戦の変化とチームワークの高まり/ (3)児童の意欲を高めた自己評価ポイント
5 実践を終えて
6 チームでのかかわりを重視した障害走〔6年:陸上運動〕 /野地 正和
1 なぜ,障害走をチームでするのか
(1)走力の劣る子供にとって/ (2)「ハードル走リレー」とは/ (3)「ハードル走リレー」の特性として
2 どこに視点をおくか
(1)かかわり合いを大切に/ (2)記録(タイム)から迫る/ (3)学習カードからの評価
3 実際の授業は
(1)単元の目標/ (2)単元の計画/ (3)本時の目標と学習過程(第2次 B時)
4 子供たちはどう変わるか
(1)かかわり合いから(Yくんを中心に)/ (2)「楽しさ度」と「達成度」から/ (3)課題の変化/ (4)記録の向上
5 実践を終えて
7 みんなで楽しむミニソフトバレーボール〔6年:ボール運動〕 /河野 一則
1 なぜ「ミニソフトバレーボール」か
(1)「ミニソフトバレーボール」のよさ/ (2)子供たちに身に付けさせたい力
2 どこに視点をおくか
(1)課題の持たせ方/ (2)ルールの工夫/ (3)子供同士のかかわり合い/ (4)評価につなげる「思考場面」の設定と巡回指導
3 実際の授業は
(1)単元の計画/ (2)本時の目標と学習過程(第7時)
4 子供たちはどう変わるか
(1)楽しさ度の変化/ (2)ルールの工夫/ (3)子供同士のかかわり合い/ (4)動きの様子/ (5)子供たちの関心の様子
5 実践を終えて
本書に収録された論文と授業実践記録の初出誌等一覧

刊行にあたって

 この「体育授業への挑戦シリーズ」は,先進的な各地の研究成果をまとめて出版し,現場実践に役立てようとする試みである。

 実は,約15年程前に故高田典衛先生の解説・監修により「体育実践研究シリーズ」6冊が明治図書から刊行された。私もその一員に参加させてもらい,感激した思い出をもっている。今回は,高田先生の遺志を引き継ぎ,さらに全国の優れた実践を紹介する役目を果たしたい,と祈念している。

 今回は,個人著作でなくすべてサークルによる共同著作である。それは,各地のサークル活動が授業力向上の原動力ではないかと考えたからである。また,授業力を高めたいという地道なサークル活動を広く知ってもらいたいと思う。

 前任地高知にいた頃,実に充実したサークル活動の体験がある。『炎の会』という南国高知にぴったりのサークルで,毎月第2・第4土曜の夜,私の研究室に集まり「体育」について熱っぽく語り合った。幼・小・中・高・大それに社会体育までの幅広い仲間であった。楽しくそれでいて授業に対しては厳しく率直に意見を戦わせる仲間であった。まるで炎が燃えるような意欲的な研究サークルであった。授業を語り,人生を語り,夢を語りそこから授業実践を論じ一冊の著作を世に問うた。

 全国には素晴らしい研究サークルがいっぱいあると確信している。それをさがし,そのサークルから生まれた素晴らしい授業実践を全国の人たちに紹介し,それが刺激となり体育への関心が高まり,体育の授業力を向上させるお手伝いをしたい,というのが私の夢である。

 なぜ,今私がこんな思いを強く抱くのか若干説明の必要があろう。昭和30年代の初頭の頃まで,残念ながら体育は教科学習としてあまり高い評価を受けていたとは,言えない。体育の時間が国語や算数の時間になってしまう事もしばしばあった。体育は,学習でなく遊び時間の延長という周囲の評価があったように思う。

 しかし,高田先生をはじめ多くの体育関係者の血の滲むような努力のお陰で,体育こそ子どもの成長に欠かすことのできない大切な教科だと認められるようになった。ところが,昭和50年代の後半から昭和60年代そして平成になって,また,おかしくなっている。いゆる「楽しい体育」になり,教える内容(学ばせる内容)がはっきりせず,先生の居場所がなくなったのである。もちろん,これは「楽しい体育」本来のねらいが,現場に正しく伝わらなかったからであるが,少なくとも教育現場に「楽しい体育」が混乱を引き起こしたことは,間違いない。

 その結果は,予想以上に厳しく,今,学校体育が危機にさらされている。目下,中教審で完全学校週5日時代の教育課程のあり方が審議されているが,審議の焦点は各教科の授業時数をどのように削減するか,教科構造をどのように再編成するかということである。これに関して,文部省が行った調査によれば,学校の教師の間に最も不人気な教科が体育であり,体育の授業時間の削減がターゲットになっているという。

 また,「体育の日」の新聞各紙の報道も最近の体力の落ち込みのひどさを報じている。これらの現象を,すべて体育のせいにするのは,短絡過ぎるが,体育関係者として傍観するわけにはいかない。このままでは,高田先生たち先輩の努力や,目の前にいる子どもたちに申し訳ない。


 この「体育授業への挑戦シリーズ」は,広く実践を紹介し,授業モデルの方策を確立することを目的としている。そのためには各巻いずれも次の5点を堅く守っていただくことを共通の決まりとした。


1 自分たちの実践したことは何であったか,その事実を明確に発表する。

2 実践は何を手がかりとして進めたか,その根拠も発表する。

3 実践にはどんな困難が存在したか,またそれをどう切り抜けたか,それを具体的に発表する。

4 客観的な評価資料を備えた授業モデルであることを発表する。

5 「『関心・意欲・態度』を育てる」のスローガンにとらわれない,確かな体育実践を発表する。


 以上が,このシリーズ各巻に共通する特徴にもなろう。

 全国各地には,優れた研究サークルがある。土地によっては,進め方に若干の違いもあるだろう。しかし,上記の5点の共通点があれば,あとはできるだけそのサークルの特色を出してもらう要求をしたのでシリーズ全巻が同じ傾向ではない。むしろそのことを歓迎したい。なお,ここに登場する研究サークルは,広く全国各地に呼び掛けたが,私の努力不足で今回は登場してもらえなかった地区もある。まだ,終わったわけではないので,今後お願いするつもりである。

 願わくば,このシリーズが巻を重ねることによって,現場が開発した優れた方法が各地に定着し,児童生徒の体育授業への関心・意欲が高まり,結果的には,さらに授業内容が充実して欲しいものだと念じている。

 おわりに,本シリーズの刊行に当たっては,明治図書編集部の江部満氏に終始励ましていただき,その間サークル推薦の決まらない長い時間を辛抱づよく待っていただいた。なお江部氏をはじめ友人社に格別なお世話をいただいたことを記し,ここにそのご苦労を感謝し,厚く御礼申し上げる次第である。


  平成10年夏   編者 /山本 貞美

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ