- プロローグ
- 第1章 学力の質的向上をめざす造形科授業
- 第1節 造形科教育の現状と課題
- 1 造形科教育の現状
- 2 知識・技術を訓練的に身に付けさせる学習について
- 3 子どもの活動に任せるだけの学習について
- 第2節 造形科の形成すべき学力
- 1 造形科が形成すべき学力とは
- 2 学力の構造を考える
- 第3節 学力を形成する授業づくり
- 1 学習内容を考える上での視点
- 2 造形要素の認識から,造形感覚を豊かに
- 3 学習方法を考える
- 第2章 造形科授業の創造
- 第1節 色彩から展開する造形活動
- T 「いろはかせになろう」第1学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- U 「色はかせとうじょう」第2学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- 第2節 材料と技法から展開する造形活動
- T 「色のまほうつかい」第3学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- U 「リサイクル大作戦」第5学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- 第3節 主題から展開する造形活動
- T 「シンボルの木」第4学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- U 「マスクをつくろう」第6学年
- 1 本実践のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 4 授業構成
- 5 考察
- V 関連題材「自己を見つめて」第1・2・3・6学年
- 1 本題材のエッセンス
- 2 指導目標
- 3 題材について
- 第4節 総合学習に活きる造形活動
- T 「海辺の生活を形にのこそう」第3学年
- 1 本単元のエッセンス
- 2 ねらい
- 3 単元の概要
- 4 授業構成
- 5 考察
- エピローグ
プロローグ
全国学力テストの結果やOECDによる学力到達度調査の結果を受けて,「学力低下」が問題となり,学校教育を取り巻く環境は厳しくなってきている。「学力」について様々な議論がなされている今なお,造形教育で形成する「学力」とは何かが明確にされていない。他教科のような議論がされていないのが現状である。
多くの子どもたちは,造形の授業が好きである。しかし,どんな造形的な力が身に付いたのか,曖昧なのである。ベネッセコーポレーションの行った学習基本調査でも,「好きな教科」の筆頭にあげられながら,「がんばって勉強したい教科」では第6位。「図工の授業は,自分の思いのまま好きに活動できるので楽しいけれど,努力して造形の力をつけたいと思うような教科ではない」という結果なのである。
こうした実態が造形科の存続までも危ぶむことにつながっている。学校教育を効率化させるために社会生活と直結しない分野(美術)を学校教育以外の社会教育の場に移すべきだ,という主張が登場したり,時数の削減,学力問題における説明責任の必要性,芸能教科と呼ばれる教科への選択制を迫る風潮など,造形・美術科教育を取り囲む状況は悪化している。
このような現状を打破するために,造形科教育において「何を」「どのような方法で」学習するか,そのことによって何を実現できるかを明らかにし,わかりやすい形で造形科教育の存在意義を明快にしなければならない。子どもたちに「こんな造形的な力が身に付いた」と実感させることが,今まさに求められていると言える。
本書は,造形科教育の現状をふまえ,あらためて,造形科が形成すべき学力について提言し,これからの造形科教育のあり方を提案していく。
第1章では,造形科教育の課題を整理し,造形科が形成すべき学力を構想し,活動内容領域や学習方法についての新しい提起をしていく。
第2章では,造形科学力の質的向上を図るためには,どのような授業が必要か,具体的な実践例を示しながら述べていく。
造形科の教育は「何のために」「何を中核に」「どのような内容を」「どのような方法で」行われるべきなのか,造形教育の基本に立ち返って,考えなければならないときなのである。
本書は,私なりの視点で理論化し,実践を通してまとめたものである。まだ,未熟な研究であるが,読者諸氏のご批評をいただければ幸いである。
最後になったが,本書に出版の機会を与えてくださった明治図書編集部の石塚嘉典氏,そして,多賀井壽雄氏,相田芳子氏をはじめ,多くの関係諸氏に厚く御礼を申し上げる。
2005年11月 /國清 あやか
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- 明治図書