- まえがき
- 第1章 新しい時代の図画工作の授業
- 1 これからの図画工作
- (1) Yesの理由
- (2) Noの理由
- (3) もう1つの方向
- 2 〔共通事項〕と材料や用具
- (1) 〔共通事項〕
- (2) 材料や用具
- 3 指導計画の工夫
- (1) 意欲や力を伸ばす指導計画
- (2) 発達に応じた年間指導計画
- コラム
- 〔共通事項〕の「共通」とは?
- 「材料や用具」という文化
- 第2章 中学年の年間指導計画と授業
- 3学年の年間指導計画
- 3学年の授業
- お気に入りパック (A表現(1)(2)/ 2時間扱い)
- なかよし ペタペタ かたつむり (A表現(2)/ 4時間扱い)
- カラフル時計 (A表現(1)(2)/ 6時間扱い)
- インク・マジック (A表現(1)(2) ,B鑑賞(1)/ 4時間扱い)
- トントン くぎから 広がる世界 (A表現(1)(2)/ 5時間扱い)
- 地底につながる世界 (A表現(1)(2)/ 4時間扱い)
- 4学年の年間指導計画
- 4学年の授業
- すきすき紙工作 (A表現(1)(2)/ 6時間扱い)
- しろい いし (A表現(1) ,B鑑賞(1)/ 2時間扱い)
- オリエンテーリング式かんしょう (B鑑賞(1)/ 2時間扱い)
- ほって 見つけて (A表現(2)/ 6時間扱い)
- くしゃくしゃワールド (A表現(1)/ 2時間扱い)
- 光のはこ (A表現(1)(2)/ 5時間扱い)
まえがき
図画工作の授業を行おうとする先生が参考にするものは何だろう。
まずは教科書,教科書の指導書,材料や用具,作品などだろうか。学校の年間指導計画も大切だ。それに関連して,学習指導要領の解説書,図画工作や美術教育の研究団体の指導案集なども開くかもしれない。
でも,それだけで授業ができるわけではない。案外忘れがちなのが,子どもたちが学習する図工室や校庭などの学習環境である。その向こうには子どもの実態,学級や学校の雰囲気,保護者の姿勢,地域の文化なども広がっている。これらが授業の決定的な要因になることもある。
さらに,明治以来の図画工作教育の歴史や,それぞれの都道府県の民間教育団体の実践,様々な教材の開発などが,これに加わってくる。
以上が授業を行おうとするとき,その目の前に広がっている教育的な資源である。それは,生態系とでも呼べるようにお互いにつながり合っていて,決して切り離せない。それどころか,どこか1つを切り離しても授業は成立しない。絶滅危惧種の動物が,動物だけで生きているのではなく,森の木々や川,気温など様々な資源から支えられていることと同じである。ある学校の,ある教室の,ある机に座っている子どもの学習は,様々な教育的な資源がすべてつながり合う生態系のような関係の中で成立しているのである。
本書は,その生態系の1つに位置付くものとして構成されている。そのために,先生方が指導案を書こうとするとき,あるいは授業を考えようとするとき,手引きとして容易に参考にできるように考えられている。
それぞれの題材は,共通して,「1 題材について」「2 題材の目標」「3 指導観」「4 評価」「5 材料や用具」「6 題材の全体計画」「7 授業記録」「8 〔共通事項〕と言語活動」という流れになっている。どの項目にもたっぷりの写真を使い,新学習指導要領が今回大切にしていることを確実に反映しながら,シンプルな文章で書かれている。
それだけではない。一つひとつの題材は,それぞれの編著者が理念をもって年間指導計画を立て,その上で,図画工作教育の達人と呼ばれる人々に実践を依頼している。中には何十年も繰り返し行われ,研ぎ澄まされたような実践もある。そのような題材は,実は難しいものではなく,だれもが取り組みやすく,かつ,確実に実りが生まれる題材である。なぜなら,本書で紹介する一つひとつの題材にも,先に述べたような生態系が広がっているからだ。それがエッセンスのように詰まっているのである。
だから,開いてみたらすぐにわかることだが,この手の実践書にありがちなバラバラな印象がない。そのような意味で編著者の主張のある本になっていると言えるだろう。後は,これを実際に使っていただいて,それを実感していただきたいと思う。子どもたちの豊かな学びと育ちを生みだすために。
平成23年1月 編著者代表 /奥村 高明
-
- 明治図書