- はじめに
- 第1章 「道徳」と「総合」で行う「心の教育」とは
- 「道徳」はピンチか?
- いや,今こそ,チャンスである
- 不登校対策として「人間関係の力」をはぐくむ 実践
- 「道徳」と「総合」をどうつなぐか
- 「総合」とつながる「新しい道徳授業」とは
- 本書で目指す「生きる力」とは
- 切り口が勝負!子供の心がハッとする刺激的な「心の教育」
- 第2章 多様な指導で中学年児童の心を育てる
- 多様な道徳指導と総合への試み
- 実践1 「じゅげむジャンケン」で自己肯定感を育てる【道徳4年】
- 構成的グループエンカウンターを活用して
- 実践2 「友達知ってるつもりビンゴゲーム」で友達新発見!【道徳4年】
- 構成的グループエンカウンターを活用して
- 実践3 席をゆずったのは?【道徳4年】
- 4コママンガでいろいろな人の思いにふれる
- 実践4 わたしたちにできることから【総合3年】
- ユニセフの活動とボランティア活動を通して
- 実践5 地球にやさしく【総合4年】
- 環境問題を考える総合的な学習の試み/他教科とのつながりを生かして
- 実践6 「みんなにやさしい町」(バリアフリー)を考える【総合4年】
- 公園を素材とした調査隊の活動を生かして
- 実践7 「ぼく・わたしの命」生命を尊重する心を育てる【総合4年】
- 胎児の心音を聴く・赤ちゃん人形作りを通して
- 実践8 「葉っぱのフレディ」【道徳3年】
- 絵本から生と死・命のつながりに気づく
- 実践9 「わすれられないおくりもの」【道徳3年】
- 心にしみこむ物語で生命を尊重する心を育てる
- 実践10 「なんでくん」から社会的な規範意識を育てる【総合3年】
- 上学年が下学年に教える活動を通して
はじめに
この本の基本コンセプトは,次のようなものです。
「道徳」と「総合的な学習の時間」が結び付くことで,小学校における「心の教育」が,かなりの程度,実現可能になる。
単なるスローガンとしての「心の教育」ではなく,「具体的な授業実践としての心の教育」が実現可能になる。
その基本的な考えと,小学校での具体的な実践例を示す。
これです。
「心の教育」が必要だ,「生きる力」を育てなくてはならない,としばしば指摘されます。
たしかに「心の教育」は必要です。子供たちの心がこれほどすさんでいるのですから。
子供の「生きる力」を育てなくてはなりません。子供たちは,この難しい時代を自力で切り拓いていかなくてはならないのですから。
道徳教育として必要なばかりではありません。子供たちの「荒れ」「不登校」「いじめ」「学級崩壊」などが問題とされる中,そうした不適応に対する「予防教育」としても「心の教育」は必要とされるのです。
単なる抽象的なスローガンではなく,「これなら,子供が変わる」「これなら,これからの難しい時代を生きぬき,時代を切り開くたくましい,生きる力が身につく」「これなら,子供たちの心は落ちつく」「不登校も減るし,学級崩壊やいじめもある程度予防できる」― そんな「効果のある心の教育」が学校現場で必要とされているのです。
では,それはどんなものなのでしょうか。
多くの人は,そんな「効果のある心の教育」はどう行うのか,具体的に示せ,と問われると,困ってしまうことでしょう。
この本は,その問いに小学校の実践例によって答えたものです。しかも,その具体的な姿をある程度明確にするため,対象を「心の教育」の要となるべき「道徳」と「総合的な学習の時間」に絞りました。
そうです。
私たちは,「総合的な学習の時間」ができたことにより,これで本格的な「心の教育」の実現に向けて一歩進むことができた,と思っているのです。
「道徳」と「総合的な学習の時間」が結び付くことで,これまで週1時間しかなかった「道徳」の限界を越えて,より充実し効果のある「心の教育」を行うことができるようになる。しかもカリキュラムとしてしっかり位置づけて行うことが可能になるのです。
つまり
「心の教育」をその学校教育における要である,「道徳」と「総合」でどう行うのか。
誰でも真似でき,しかも着実に「生きる力」が身につく。
不登校,いじめ,学級崩壊などの予防教育としての「効果」もある。
そのような「心の教育」は,どのようにすれば実践できるのか。
それを,小学校の具体的な実践例の紹介を通して示す。
それが,この本なのです。
それぞれの先生が執筆された実践例が私の手元に届いた時,私は,「これはいける」「これはレヴェルが高い」と,思わずうなずきました。私から見るとかなり納得のいく,私好みの実践ばかり集まったのです。
しかし,本書で紹介した実践は,いずれも,いわゆる「名人芸」に頼ったものではありません。
本気になりさえすれば誰にでも模倣(マネ)できる実践ばかりです。
すぐに模倣しやすいよう資料やワークシートも豊富に掲載しました。
「これなら,私もできるかも」
「ちょっと,真似してみるか」
そんな気持ちを抱いて,チャレンジしてみていただけたら,この上ない喜びです。「我ながら・・・」と思われるいい実践ができたら,下記までご連絡ください。
〒262-8522 千葉市稲毛区弥生町1−33
千葉大学教育学部 諸富研究室 FAX 043-290-2561
本書をつくる上で多くの方にお世話になりました。しかしここでは,私の道徳教育の恩師故遠藤昭彦先生,私のカウンセリングの恩師で本書の要の一つである構成的グループエンカウンターを教えてくださった國分康孝・久子先生御夫妻,いつも温かく励ましの声をかけてくださる文部省の押谷由夫先生,七條正典先生,さまざまなすぐれた実践を寄せていただいた千葉の小学校の先生方,そして編集の労をとってくださった仁井田康義氏に心より感謝申し上げます。
編著者代表 /諸富 祥彦
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- 明治図書