- 心を育てる新しい道徳授業を創る〜金子みすゞの詩を生かす〜 ―中学校編―
- まえがき
- 第1章 金子みすゞの詩を道徳授業に生かす
- 第2章 金子みすゞの詩の世界
- ―みすゞコスモス― /矢崎 節夫
- 第3章 金子みすゞの詩で創る道徳授業
- 1 すなの王国
- 2 石ころ
- 3 こころ
- 4 土
- 5 つもった雪
- 6 星とたんぽぽ
- 7 蛙
- 8 打ちごま
- 9 ごてんのさくら
- 10 空のこい
- 11 お日さん,雨さん
- 12 お魚・大漁
- 13 みそはぎ
- 14 喧嘩のあと
- 15 ふしぎ
- 16 だれがほんとを
まえがき
中学生の時期は,自我意識の発達と共に,人生にかかわるいろいろな問題について関心が高まり,人間としてのよりよい生き方を模索し始める。同時に3年後の進路選択へ向けての自分探しの旅を始める時期でもある。
自己の内面を見つめ,直面する課題や悩みを何とか解決しようと真摯に努力し,将来の夢や希望について喜喜とした表情で語り合う生徒たちに出会うとたまらなくうれしくなる。
けれど,その一方で,心の内にたくさんの思いを抱えながらも,それらを思う通りに吐露したり,伝えたりするすべを見つけられずに,自分が見えず,自分のよさを出し切れず,時には感じる心に鎧を着せて無関心を装いながら,せっかくの中学生パワーを負の方向に向かって放出していく生徒がいることも否めない。中学校に転任してこの10年の間には,それらの生徒に対して,対処療法的な指導を繰り返す教師の汲々とした姿も数多く見てきたし,自分自身でも体験してきた。互いに「感性」を磨き合い,心をはぐくむ時間を,丁寧に積み重ねていったならば,もっともっと分かりあえたはずなのに。
全教育活動を通して行われる道徳教育を補充,深化,統合する道徳の時間は心の教育の要となる大切な時間である。新学習指導要領解説―道徳編―(文部省)の中には「心に響く〜」「多様な〜」という文言が繰り返し記されている。中教審答申,心の教育答申,教課審答申の中で道徳教育の充実が強く求められた背景や経緯を振り返ると,道徳授業においては,解説書の中に記されたこの二つの文言がキーワードとなり,今後更なる創意と工夫が求められるようになると思われる。
本書では,道徳授業の中に童謡詩人金子みすゞの詩を取り上げた中学校現場からの生の授業実践記録を16編掲載している。心を育てる新しい道徳授業を創っていこうと,それぞれの先生方が熱い思いを込めて創意と工夫を凝らした道徳授業を展開してくださっている。
第2章では,長い時をかけて金子みすゞの詩を発掘し,日本中にその魅力を広く知らしめた矢崎節夫氏が,我々をみすゞコスモスの世界へと誘ってくださることだろう。
金子みすゞの詩だからこそ,わずか数行の短編の詩だからこそ,道徳の授業の中でという思いについては,第1章で述べた。
生徒たちがそれぞれに夢や希望を抱きながら,学びの場を上級学校や実社会へと伸長させていくまでの3年間,生徒たちとしっかり向き合いながら,心に響く道徳授業を多くの先生方と共に,1時間でも多く重ねていけたらと思う。
最後になりましたが,企画の段階から本書を上梓するまでの長い間,根気よく励まし続けてくださり,編集の労をとっていただいた明治図書編集部の仁井田康義氏,平野真弓氏に心からの感謝を申し上げます。
2000年 4月 編著者 /齋藤 眞弓
齋藤 眞弓(さいとう まゆみ)
1956年茨城県生まれ。
小学校に12年間勤務した後,中学校に転任。現在茨城県新治群八郷町立園部中学校教諭。「おばあちゃんの心」「すりばち村のだんだん畑」など,自作資料を小中学校道徳副読本に掲載。
著書に『ドキュメント小学校4年の学級経営―道徳授業を軸として』(明治図書)がある。
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