- はじめに
- T章 構造化方式による『心のノート』を生かした授業の基本
- 1 構造化方式の勧め
- 2 構造化方式での『心のノート』の生かし方
- 3 構造化方式における評価
- 4 中学年『心のノート』を生かす着眼点
- U章 構造化方式による『心のノート』を活用した授業実践
- 1 視点1のとらえ方と生かし方
- かがやく自分になろう
- (1) 「ふみ出そう ひとり立ちへのたしかな歩み」
- ・資料『ろばを売りにいく親子』
- (2) 「よく考えることがあなたをもっとのばす」
- ・資料『Uターン』
- (3) 「『今よりよくなりたい』という心をもとう」
- ・資料『わたしののれん』
- (4) 「勇気を出せるわたしになろう」
- ・資料『あと,ひとこと』
- (5) 「自分に正直になれば,心はとても軽くなる」
- ・資料『百点を十回とれば』
- 2 視点2のとらえ方と生かし方
- 人とともに生きよう
- (1) 「礼ぎ―形を大切にして心をかよわせ合う」
- ・資料『春の星』
- (2) 「思いやりの心をさがそう」
- ・資料『おじいさん,どうぞ』
- (3) 「ひとりじゃないからがんばれる」
- ・資料『ないた赤おに』
- (4) 「みんなにささえられているわたし」
- ・資料『猿橋』
- 3 視点3のとらえ方と生かし方
- いのちを感じよう
- (1) 「植物も動物もともに生きている」
- ・資料『さようなら,春山号』
- (2) 「生きているってどんなこと」
- ・資料『生きているしるし』
- (3) 「自然の美しさにふれて」
- ・資料『ジャングル大帝』
- 4 視点4のとらえ方と生かし方
- みんなと気持ちよくすごそう
- (1) 「やくそくやきまりを守るから仲よく生活できる」
- ・資料『公園の自転車』
- (2) 「みんなのために流すあせはとても美しい」
- ・資料『朝のそうじ』
- (3) 「わたしの成長を温かく見守り続けてくれる人…家族」
- ・資料『お母さんのせいきゅう書』
- (4) 「学校はどんなところ?」
- ・資料『ぼくの学級』
- (5) 「わたしたちの心を育ててくれるふるさと」
- ・資料『おじいさんの願い』
- (6) 「わたしたちの国の文化に親しもう」
- ・資料『「ありがとう」の言葉』
- 5 「季節を感じる心をみがこう!」「心に残したい言葉」「自由黒板」「また,新しい春が来た」
- 構造化方式での活用
はじめに
中学年になると,児童は一般に自己主張が強くなり,他の児童と衝突することも多くなる。
この様子を見て,「困ったものだ。勝手放題をやめさせて望ましい行動ができるように指導しなくては」と考える教師もいる。逆に,「自己主張が強くなったのは力一杯生きようという意欲の表れだ。この意欲を生かし,道徳性を育てることによって他者と衝突しないで自己実現できる能力を育てることが肝心だ」と考える教師もいる。
児童に対するこの見方の違いは,そのまま,道徳指導の違いに表れる。前者は,直接に道徳的実践を目指す指導で,児童の行いを矯め直そうとしがちである。後者は,児童に役立つように道徳性を育てる指導になる。この違いが生き生きと児童に受け入れられる道徳授業になるか重苦しい授業になるかを分ける。なぜそうなるかは,本書を子細に吟味していただけばはっきりする。
道徳授業は,中学年では困難度を増してくる。根本的に改善することが急務で,学習指導要領ではありとあらゆる創意工夫を求めているのだが,現状は工夫が行われても枝葉末節にとどまって根本の発想の転換までいっていない場合が多い。その発想を転換し,根本的に授業を改革するのが構造化方式である。構造化方式は道徳授業の困難度をすべて解決して明るく楽しい授業にする原理でもあるのである。
構造化方式は,中国の道徳教育にも取り入れられ始めた。中国では「思想品徳」という教科で道徳教育が行われているが,改革・解放路線と一人っ子政策によって社会の自由化と家庭の子どもの甘やかしが進み,「思想品徳」の指導を子どもが受け付けず,指導にならなくなり,自由で気まま勝手に育った子どもにも通用する指導の原理を求めた結果,構造化方式に活路を見いだしたとのことである。
文部科学省から『心のノート』が配布された。『心のノート』は,児童がありのままの自分からよりよい自分への願いに即して考えを深めるようになっている。この発想は構造化方式に極めて近い。だから,構造化方式の授業では『心のノート』を生かしやすい。構造化方式や『心のノート』の考え方で指導することが,前述の道徳授業の抜本的な改善になるのである。
『心のノート』をどう生かすか。これまで授業を技術的に組み立ててきた場合は,形骸化していても教師本人が気づかないでいる場合が多い。そのままで『心のノート』を授業に利用しようとしても試行錯誤となる。『心のノート』を生かす授業には児童中心の授業の組み立て方が大切で,構造化方式によって指導をすすめることが最善である。
本書は,T章「構造化方式による『心のノート』を生かした授業の基本」と,U章「構造化方式による『心のノート』を活用した授業実践」からなる。T章は構造化方式の要点を分かりやすく述べたもので,U章は,構造化方式の考え方によって,各事例を分担した教師の持ち味を生かして授業を実践した事例である。T章で『心のノート』と構造化方式の要点をとらえ,U章を参考にして,本書を優れた道徳授業の創出に役立てていただければ,これに過ぎる喜びはない。
本書は,明治図書出版の仁井田康義氏のご支援と叱咤激励によって誕生することができた。紙上を借りて厚く感謝の意を表したい。
平成15年1月 /金井 肇 /斎藤 宥雄
-
- 明治図書