- はじめに
- プロローグ
- 序章 道徳授業の成立,その後の評価
- 第T章 子ども理解を生かして
- 1 出会い〜この大切なとき
- 2 子どもプロフィ−ルの活用
- 3 子どもの実態を生かした授業の手順
- 第U章 道徳授業と評価
- 1 資料に即したねらいをどうきめるか
- (1) 授業前に立ちどまる〜授業設計
- (2) 授業中に立ちどまる〜事中の評価から指導へ
- (3) 授業後に立ちどまる〜事後の評価
- 2 資料選択の視点
- 3 資料提示の評価
- 4 発問構成の基本
- 5 展開前段と後段のつながり
- 6 展開後段での振り返り
- 7 終末の深めを左右する教師の子ども理解
- 第V章 評価で変わる授業(実践編)
- 1 切り返しの発問が「この子」を変えた(1年生)
- 「カエルのぴょんきちとカタツムリのつむりん」2−(3)
- 2 自分のよさに気付かせてくれた母親からの手紙(2年生)
- 「だっておにいちゃんだもん」4−(2)
- 3 これまでの実践の反省から生まれ変わった授業(3年生)
- 「うっとり」3−(3)
- 4 一人ひとりの願いでつくり上げた一本のドラマ(4年生)
- 「花さき山」3−(3)
- 5 資料に即したねらいから練り上げた中心発問(5年生)
- 「くずれ落ちたダンボ−ル箱」2−(2)
- 6 自作資料が子どもの心にシャボン玉を飛ばした(5年生)
- 「シャボン玉 −野口雨情の心−」3−(2)
- 7 子ども理解と効果的な資料提示の工夫(6年生)
- 「ぼくの名前よんで」4−(5)
- 《特別寄稿》 「道徳指導の評価」
- エピローグ
- おわりに
はじめに
本書「道徳授業をリニューアル」は道徳指導研究会(略称,道指会)と称する私たちの研究会のレポートの一つです。
本会は,昭和44年,初代の主宰である古島稔先生と久保千里先生のご指導のもと,「小手先の研究であってはならない。全身で汗する研究をしよう」をモットーとして数々の実践に基づいた研究に取り組んできました。時を経,実働のメンバーは変わっても,この姿勢は連綿と引き継がれています。
今回のレポートは道徳授業の評価に視点を当てたものですが,基盤として大切にしたのは,教師の指導力の向上です。子どもたち一人ひとりの心の問題である道徳授業は,教師と子どもの心が一体となる割合が大きいほど,中身が濃くなると考えられますが,そのためには教師の指導力の向上が極めて重要です。この場合,指導力とは,指導技術的なものもさることながら教師自身が人間として成長しようとする熱き思いをもち続けることや,子ども理解の深化への常なる努力がその根幹と言えるのではないでしょうか。
私たちは,評価が基本的に目指すものとして「@子どものよさや可能性を発見する」,「A子どもの自己変革を促す」,「B前記の@Aを明らかにするために,指導法が適切であったかどうかを確かめる」の三つを押さえとしていますが,教師の評価力の向上,つまり「生きた評価」への挑戦が指導力の向上につながる確かな側面であると考えます。
なお,今回のレポートは,前回のレポート「小学校道徳授業に『生きたねらい』を」(明治図書)の続編でもあります。すなわち前回に提案した「ねらいの多重構造」,
◯大きなねらい
授業で扱う内容項目の道徳教育としてのねらい
◯資料に即したねらい
本時の授業で扱う資料や学習内容に対してのねらい
◯子ども一人ひとりに対してのねらい
本時にかかわる子ども一人ひとりへの教師の思いや願いを踏まえて,特に「資料に即したねらい」を中心にして評価を考えました。それは,道徳授業の主題構成が「ねらい」と「資料」を骨組みになされていることを基盤として,一単位時間における一人ひとりの子どもの心の変容をより確実に見取る"生きた評価"を生み出すためです。
総合的な学習の時間や「心のノート」の活用など,道徳的実践の場が広がっている今,道徳の時間の充実は従来にも増して大切です。私たちが,ここに提案する道徳授業の生きたねらいへの追求はいかにも未熟なものではありますが,道徳の時間の充実につながるものであると信じています。ご批正,ご助言を切にお願いいたします。
研究のまとめ,そして出版に際し,陰に陽にご尽力くださった明治図書の仁井田康義氏に心から御礼申し上げます。
2005年7月 道徳指導研究会名誉会長 /荻原 武雄
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- 明治図書