- 二十一世紀初頭の向山の主張
- T 子どもの事実から効果のある指導法を洗い出す
- 1 プロとして子どもの事実をつかむ
- 2 障害を持つ子に正しく対処できてこそ本物の教師
- 3 算数問題解決学習、国語単元学習の実態を一つ一つの事実で明らかにしよう!
- 4 障害についての理解と、「効果のある指導法」、「逆効果の指導法の洗い出し」を
- 5 勉強ができない子の指導法とは
- 6 子どもの事実を正しくとらえてこそ正しい指導法が生まれてくる
- 7 学校としての対応策を教育計画の中に作ることである
- 8 グレーゾーンの子へ正しく対応できない不勉強な教師は「重大な犯罪行為」を犯すことになる
- U 特別支援教育
- ―「向山型」指導法だからこそできる学力保証
- 1 障害児の個性を学び、障害児に学力を保証しよう
- 2 基礎学力を身につけてこそ
- 3 子どもが将来自立して生活できるかどうかは低学年のうちに「読み・書き・算」の効果的指導を開始できるかどうかで決まる
- 4 ADHD、LDの子を無視した最低最悪の算数問題解決学習を駆逐する
- 一 算数の問題解決学習は最低最悪の指導法である
- 二 タイル学習、問題解決学習はADHDの子や学習不振の子を苦しめる
- 三 算数の問題解決学習は、算数学習の本当の問題『重要五項目』を解決できただろうか
- 四 できない子、障害のある子をスポイルする算数問題解決学習の推進者たち――彼等はなぜ駄目なのか
- 五 私が国会議員に訴えた算数の問題解決学習の害悪
- 六 向山型算数の学習モデルにおける一つ一つのパーツは「勉強ができない子」にも極めて有効な指導法である
- 七 百玉ソロバンは、勉強のできない子・障害のある子を救った
- 5 ADHD、LDの子へ対応した国語授業のあり方
- 一 「一つ一つのこだわり」を大切に
- 二 具体的な研究から輪郭漢字の誕生
- 三 知的障害の子にも教えられた「輪郭漢字」――それはノーベル賞級の発明であると思う――
- 6 論文審査
- 一 楽しく知的に
- 二 授業の組み立てをきめ細かに…。ただし、必然性ある行為を!
- V TOSSだからこそ生まれた感動のドラマ
- 1 つまらない授業でも忘れものをしない子がいるのはなぜか。そこにこそ新しい問題がある
- 2 ぼくは死にたいんだ――向山が三〇年前に出会った子――
- 3 雪谷小学校杉の子学級から学んだこと
- 一 子どもの持ち寄る身近な問題は「教育学」の宝庫だ
- 二 高跳びをじっと見つめていたケンジ君が55pを跳んだ
- 4 若手TOSS教師が生んだ感動のドラマ
- W エジソンもADHDだった! 学校とADHDの子ども
- 向山 洋一 /横山 浩之
- ADHDというのはどのような障害をもった子なのか/ 学習障害児と学習不振児/ 先生は、知能検査ができますか/ クラスの五%の子が、ADHD/ 向山型の指導/ 宿題の出し方は/ 一時に一事の指導/ 「ほめる」ことは、教育の原点/ 教師がすることと家庭がすることは、違う/ 向山型算数は、有効である/ 百玉そろばんは、昔からの教材/ 校内プロジェクトチームを発足/ 横山ドクターから全国の教師にメッセージ
- X 特別支援教育が、今なぜ必要なのか
- 向山 洋一 /平山 諭
- 教師の無知さ加減に呆れる/ 個人が変われば学校全体が変わる/ TOSS教師の印象/ 岡山のADHD授業作りセミナー/ 子どもに伝えたい「脳の話」/ 注意すべき三カ条/ 扁桃体を育てる五カ条/ 二次的な問題を起こしやすい時期/ 臨界期は小学校一〜二年/ 幼児教育と脳/ 扁桃体の時代と前頭葉の時代/ 「特別支援教育」のポイント
- Y ADHD、LD児指導をめぐる悩み Q&A
- 解答者 /横山 浩之・向山 洋一・高橋 佳子
- Q1 ADHDの子が事故に遭う確率はどのくらいありますか
- Q2 リタリンを飲ませる目的をお聞かせください
- Q3 具体的にできることは何か、告知は必要か教えてください
- Q4 苦手なことへのやる気が出せる方法があれは教えてください
- Q5 全体の中でどんなふうにルールを教えていったらよいですか
- Q6 反抗挑戦性障害への対処は、ADHDの心理療法と共通でしょうか
- Q7 ADHD児のことをクラスでどのように説明したらよいですか
- Q8 ADHD児にルールをいかに教えるかお聞かせください
- Q9 専門機関に相談した方がいいか学級担任が判断できる指標はありますか
- Q10 中学校でADHDを疑う生徒にいかに対応したらよいですか
- Q11 効果的なADHDの研修ポイントを教えてください
- Q12 保護者に医療機関に診てもらうことをいかに勧めたらよいですか
- Q13 医者に相談に行く時の準備を教えてください
- Q14 虐待やスキンシップ不足の子にどう対処したらよいですか
- Q15 LD傾向にあり授業に集中できない児童への対処法を教えてください
- Q16 自閉症かと思われる子へどう指導したらよいですか
- Q17 暴力・暴言が度重なる子に対してどのように指導したらよいですか
- 向山洋一氏から日本の教師たちへ /伴 一孝
- ――「千年紀を駆け抜く」渾身のメッセージ
二十一世紀初頭の向山の主張
今回、第六期の向山洋一全集は、これまでと違い、すべて新刊である。
第五期までの全集は、これまでに発刊された本を「項目ごとにバラバラに分解」して、再編したものであった。
しかし、第六期全集は、これまでに単行本として発刊されてない「論文」からできている。
本来なら、一冊ずつを、単行本として発刊し、何年か後に「項目ごとにバラバラに分解」して、全集にするのが筋なのだろうが、内容にまとまりがあるため「単行本出版」を省略して、一気に全集にしたのである。
第六期全集と(来年出される第七期全集)は、二十世紀から二十一世紀にかけての、激動する現代史の中における「日本教育界の大テーマ」を扱ったものばかりである。
TOSS及び向山が提案してきたことは、二十一世紀の教育界の大きな流れとなっている。
その一は、教育ポータルサイト「インターネットランド」の建設である。
TOSSは、インターネットの大切さと重要性にいちはやく気づき、ポータルサイトの建設にとりくんだ。
多くの教育関係者が「さまざまなサイトの収集」に目を向けていた時に、TOSSは「必要なサイトは自分たちで作る」方向に道を定め、「フラッシュ」「ディレクター」などのプロが使用していたソフトを解約して、一万数千のサイトを誇る「インターネットランド」を建設した。無料である。
教育ポータルサイトとしては世界一であり、二千万を超えるアクセスがあり、年間のページビューは数十億となる。
「高度情報化社会は高度信頼化社会」によって成り立つという方針のもと、無政府状態のインターネットに「ランド」の思想を持ち込んだ。「インターネットランド」はTOSS商標である。
この方向がいかに正しかったかは、アメリカの最新のインターネット研究の報告、NHK出版の『新ネットワーク思考』によって明白だ。
その二は、教師の技量を向上させる具体的方法として「授業の技量検定」を発足させたことである。
数千名の教師が、次々と挑戦していった。
TOSS技量検定による教師の技量の向上は、目ざましいものであった。
読売新聞は「TOSSの授業力」に注目し、国際フォーラムで大イベントを実施し、新聞でも大特集をした。
NHKも、朝のニュース「おはよう日本」で、特集を組んだ。
更にTBSテレビも特集番組とし、テレビ大分はじめ多くの局で特集がされた。
教師の技量検定は、教育界のさまざまな分野に多くの影響を与えつつある。
その三は、特別支援教育の「具体的方法」の主張である。
軽度知的障害を持つ多くの子どもたちは、不適切な指導下にその障害を悪化させていた。
私たちは、東北大病院の横山ドクター、岡山の平山教授とともに、「障害の理解」「授業での対応」「授業の演習」などを次々に開発し、セミナーなどで提言していった。
その四は、基礎学力を保障する「向山型算数」の主張である。
問題解決学習等が、大量の落ちこぼれを生んでいる現状を批判し、「学級平均が九〇点」「五点一〇点の子が満点」をとる指導法を提言していった。
その五は、「総合的学習」の中心は、「国際化」「高齢化」「環境」「情報化」などの今後の社会の中で、「ボランティア教育」「読まない、書かない、訳さない英会話の授業」「環境・エネルギー教育」「スマートボードを活用したITによる授業」「食育」「ライフスキル」などを次々と開発し、提言していった。
その六は、「百人一首」「名文暗唱」「和装・礼法」「よさこいソーラン」などの日本の文化を大切にして、それを広げる積極的行動をしていったことである。
その七は、「TOSSデー」「子どもTOSSデー」「学生TOSSデー」を全都道府県教育会場で開き、役に立つ教育の文化を広く普及していったことである。
これらのどの動きも、それまでの日本の教育界になかった「重要」で「新しく」て「巨大」な動きであった。
これ以外にも「学級崩壊」「基礎学力の保障」をはじめ、大切なテーマも提言してきた。
二十世紀から二十一世紀にかけ、TOSSは実践と研究の幅を広げ、内容を深化させてきた。
そして、次々と参加する若い教師、中堅教師とともに、その陣容を発展させてきた。
現在、一〇〇名ほどの研究会、セミナーは、一年間で全国各地で一〇〇ヶ所を超えている。毎月、全国のどこかで一〇ヶ所近いところで、「セミナー」「講座」「検定」「イベント」が行われている。
これに「TOSSデー」「学生TOSSデー」「子どもTOSSデー」「五色百人一首大会」などを加えると、TOSSの年間イベント会場は一〇〇〇会場にもなる。
現在・過去の日本で、断トツの巨大な研究・実践集団である。
本全集は、そうした日本の動きの中で、私が主張し、実践してきたことである。
(次年度の第七期も、この時期の向山の主張である。)
二十一世紀の教育を展望し、自分の実践の場をしっかりさせるために、本書が役立てば幸いである。
二〇〇六年一月二〇日、ロンドン教育視察から帰国して
TOSS代表 /向山 洋一
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- 明治図書
- 特別支援教育を視野に入れないと今後の教育は成立しない。向山先生は将来の展望をふまえて本書を著した。特に、「教師が犯している犯罪的行為」には、追求の手を緩めてはいけない。子どもたちの将来を奪うことは決してあってはならないことである。この本を読んでから、自分の教育行為をふりかえっている。2006/8/2みつお