- はじめに
- 第1条 「行動化の原則」
- 1 子どもたちの行動を重視する
- 2 学級活動の話し合い活動は行動を前提としている
- 3 行動を通して考えさせる
- 4 「江戸しぐさ」は即実行のすすめ
- 第2条 「自己決定の原則」
- 1 生活場面は自己決定の連続
- 2 自分の頭で考え判断し決定させる
- 3 日常から小さな自己決定を積み上げる
- 4 酒井式描画指導法「ふんぎりをつける」
- 5 「指名なし朗読」にも自己決定がある
- 第3条 「自由選択の原則」
- 1 子どもの自主性を育てる「選択の自由」
- 2 限定した中での「選択の自由」
- 3 「朝の分間読書」の取り組み
- 4 「選択」を採用した教育現象
- 5 必要とされる教師の指導性
- 第4条 「自己責任の原則」
- 1 子どもには子どもなりの責任の取り方がある
- 2 「教育的配慮」を疑う
- 3 「自由」と「責任」
- 4 向山実践から学ぶ責任の取らせ方
- 5 「事実」を伝え「正直さ」を求める
- 6 「事実」をほりさげる
- 7 「責任」を取らせる
- 8 解決するために時間を与える
- 9 日常の指導の成果
- 第5条 「根拠重視の原則」
- 1 価値観の多様化が指導を困難にしている
- 2 何を根拠に選択するのか
- 3 最初は正直さを求め、徐々に理由を言えるようにする
- 4 自己決定させるときに理由を問う
- 5 違う考え方と比較させる
- 第6条 「秩序感覚形成の原則」
- 1 指導のポイントをしぼり込む
- 2 「立腰教育」から学ぶ
- 3 野口芳宏氏の主張
- 4 「凡事」にこだわることで見えてくること
- 5 凡事徹底は秩序感覚の形成
- 6 子ども理解は、子どもを見ることから始まる
- 第7条 「自己抑制の原則」
- 1 自己抑制の欠如
- 2 興奮する前に指導する
- 3 自己抑制するための鉄則を教える
- 4 終わりの行動まで確認する
- 第8条 「集団思考の原則」
- 1 集団思考の必要性
- 2 生活指導における集団思考は行動を前提にしている
- 3 行動と意識がずれないようにする
- 4 相手(課題)をいつも自己と関係づける
- 第9条 「他者受容の原則」
- 1 教師と子どもとの関係を作る
- 2 子どもの心を感じる
- 3 今、教師に必要とされるカウンセリングマインド
- 4 子どもの心を満たしてあげる
- 5 友達を受け入れる方法を教える
- 第10条 「共感性の原則」
- 1 共感する心の大切さ
- 2 「現実に直面させよ」
- 3 「忍びざるの心」の必要性
- 4 「いてもたってもいられない感情」
- 5 「教師としてのセンス」
- おわりに
はじめに
現在、現場の教師が抱える課題は二つある。
一つは、二〇〇二年から始まる教育改革に対して準備を進めていくこと。
いま一つは、今目の前にいる子どもたちをどのように指導するのかということである。
この二つ目の問題こそ現場の教師にとっては切実である。
教師は、今の子どもを指導できなくなってきていると言われる。
平成一〇年六月二〇日、NHK総合テレビで興味深い番組があった。
「学級崩壊」という題名のこの番組は、荒れる子どもたちと学校・教師たちの苦闘をあからさまに映し出していた。
その番組によると、全国で一二学級のうち一学級が学級崩壊している割合になるという。
それはまさしく、現在の子どもたちへの指導の困難さを象徴したものとなった。
『犯罪白書』では、青少年犯罪の凶悪化と低年齢化を指摘し、戦後第四の上昇局面として今後ますます増加していくことが指摘されている。
いじめ問題もなくならず、不登校も増加する一方である。
教育現場は様々な問題を抱え、教師たちは苦悩しているのである。
こういう事態に対して、中央教育審議会は「心の教育」によって乗り越えようとしている。
しかし、「心の教育」という言葉は、現場教師の指導を見誤らせる危険性をはらんでいる。
いじめ問題が発生する。
教師は子どもたちに、「誰にでも公平に接しなさい。優しい心を持ちなさい。」と、「心の問題」として指導する。
しかし、それでは何も解決はしないのである。
「心」を扱うのではなく、「行動」こそ問題にすべきである。
そこに教師の指導するポイントがある。
つかみどころのない「心」を相手にするのではなく、「行動」というレベルに降りたときに、現場教師の指導のヒントが見えてくるのである。
子どもの生活指導上の問題に対するポイントを「生活指導の原則」としてまとめ、現場教師の「悩み」を解決するための手助けになることを願って、私は本書を書いた。
現実の子どもの指導の悩みとともに、現場教師は二一世紀に向けて教育が大きく変わることへの不安も抱えている。
これからは「子どもを支援することが必要だ。」「生きる力を付けることが必要だ。」とか言われるが、現実の教室にあって、どのように子どもたちを指導したらよいのかは明確に見えていない。
「教育の変革とともに教師の指導も変わらなければならない。」
それはわかっている。
しかし、自分の指導をどのように変えたらよいのかわからない。
それが現場教師の本音でもある。
今の指導を続けていて、新しい教育に対応できるだろうか。
そんな不安を現場教師は持ち続けているのである。
本書の「生活指導の原則」は、新しい教育にも対応できるものとして私は書いた。
本書は、現場教師の「悩み」と「不安」に答えること。そして、次の二つのコンセプトに貫かれている。
1.子ども自身に自己指導の力(生きる力)を付けるための生活指導であること。
2.子どもたちに「生き方」あるいは「道徳性の基本を養うこと」のできる生活指導であること。
本書が、多くの方々にとって価値あるものになることを願っている。
平成11年1月 /青坂 信司
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- 明治図書